職場のコロハラ急増中!ハラスメントから会社を守る基本知識

   

職場のコロハラ(コロナハラスメント)急増中!ハラスメントから会社を守る「キホン」の知識

新型コロナウイルスの流行で生活様式やコミュニケーションの方法が大きな変動を見せる今、職場でも新しい問題が起こりつつあります。

その中でもトラブルとして挙がるのが、コロナウイルス”感染を理由としたハラスメント。いわゆる【コロハラ】です。

SNSでは営業を続ける店舗に嫌がらせがあったり、 「エッセンシャルワーカー」 と呼ばれる小売店従業員や医療従事者、物流事業者へ差別的な発言が投げつけられるといったケースが見られています。

企業としても直接従業員を管理できない状況が続く中、けして対岸の火事とは言えない危機感・空気感を感じている方も多いのではないでしょうか。

コロハラを行ってしまう心理とは?企業としてコロハラを防ぐには?
従業員をハラスメントの当事者にしない・ハラスメントから守るためにも、企業が押さえておきたい知識を再確認してみましょう。
 

ウイルスの見えない影響力は職場にも
コロナハラスメント(コロハラ)とは?

多少の咳やむせこみ、花粉症などのアレルギー症状……
日常を送る上で、コロナ感染症に似た症状が出てしまう疾病にかかることもあるでしょう。

ですが、業務に支障のない理由を元にした不利益な取扱いは禁止されています。

最近の労働環境では、日常のちょっとした身体反応や病状・家族や自宅の住所を理由に新型コロナ感染症の疑いを持ち出し「不当な取扱い」「ハラスメントにあたる行為」を行う、【コロハラ(コロナハラスメント)】の相談が増加しています。
  

人を攻撃してしまう心理には「不安やストレス」が
ハラスメントになる前に気が付こう

コロハラに限らず、行動を制限される・社会全体が不安を感じるような特殊な状況では「人を攻撃してしまう」風潮が流行します。

ストレス・不安・恐れといった感情は人間の自己防衛本能を刺激し、普段よりも攻撃的な行動や衝動性を強めます。

また私たち人間は「見えないもの・未知のもの」をとらえ、きちんと怖がる・恐れ続けることが得意ではありません。

見えないものから不安・恐怖・ストレスを感じた時、脳は見えないものの代わりに【見える対象・関連のあるもの】を無意識に求めそれを攻撃しようとするのです。

これらの【見えないものの代わり】になるのは、実際の感染症の有無だけではありません。
 

  • 感染者が出た地域から来た、行った
  • 花粉症や鼻炎など、新型コロナに似た症状をもつ事情のある方
  • 病院や高齢者・子供の多い施設で働いている。医療や運輸流通といった職業についている
     

その他、 「感染症から連想される」対象・物事が風評被害や嫌がらせの対象になり、差別・偏見・ハラスメントにつながります。

また、攻撃行動を実際に行うと脳の中でドーパミン(快楽物質)が分泌されるので「スカッとした感覚」「達成感」を感じることもあります。この感覚は「自分は良いことをしている」「悪い人だから攻撃していい」という誤った肯定感を作り出してしまうことも。

社会全体にそのような「誰かを攻撃していい」という雰囲気が蔓延すると、「次は自分が対象になるのではないか」と不安が増大し、それが症状を隠してしまう・自分も攻撃する側に回ってしまう原因にもなります。

コロハラは、ハラスメントとして労働環境を悪化させるだけでなく『新型コロナ流行を長引かせる・感染拡大を助長する』ものだと自覚することがコロハラを防ぐ第一歩です。
 

咳で謝罪、出社したら席替え……これは“コロハラ”?
事例から見るハラスメントの形

新型コロナを理由として行われる「コロナハラスメント」ですが、その本質は「パワハラ」「セクハラ」と同様の「ハラスメント」です。

コロハラとしてみられるようになった以下の事例が、「 職場におけるパワーハラスメントの6類型 」などから見てどんな行為に当てはまる可能性があるのか、見てみましょう。
 

