ストレスチェック業種・職種別レポート2018:保育士

   

保育士は女性よりも男性の方が高ストレス者の割合が高い…?

【ストレスチェック分析レポート2018】
保育士

近年、認可保育園に入園できない待機児童の増加等の問題により、保育士のニーズが高まっています。

厚生労働省研究班が2017年に公表した調査結果によると、「メンタルヘルスケアが必要と感じる保育士、または、実際にメンタルヘルスの治療を受けた・受けている保育士がいる(離職した保育士含む)」と回答している保育所の割合は約27%にものぼります。しかし、従業員のメンタルヘルスに関するサポート体制のない保育所が全体の約58%を占めているのが現状です。

また、個人の就業意欲についても、保育士の約15%が「今後も保育士として働きたいが、就業継続が難しい」「今後は保育士として働きたくなく、保育士以外の職種で働きたい」と離職を検討しています。

弊社は、「AltPaperストレスチェックサービス」をご契約いただいたお客様に個人情報を除いた集計データをご提供いただき、職種別の高ストレス者の割合・総合健康リスクを算出しました。今回はその中から、「保育士」のストレス状況とお勧めのメンタルヘルス対策をご紹介します。
 

保育士のストレスに関する調査結果

保育士の高ストレス者の割合:職種別高ストレス者の割合・総合健康リスク
保育士の高ストレス者の割合:職種別高ストレス者の割合・総合健康リスク
 

働きがいを感じている保育士、身体的な負担が大きなストレス要因に

保育士の総合健康リスクは、男女共に全国平均を大きく下回っており、その他職種と比較しても低めの数値となっています。しかし、男性の保育士については、高ストレス者の割合が約15%と、とても高い数値が算出されました。

保育所は、従業員数が50人未満の場合が多く、その場合、ストレスチェックの実施は努力義務となっています。厚生労働省の調査(「保育人材確保に関する調査」)によれば、保育所の約31%がメンタルヘルスチェック(ストレスチェック等の検査)を実施する予定がないと回答しています。

つまり、本分析の対象となった保育所はストレスチェックを実施しており、メンタルヘルスに対する意識が比較的高い事業場であると思われます。そのため、高ストレス者の割合・総合健康リスクが比較的低い数値になったのだと推測されます。
 

調査の概要

保育士の総合健康リスクは男女共に全国平均を大きく下回っており、その他の職種と比較しても低めの数値となっています。しかし、男性の保育士においては高ストレス者の割合が約15%という高い数値が算出されました。

多くの保育所は従業員数が50人未満であり、このような規模の事業場ではストレスチェックの実施は努力義務となっています。厚生労働省の調査(「保育人材確保に関する調査」)によれば、保育所の約31%がメンタルヘルスチェック(ストレスチェック等の検査)を実施する予定がないと回答しています。

しかし、本分析の対象となっている保育所はストレスチェックを実施しており、メンタルヘルスに対する意識が比較的高い事業場であると思われます。そのため、高ストレス者の割合・総合健康リスクが比較的低い数値になったのだと推測されます。
 

〔 調査の詳細 〕

1. 調査方法

男性と女性のデータを分けて、各尺度の平均値・高ストレス者[1]の割合・総合健康リスク[2]を算出しました。その後、業種別・職種別の平均値を算出しました。

※回答時に部署欄に記入された職種を「日本標準職種分類」の大分類(一部中分類)に変換し、職種別に比較しました。
———————————–

[1] 本分析における「高ストレス者」の判定は、厚生労働省が公表したマニュアル(2015)に基づいており、以下の①および②に該当する者を指します。高ストレス者に該当する者の割合については、概ね全体の10%程度とします。
①「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が12点以下
②「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が17点以下で「仕事のストレス要因(17項目9尺度)」および「周囲のサポート(9項目3尺度)」の合計が26点以下

[2] 本分析における「健康リスク」は、基準値として設定された全国平均100からどの程度乖離しているかで算出されます。また、健康リスクの数値を表す「仕事のストレス判定図」は、量-コントロール判定図と職場の支援判定図の2つをさらに男女別に分けたもので構成され、この2つの調和平均が「総合健康リスク」となります。

◆仕事のストレス判定図
①量-コントロール判定図:仕事の量的負担とそれに対するコントロールの度合い(裁量権)による健康リスク
②職場の支援判定図:上司の支援と同僚の支援の状況・バランスによる健康リスク
 

2. 調査結果

前述したように、保育士では男性と女性で高ストレス者の割合に大きな差があります。

また、その他の職種と比較しても、男性の保育士は高ストレス者の割合が高めであるのに対し、女性の保育士の高ストレス者の割合は低いことが見て取れます。一方、総合健康リスクについては、男女共に比較的低い数値が出ています。

総合的に見ると、保育士は高ストレス者の割合および総合健康リスクは低めですが、ストレスチェックの尺度別に見てみるとストレス要因となりうるものがいくつか浮かび上がってきました。

職業性ストレス簡易調査票における各尺度の平均値が全国データからどれほど乖離しているかを計るために、全国平均値を0とし、1から-1の間に全国データの7割が入るように、正規化数値[3]を算出しました。
———————————–

