自分も相手も大切にする「アサーション」で職場の“意見”をもっと円滑に

自分も相手も大切にする「アサーション」で職場の“意見”をもっと円滑に

皆さんは、職場で自分の意見を伝えたいときに、どのように言ったらよいのかと悩んだことはありませんか?
「忙しいのに、頼まれた仕事を断れない……」
「自分がわがままを言っていると思われるのではないか…」
などと不安なることも多いですよね。意見を言うこと自体を諦めてしまう人も多いかもしれません。

自分の意見を伝えることは、業務の効率化や新しいアイディアを生み出すことにつながる大切な「主張」。ビジネス上のコミュニケーションにおいて必須のスキルなのです。
相手を傷つけずに自分の意見をしっかりと伝えたい、そんな悩みにお勧めのコミュニケーションスキルが「アサーション」です。

今回は、相手と自分を大切にするコミュニケーションの方法、「アサーション」についてご紹介します。
 

「アサーション」は自分も相手も快適なコミュニケーション方法

自分のためだけではなく、相手の受け取り方を考えたコミュニケーションスキルが「アサーション」です。

「アサーション」とは行動療法や対人関係療法の一部として用いられている考え方で、『自分にも相手にも言う・言わない権利がある』ことを尊重し相手に受け入れられる自己主張を目指すものです。

日常生活でもビジネスの場でもとても役立つスキルですが、反射的にできるまでは何回も繰り返すことが大事。「アサーション」のトレーニングでは自分の気持ちや考えを、どうやって受け取る相手・関係性・その場のTPOに最適な方法で表現するかです。

そのためにもまずは相手が何を考えているかを考え、対等な目線で“伝わる”表方法を学びましょう。
 

「自己主張」3パターン、自分はどれ?

アサーショントレーニングの開発者、アメリカの心理学者ジョセフ・ウォルピィ(Joseph Wolpe 1915 – 1997)は、「自己表現には3種類のタイプがある」としました。
あなたは以下のどれに当てはまりますか?
  

  • アグレッシブタイプ(攻撃タイプ)
    ……自分の主張をするときに、「思ったことをそのまま言う・口調がきつい」「相手を否定する」などいわゆる「パワハラ」的な行動をとってしまうタイプです。思ったことをそのまま言ってしまう、怒鳴ったり大きな音を立てるなど行動が威圧的なところが目立ちます。
    コミュニケーションを勝ち負けでとらえている方も多く、自分が優位に立てるよう意図的に自分本位な行動や相手をコントロールしようとする行動をとることも。主張が受け入れらえないと、不機嫌をあらわにしたり相手を威圧・攻撃するような言動もみられます。
     
  • ノンアサーティブタイプ非主張タイプ)
    ……相手の主張を優先することを選びがちなタイプです。主張をするときも控えめであいまいな言い方をすることが多く、ミスを追及されると言い訳しがちな人が多いのも特徴的です。自分の気持ちや意見があっても表現せずに心にとどめてしまいがちです。
    一見「おとなしい」というイメージを持たれやすいですが、「自分の意見なんてどうせ」と卑屈になりがちなタイプでもあります。起こってしまった行動に対して「相手の言うとおりにしたから」「わたしのことを理解しない」と根に持ってしまう・長く悩んでしまうことにもつながります。
      
  • アサーティブ
    ……相手と自分の双方を尊重できるバランスタイプです。自分の気持ちを正直に、場に合った表現で伝えることができるのが長所で、話し合いの中で相手が意見を話してくれるよう促したり、双方が納得できるポイントを探そうとします。
    自分と相手が対等であること・どちらにも言い分があることを理解しているので対立したとしても自分の意見を簡単に折ることはせず、また相手の意見を否定したりしません。相手と自分の両方が歩み寄る理想的なコミュニケーションタイプと言えるでしょう。
      

重要なのは、「自分のパターン以外についても、考え方の傾向を理解しておく」ことです。
それぞれのパターンが持つ特徴を知ることで、より伝わりやすいアサーションの方法を探す手掛かりになります。
 

難しいコミュニケーションのポイントは「理由の理解」と「歩みより」で

どうやって伝えよう……と迷った時こそ思い出してほしいのが、「アサーションを使ったコミュニケーション」。特に日常生活で悩むことの多い「断り方」に有効なのが、次に紹介する「歩みよる提案方法」の4ステップです。

いきなり「嫌です」「無理です」ではそんなつもりでなくても角が立ってしまうでしょう。「断りたい理由」と相手の事情に寄り添う「歩み寄り」を駆使することで、“ 代替案や円満な解決方法を探す ”方向を提示できます。 
 

★歩みよる提案方法  4つのステップ!