・就業時に暴言や陰口、本人に無断で席を変えるなどを行う
・ちょっとした咳や行動に対して謝罪や過剰な対応を要求する
・感染者の多い地域から通勤していると、「感染しているのに出社している」「怖いので近寄らないでほしい」などと言われる

 ⇒ 「精神的な攻撃」、「人間関係からの切り離し」 として、ハラスメントに問われることがあります。

・家族に医療従事者や感染者がいる従業員へ、
 欠勤を強要する・仲間外れにする・ コミュニケーションを極端に嫌がる

 ⇒「人間関係からの切り離し」や「個(プライベート)の侵害」、
  または精神的な嫌がらせを行ったとしてハラスメントに問われる
  ことがあります。
  情報共有やコミュニケーションの拒否は、協調性が必要な業務の
  場合、同僚からであってもパワハラに該当する可能性があります。

・新型コロナウイルスが疑われる症状が出ている、感染症への不安を訴えても
 休みを貰えない・病院に行くなといわれる・対策をしてもらえない

 ⇒身体症状がすでに出ている方の通院を認めない、休暇の申請を受け
  取らないといった対応は労働基準法、労働安全衛生法、民法などに
  違反するケースがあります。

・「自分はかからない」とマスクをしない、わざと感染症対策を行わない
 ⇒感染症対策を行わないことで不安・不快感を煽るような行為です。
  不安を感じた人が注意する、何度もお願いをしても行ってもらえ
  ない場合「ハラスメント」として成立する可能性があります。
  また、感染症であることを隠して拡散するような行動をとる場合、
  傷害に問われることも。

・感染から回復した従業員、感染者を家族に持つ従業員を解雇
 ⇒解雇の理由に客観的合理性がある、解雇の予告をしない、解雇を
  回避するための努力をしたか……などの条件を満たさない場合
  「不当解雇」になるケースもあります。


このようなハラスメント行為は、コンプライアンスの面からも企業として事前の注意が必要です。
 

コロナハラスメント(コロハラ)防止のために企業ができること

企業は、コロハラ防止のためにどのような対策ができるのでしょうか。

コロナハラスメントを予防する・防止するのに必要なのは、「不安を取り除くこと」と「起こったハラスメントを相談できる環境」です。
そのためには普段の「キホン」的な環境整備が重要になります。

以下の3つの「キホン」から、職場を見直してみましょう。
 

  1. 基本的な「感染対策」の徹底
  2. 基本的な「知っておくべきこと」の周知
  3. 基本になる「働き方」の見直し
     

①まずは不安の根本から対応しよう
 感染対策の徹底はできていますか?

コロハラの大きな原因は「感染症に対する不安・ストレス」です。
第一に感染対策をきちんと実行すること、企業がきちんと対応している事を従業員全体に知ってもらうことを徹底しましょう。

三密 (密閉した空間・密集した状況・密接した距離)を避ける/人と人とのソーシャルディスタンスの確保といった基本とされる方針をオフィスや作業場で守れるような工夫はされていますか?

動線や勤務時間・作業人数を工夫する、テレワークやオフピーク通勤など「スムーズビズ」に取り組むといった社員を守る取組みはこれからも継続が望まれるでしょう。

対面での接客や運輸流通といった不特定多数のお客様と接触する業務では、ビニールカーテンの導入・就業中のマスクや手袋の着用など、お客様と従業員双方を守る設備習慣の導入は積極的に行っていくべき対策です。

休憩室や更衣室といったバックオフィス施設では、食事や休憩を行うため作業場よりも細やかな対策が必要になります。

一定時間で換気を行う・席を一つづつ開けるよう塞ぐといったコロナ感染への対策の他に手洗い場を増設するような自発的に衛生的な環境を作れる設備への投資もお勧めです。

まずはこのようなコロナへの対策を「きちんと対策をとっている」という姿勢を従業員へ示し、企業としての対策指針を明確にしましょう。
 

②ハラスメントや職場のトラブルを防ぐ特効薬
 感染症とハラスメントの基礎知識を周知!

