障害者雇用促進法改正から考えるこれからの職場づくりとは【第1回】

   

障害者雇用促進法改正から考える これからの職場づくりとは?【第1回】― 障害者雇用の法改正

障害者雇用の理想と現実が浮き彫りに

2019年4月1日から障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わり( これまでは身体障害者と知的障害者が対象)、障害者の法定雇用率の引き上げも行われました。

各企業が障害者雇用の対応に取り組む一方、国の行政機関などで障害者雇用の人数を不適切に計上していた問題が発覚したことから、再発防止策を盛り込んだ改正障害者雇用促進法が今年6月の参議院本会議で成立し、2020年4月から施行されます。また、7月の参議院議員選挙で、重度の身体障害を抱える国会議員が誕生したこともあり、「バリアフリー」対応や「ソーシャル・インクルージョン」の実現課題などと併せて障害者雇用への関心は今後も高まっていくものと思われます。

今回、2019年と2020年それぞれの法改正のポイントを整理し、厚生労働省が掲げる「共生社会の実現」「労働力の確保」「生産性の向上」に向けて、企業は障害者雇用や精神疾患と今後どのように向き合っていくべきか。どのような職場づくりが今後望まれていくのかを連載形式でお届けします。
 

精神障害者雇用が義務化?

2019年4月の改正法施行を前に、「精神障害者雇用の義務化」といった見出しの記事が 一部のメディアに掲載されましたが、これは誤りです。
法定雇用率の算定式に精神障害者が追加」されただけで、「精神障害者の雇用義務」が規定されたわけではありません。
 

●2019年の法改正におけるポイントは「法定雇用率」の変更

「障害者が地域の一員として共に暮らし、共に働く」ことが当たり前である社会(共生社会=ソーシャル・インクルージョン)の実現に向けて、一定規模以上の事業主には法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります。

現行法では、障害者雇用義務の対象となる民間企業の範囲が「従業員数50人以上」から「従業員数45.5人以上」に変わり、これまで2.0%だった法定雇用率は2.2%になりました。さらに今後、2021(平成33)年4月までの間に2.3%へ引き上げられる見通しです。
 

(厚生労働省職業安定局 平成29年「障害者雇用の現状等」資料3 より、「日本における障害者の雇用法について」と「障害者雇雇用率の見直し」図表等をもとに情報基盤開発で作図)
 

これまではストレスチェックの実施と同様に従業員50人以上の企業に対して障害者雇用の義務が生じていたのに対し、現在は従業員数46人を超える場合に最低1人以上の障害者雇用が義務付けられたことになります。

また、精神障害者の職場定着を促進する目的から、法定雇用率制度や障害者雇用納付金制度において、精神障害者である短時間労働者※(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人)の算定方法が対象者1人につき0.5であったのが1になりました。
 

※「精神障害者である短時間労働者」とは
雇入れから3年以内の人、または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の人、かつ2023(平成35)年3月31日までに雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得した人を指します。
 

法定雇用率を満たしていない場合はどうなる?

事業主間の経済的負担を調整するため、法定雇用率よりも多くの障害者を雇用している事業主に対して1人につき月27,000円が支給される一方、法定雇用率を満たしていない企業からは1人につき月50,000円の納付金が徴収されることになっています(障害者雇用納付金制度)。

納付金の徴収については、現在は従業員100人以上の民間企業を対象とし、200人超300人以下の場合は2020(平成32)年3月までは月40,000円への減額が適用されます。現在は、としたのは、納付金の徴収対象を従業員50人以上の企業に拡大する提言が、2018年7月30日に厚生労働省が発表した「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書に盛り込まれている点に留意する必要があるでしょう。
 

(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 「障害者雇用納付金制度の概要」等をもとに情報基盤開発で作図)
 

障害者雇用促進法に基づき、少なくとも5年ごとに労働者及び失業者並びに障害者数の総数の割合の推移を勘案して政令で設定。支給には上記以外に「在宅就業障害者特例調整金」「在宅就業障害者特例報奨金」ほか各種助成金がある。
 

なお、法定雇用率を満たせず一定の基準を下回る場合、事業主に対して雇い入れ計画の作成及び行政指導が入ります。行政指導にも応じずに障害者雇用の取り組みが是正されなかった際には、厚生労働省大臣によって企業名を公表する、としています。
 

●障害者雇用時の支援制度

障害者雇用納付金制度に対して、いくつかの支援制度が用意されています。

ハローワーク等の紹介によって障害者の一定期間試行雇用を行う事業主に対しては、「トライアル雇用助成金」が支給されます。2018年4月から、精神障害者の場合は試行雇用開始から3カ月間は月額最大80,000円4カ月目~6カ月目までは月額最大40,000円が支給されます。
 
さらに、ハローワーク等の紹介によって継続して雇用する労働者として障害者を雇い入れた事業主に対しては、「特定求職者雇用開発助成金」が支給〔例:中小企業には240万円(助成期間3年)が支給〕。その他、施設整備をしつつ、新たに障害者を5人以上雇い入れる企業に対しては「中小企業障害者多数雇用施設設備等助成金」が支給されます。
 

2020年4月の法改正で民間企業が注目するべきポイント

今年6月に成立した改正障害者雇用促進法施行が、2020年4月1日に施行されます。

中央省庁による障害者雇用の水増し問題を受けての再発防止策や罰則規定、「障害者活躍推進計画」策定・公表の義務化や、障害者を解雇する際のハローワークへの届け出義務化など、公的機関(国・地方公共団体)を対象にした改正内容ばかりが報じられていますが、民間企業にも関係する改正点があるのをご存知でしょうか?
 

●週20時間未満の障害者雇用に対する特例給付金

短時間であれば就労可能な障害者等の雇用機会を確保するため、これまでの制度では対象外となっていた「週の所定労働時間が20時間未満の障害者」を雇用する事業主に対する特例給付金の新設されます。
 
現状ではまだ規定化に至っていないようですが、「週20時間未満の安易な雇用促進にならないよう」、支給対象となる障害者雇用の所定労働時間の下限を週10時間とする提言がなされているようです。
 

●障害者雇用に関する優良企業の認定制度

常用労働者300人以下の中小企業を対象に、障害者雇用の促進等に向けた取り組みに対する優良認定制度も創設。具体的な評価項目について検討が進められています。
 
上記いずれも、2020年4月1日から施行とされています。
 

★ポイント★

障害者雇用については、各障害に関する理解が及んでいないことや職場環境の整備に十分な投資・準備ができないといった理由から二の足を踏んでいる企業も少なくないよう見受けられます。

一方で、ノーマライゼーションソーシャル・インクルージョンといった取り組みが広がりを見せ、求職者や社会全体から企業の評価基準のひとつに「社会課題に向き合う姿勢」が上がるようになりました。

個々人の働き方に対する価値観が多様化していく中で、障害の有無に関わらず「働きやすい職場づくり」に取り組むことは、企業にとって大きな武器になりうると言えるでしょう。

少なくとも、障害者雇用の促進が今後も拡がっていくことに変わりはありません。 従業員規模50人以上(障害者雇用は46人以上)を見据える企業の人事・総務担当の方々は、ストレスチェックと同様に、障害者雇用に関する制度の背景や仕組みを今一度ご確認いただけたらと思います。

次回は、「共生社会の“課題”と実現方法を考える」をお届けいたします。
 

〔 参考・文献 〕

初出:2018年11月13日 / 編集:2019年07月26日

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