  1. 状況を説明する
  2. 自分の気持ちを表現する
  3. 具体的な提案をする
  4. 選択肢を示す


この提案方法4ステップに沿って今の状況や自分の気持ちを並べてみましょう。

同じように腹が立ったり、部下を注意する時にもこの方法は有効です
「これだから若い奴は!」や「何度言えばわかるんだ」と相手の評価を決めつける・一方的に批判するのではなく、「私はを軽んじられたようで悲しかった」「私はこれが大切だと思うだから、君に覚えてほしい」と相手を励ましながら自分の意図を伝えることができるのです。
 

事例で覚えよう!アサーティブの基本

◎事例Q&A

Q;
上司Aさんが、部下Bさんに「今すぐ〇〇の企画書を作成してほしい。」と伝えました。
しかし、Bさんは別の上司にも明日の朝までが期限の仕事を頼まれており、また自分のルーティンワークも残っていて、企画書を作成する余裕はありません。

Bさんは、「できませんと言ったら怒られるのではないか」「仕事の段取りが悪いと思われてしまうのではないか」と、不安な気持ちでいっぱいです。
さて、ここでBさんは上司Aに、どのように伝えるべきなのでしょうか?

***

アサーションで大切なのは、自分が置かれている現在の状況を相手に正しく理解してもらうことです。
例に挙げたような場面で「できません」とだけ伝えてしまうと、相手に悪い印象を与えたり、新しい仕事に取り組める機会を逃してしまうことになります。
また、相手も不快に感じたり、状況を判断し難くなってしまいます。
先述した4つのステップを参考に、断り方を考えてみましょう。

  1. 状況を説明する
    ⇒「今、Cさんから●●の仕事を明日の朝まで仕上げてほしいと頼まれている。」
    ⇒「それは今日いっぱいかかってしまいそう」
  2. 自分の気持ちを表現する
    ⇒「お引き受けしたいけど、両方の仕事に取り組む余裕がない」
  3. 具体的な提案をする
    ⇒「今日中にこの仕事が完成するので、明日の昼以降には企画書に取り掛かれると思う」
    ⇒「企画書の締め切りに余裕があるなら、明日の昼以降にやりたい」
  4. 選択肢を示す
    ⇒「Cさんから頼まれた仕事とどちらを優先すればよいでしょうか?」
    ⇒「Cさんに相談させてほしい。」


……いかがでしょうか。いまステップテーマごとに並べた回答を組み合わせて、「あゆみより」の断り方を作ってみましょう。

A;
「今、Cさんから●●の仕事を明日の朝まで仕上げてほしいと頼まれており、それが今日いっぱいかかってしまいそうなのです。
「お引き受けしたいのですが、ちょっと今日は取り組む余裕がなさそうです。
「この仕事が終わった明日の昼以降にはそちらの企画書に取り掛かれると思います。
「Cさんのお仕事と、どちらを優先すればよいでしょうか?Aさんからのお仕事が今日中にということでしたら、Cさんに相談させてください。」

自分が置かれている状況を細かく説明することは、決して自分本位な行為ではありません。
相手の立場や状況を慮っての誠実な行為なのです。


これまでの自分のコミュニケーションパターンから抜け出すのは難しいかもしれません。ですが、「物は言いよう」と言われるように、一つ言葉を丁寧にするだけでも、雰囲気は大きく変わってくるものです。

アサーションは意識すれば誰でも実践できる手法です。職場でコミュケーションに悩んでいる人がいたら、アサーションについて伝えてみてください。
 

初出:2018年03月27日 / 編集:2019年11月8日

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