コロナハラスメント発生の背景には、従業員間の「知識や気持ちの差から来る不安・誤解・不快」が大きく関与しています。

感染症に対する危機感の薄い従業員が会食をしてしまったり、換気やマスク着用を行わないで咳やくしゃみを繰り返してしまう……といったことは従業員一人一人に行動を変えていただかないと防げません。

感染症を差別や偏見の理由にさせないために、従業員が正しい感染症の知識に触れられる機会が必要です。

感染症とは何か、症状や回復までの期間、どのように予防できるのか……

「会話をしながらの飲食を避けてください」「正しい手洗いの方法、タイミング」など、具体的な方法とセットで周知を行いましょう。飲み会や会食などは企業として開催の延期やしばらくの開催自粛を指示し、行動の指針を出しておくことがクラスター発生のリスクを避けます。

特に咳エチケットやソーシャルディスタンス・三密を回避するための基準などは麻疹やインフルエンザといった私たちが日常で罹患する可能性のある他の感染症の予防とも共通します。

組織のリスク管理として、ワクチン接種の推奨とともに知識の周知徹底を行いましょう。

同時に、ハラスメントやメンタルヘルスに関する制度や知識もハラスメントの発生を未然に防ぐ効果があります。

「ハラスメントの6類型」や社内の規定でどのような対応が決められているか、組織の方針、相談できる窓口の連絡先は覚えてもらいたい知識です。

誰もが経験したことのないような事態の中、自信の健康だけでなく家族や環境に不安やストレスを抱える従業員はどの組織にもいることでしょう。
産業医や産業保健スタッフへの相談窓口は元より、より専門的なカウンセリングやメンタルケアのできる機関との連携を考えることも必要でしょう。
  

③感染拡大を防ぐ最善策は「休む」事
 休暇制度など”働き方”の基本を再確認

本来であれば、発熱や咳といった体調不良があればきちんと休むべきです。

新型コロナウイルスに限らずインフルエンザやノロウイルス等人から人へ感染する感染症の多くは、くしゃみや咳・会話による飛沫からの感染や手すりやタオルなど物体の表面を介した間接的な接触による感染が主になります。

職場での感染拡大を未然に防止するためにも、感染しているかしていないかに関わらず「体調不良を感じたらすぐに、一定期間休める」環境であることが大事でしょう。

従業員が体調不良を気兼ねなく報告できる環境のためには、休業制度の周知や活用の他に「職場で働く人たちの関係性」や「業務内容・進捗の共有」といった安心して休養できる環境が求められます。

これを機に「少し無理をしないと間に合わない」「誰かが欠けたら、その仕事が回らない」という状況が避けられるよう人員の配置やコミュニケーション・情報の交換機会、仕事量の配分を見直してみてはいかがでしょうか。

本人の体調不良以外にも、お子さんや高齢者など感染リスクの高いご家族のいる従業員は就労や通勤に関してより注意が必要です。

家族の休校や突然の体調変動といった突発的な出来事に対応するためにも、休暇の変更・申請の手続きを簡易にする、在宅勤務にすぐ切り替えられるような柔軟な働き方への整備を続けていくことがWithコロナ時代の企業運営のポイントになってくると思われます。
 


ハラスメントの発生する環境は、報告や相談といった情報の共有がうまくいかず従業員の労働の実態がわかりにくくなっている「企業の問題」が隠れている可能性があります。

感染拡大に加担しないためにも、感染防止だけでなく職場の環境・関係性の見直しを組織全体で図っていきましょう。
 

〔参考文献・関連リンク〕

初出:2020年09月08日

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