【見えない障害】への理解と配慮で、共生社会の実現へ:DIVERSITY&INCLUSION

【見えない障害】や多様性への理解と配慮で、共生社会を実現

厚生労働省は2020年5月、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて「新しい生活様式」を実践例と共に公表・周知。その中で、今まで咳などの呼吸器症状が出た方に推奨されていた「マスクの着用」対象を、無症状の方まで広げる対応がとられました。

その翌月、WHO(世界保健機関)はマスクの予防効果に対する研究を踏まえた指針に変更し、「感染が広がっている地域の公共の場でのマスク着用を推奨する」ことを発表。

今やマスクは外出時には欠かせない、「感染拡大防止」のアイテムとなりました。

店舗内でのマスク未着用への非難や、マスク上部を鼻先まで覆わず“鼻マスク”状態のままでいることを問題にしたニュースやSNS上での投稿を目にするケースもあるかと思われますが、その一方で理由があって「マスクが着用できない」人たちがいることを意識されたことはありますでしょうか?
 

マスク未着用=ルール違反と即断できない

「マスクを忘れて外出したため、すれ違う人が顔をしかめた」
「電車の中でくしゃみをしたらあからさまに避けられた」
そんな経験はないでしょうか。

新型コロナウイルスの流行で「予防・衛生」に関する意識が高まった昨今、「マスクの着用」はもはやマナーと言えるほどに普及しました。ですが、マスク着用が一般的になるとともに「マスクをしていない人への冷遇」が問題化しつつあります。

マスクは「鼻や口などの呼吸器にフィルターをかける」ことで、空気中に漂う飛沫からの感染を防ぎます。その構造上どうしても、
・顔や口元、耳といった部分にマスクの素材が接触する
・熱や高湿度を含む空気が停滞し、息苦しさやムレ、皮膚の擦れを感じる
・呼吸するのに抵抗がかかる
といった身体への負担が生じます。

健康な方であれば何ら支障がなさそうな話ですが、持病や特定の障害を持った方には小さな負担が体調を崩すほどに大きな負担となる場合があるのです。

● 心肺機能や呼吸器に障害がある…
発達障害などで触覚・嗅覚等の感覚過敏を特性として持っている…
蒸れやこすれで皮膚がダメージを受けやすい、痛みを感じる疾患がある
口元が隠れてしまうので、意思疎通が困難になる…

マスクの着用によって身体や皮膚に異変が生じる・体調を崩してしまうなど、日常の生活に大きな支障をきたすことがある方は、外出時でもマスクが着用できないケースがあります。その場合、フェイスガードなど別の手段で様々な感染症対応を独力で行っていることがほとんどです。

一見普通に活動できるように見えてしまうため、マスク未着用=わがまま・我慢不足と誤解されたり、心無い批判を受けたり、入店や活動参加を断られるケースもあるといいます。
 

様々な支援団体が活動を展開。
【見えない障害】等への理解と配慮で、共生社会を実現

やむをえない事情で “マスクをつけられない人” がいることの周知や疾病等の明示をサポートする「わけがありますく」プロジェクト では、マスク着用が難しい事情を持った方へ「意思表示マーク」を提供し、周囲の「理解・思いやりある対応と感染予防の両立」普及を働きかけています。
 

「わけがありますく」プロジェクト

 

このプロジェクトを企画・運営する「株式会社しまうま」取締役の鈴木玲嘉さんはネットメディア等から取材に対し、
 

「マスクの着用ができないから外を歩くと白い目で見られ続けてつらい」「マスクを着けていないといつ暴力を振るわれるかと心配で怖い」という悩みを当事者と家族が持っていることを知り、身体障害者だった祖父と歩いたときの人々の無遠慮な視線を思い出しました。それでなんとかしなければと思い立ちました。

やむをえない事情で“マスクをつけられない人”がいると知ってほしい「わけがありますく」プロジェクトを取材(ねとらぼ)
 

とプロジェクト発想のきっかけや、見た時に優しい気持ちになれるデザインの採用や、誰もが認識しやすいフォントの使用、感覚過敏の方にも配慮した「つける人が症状や状態に合わせて選択できる」意思表示グッズへの工夫を語っています。

現在、「わけがありますく」プロジェクトのWebサイトでは、意思表示マーク・カードや感染予防ポスター等のデータを無料ダウンロード公開し、意思表示バッジやカード、ワッペンなどの関連グッズ配布を行う施設の情報を掲載しています。
 

「わけがありますく」プロジェクト関連グッズ

 

「ヘルプマーク」など意思表示マークを知ること、【見えない障害】等への理解と配慮を

様々な自治体・団体でマスクをつけられないことへの理解・啓蒙を促す活動も行われています。 加えて、同様に理解しにくい・外見からはわからない障害を持つことを表示する意思表示マークの周知普及も進められ、街中で見かけることも多くなってきました。
 

☆ 厚生労働省 :「 マスク等の着用が困難な状態にある発達障害のある方等への理解について

☆広報みなと:誰もが住みやすく 地域に愛着と誇りを 持てるまち・港区をめざして ※2021年1月号

☆「マスクをつけられない方へのご理解をお願いします」 検索結果
 

このような障害に対する配慮・支援マークの表記やサービスの提供は、企業が表明する「CSR活動」「社会貢献」といった活動の一部としてイメージ改善以上の意味を持って受け止められています。
 

意思表示マーク
「ヘルプマーク」や「ハート・プラスマーク」「耳マーク」などの意思表示マーク
 

 

「マスクをつけられない」感染症対策
重要なのは「換気」と「配慮」

企業として、事情があってマスクをつけられない人への対応を検討する際まず考えていただきたいのは「マスクをつけられない人への対応」を目的にするのではなく、「マスクがなくても安心して過ごせる環境」を意識することです。

マスクの着用などの感染予防対策や「マスクをつけられない事情」の報告は、健康に働くためにもつとめて推奨される対応でありますが、大事な個人情報やプライバシーの問題を含むため従業員に強制できるものではありません。

「もし、従業員の中にマスクをつけられない人がいたら」
という想定を念頭に置いて環境を整備した上で、マスクをつけられない方へ個別のケアも検討しましょう。
 

【 職場で作ろう!『 安心環境 』のポイント】

☆3密になる状況を作らない・参加を強制しない
→会議や打合せ、工場のライン、面接…などワークスタイルによっては人が集まる場面が避けられないことがままあります。社内でもリモート会議で自席から参加するなど社内にも「オンライン」の工夫を。

☆換気の徹底、充分なソーシャルディスタンスを保てる設備
→換気に気を付けるのはもちろん、飛沫自体を飛ばさない対策も求められます。向かい合う・隣り合う席の間にパーテーションを設置、 人と人との間に十分な距離を設ける、密集するエレベーターなどは人数制限を … など設備がなくてもできることは様々です。
  
☆「対応OK」な人は、マスク・手洗いの徹底
→マスクに関係なく誰もが安心して過ごせる職場のためには、まず「自分の感染対策をしっかりやる」ことが大前提になります。怠ることなく、咳エチケット・消毒・会食などのリスクある行動を控える等、従業員の皆様ひとり一人が自分にできる感染症対策を続けることが多様な背景を受け入れられる「安心な職場」につながります。
 

 

 

 

 

初出:2021年01月19日

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