[3] { (各尺度の値) – (全国平均) }/(全国データの標準偏差)×100を正規化数値と仮定しました。
 

まず、総合健康リスクの算出に使用される4つの尺度(グラフ赤枠)に着目すると、男性については4つの尺度全てにおいて全国平均並みもしくは全国平均をやや上回る数値が出ています。女性については「心理的な仕事の負担(量)」の数値が全国平均をやや下回っていますが、その他3つの尺度は男性と同様に全国平均並みもしくは全国平均をやや上回る数値が出ています。
この結果、男女共に保育士の総合健康リスクは全国平均を下回る低めの数値となったのだと考えられます。

また、4つの尺度以外については、男女共に「心理的な仕事の負担(質)」「自覚的な身体的負担度」(グラフ黄枠)の数値が全国平均を大きく下回っており、これらがストレス要因となりやすいことが読み取れます。

保育士は、0歳・1歳などの乳児から6歳までの幼児といった幅広い年齢の子どもを預かるケースが多く、子どもの年齢によって仕事内容が異なるため、一人で様々な種類の業務に取り組む必要があります。また、子どもたちの安全を守るため、その業務には常に緊張感が伴い、仕事の質的な負担につながっていると推測されます。

さらに、子ども達に合わせた業務形態であるため、自分のペースで仕事を進めることが難しいことも仕事の質的な負担の一因となっていると思われます。また、頻繁に泣く子ども達の対応に追われたりして十分な休憩を取れないケースも多く、大きな身体的負担がかかっていると思われます。

一方、上記6つの尺度(赤枠・黄枠)以外では、ほとんどの尺度で全国平均を上回る数値が出ています。特に「職場環境によるストレス」「自覚的な仕事の適性度」「働きがい」「活気」の数値は男女共に全国平均を大きく上回っており、積極的に仕事に取り組んでいることが読み取れます。

また、その他についても、男性と女性の数値が同程度である尺度が多くあります。しかし、 [仕事のストレス要因]に含まれる尺度(※赤枠・黄枠の尺度を除く)では、女性よりも男性の方が低い数値が出ています。これらが影響して女性よりも男性の高ストレス者の割合が高くなったのだと推測されます。
 

保育士のメンタルヘルス対策

保育士では、働きがいを感じているものの、身体的な負担が大きなストレス要因になっているケースが多いようです。保育士の心身の健康を維持していくためには、どのような取り組みをしていけばよいのでしょうか?
 

1. サポート体制の構築

冒頭で述べたように、従業員数が50人未満の保育所が多く、このような規模の事業場ではストレスチェックの実施は努力義務となっていますが、保育所の約31%はメンタルヘルスチェック(ストレスチェック等の検査)を実施する予定がないと回答しています。

しかし、ストレスチェックを実施することは事業者が従業員のメンタルヘルスを大切に考えていることを示し、従業員との信頼関係の構築にも繋がります。特に保育所のような小規模の事業場では1人の保育士のメンタルヘルス状態が大きな影響を及ぼす可能性が高いため、働きやすい職場環境づくりに組織が率先して取り組むこと必要があるでしょう。

その第一歩として、ストレスチェックの導入が挙げられます。実施が義務とされていなくても、ストレスチェックを実施して従業員1人ひとりが自身のストレス状況を把握できるようにすることは、メンタルヘルスの管理にとても効果的です。
 

2. 休憩時間の確保

保育士の業務は子ども達のリズムに合わせる必要があるため、十分な休憩がとれていないケースが多いと思われます。また、施設によっては保育士用の隔離されたスペースがなく、休憩時間もリラックスすることができないといった声も聞かれます。

スタッフ同士でコミュニケーションを図り、1人ひとりが精神的にも身体的にも休息できる時間と場所を確保することが大切です。施設内に休憩スペースを確保できない場合には、休憩時間内の外出を許可することもリフレッシュにつながるでしょう。
 

3. 仕事の特性の認識

仕事に従事するうえで、「自分の仕事は質的にも身体的にも負担がかかりやすいものだ」という認識があるかどうかは、その人のストレス度合いにも影響を及ぼします。

大切な子どもを預かる保育士には、責任感が強く、無理して頑張ってしまう人が多いため、自分が高ストレス状態にあることに気づかない可能性があります。ストレスチェックの受検結果等から自身のストレス状況を理解してセルフケアに努めるように勧めたり、集団分析に基づいて職場環境や業務内容に目を向けて改善できるものはないか考えてみましょう。
 

★ポイント★

保育士の心身の健康は、保育の質の向上につながります。子ども達が親元を離れて最初に体験する環境をより良いものにするためにも、保育士のメンタルヘルスを重要視し、サポート体制の構築やセルフケアの呼びかけに積極的に取り組みましょう。ストレスチェックを活用してストレス要因の削減に取り組むことで、仕事にやりがいを感じている「保育士」の離職を防ぐことができるかもしれません。


〔 参考・文献 〕

初出:2018年05月02日 / 編集:2019年07月30日

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