人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム:まずは知ってみよう、職場で見られる「メンタルの不調」の種類

   

まずは知ってみよう、職場でみられる「メンタルの不調」の種類

厚生労働省によると、精神や行動に関係する疾患の患者数は平成29年の調査で約120万人であり、ストレスによる 心身の障害やうつ病やはもはや珍しいことではなくなりました。

平成29年労働安全衛生調査によると

”現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は 58.3%”

厚生労働省:平成29年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況
結果の概要 – 労働者調査
 

とストレス原因のかなり高い割合を占めています。
労働安全衛生法などの法改正で、安全配慮義務の内容にも職場でのメンタルヘルス対策が折り込まれ、いまや「従業員のメンタル」は企業にとって重要な問題となっています。

メンタル不調の予防は、まず不調とはなにかを知ることから。
今回は厚労省の調査より、労働者が陥りがちな「メンタルの不調」の種類と主な症状についてまとめました。
 

そもそも、「メンタルの不調」とは?

メンタル不調は、厚生労働省の「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」によると以下のように定義されます。

精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの

独立行政法人 労働者健康安全機構
「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」
 

「メンタルの不調」とは精神的な障害やだけではなく、本人が苦しい状態、日常生活に支障が出る可能性のある【 心と行動の問題 】も含まれます。

メンタルの不調が原因で身体の病気にかかったり、働くばかりか健康的な生活を維持することができなくなることがあります。生活が崩れると治療が困難になり、重症化することも。
本人や周囲が「これくらい」「まだ大丈夫」と思うものでも早めに専門機関を受診することで、休職や重症化を防ぐことができるのです。

本人では自分の変化に気が付きにくいもの、早期受診には身近な人からの一言が大事です。
今回は職場でみられることの多い【メンタルヘルス】の症状や特徴についてまとめました。
 

職場で気になる「メンタルの不調」……
こんなサインはありませんか?

■うつ病

うつ病はストレスなどが原因で脳のエネルギーが枯渇してしまうことで起こります。気分や意欲を回復するエネルギーが乏しくなっているため、ゆううつな気分や活動意欲の低下に困ることが多くみられます。
周囲に助けを求めるのが苦手なタイプの人がかかりやすいという研究がありますが、生活の中で起こるさまざまな要因が複雑に結びついて原因になることが一般的です。

  • 憂鬱な気持ちが続く
  • 物事への関心がなくなる
  • 食欲の低下
  • よく眠れない
  • 疲れやすい

以上のような症状がみられます。「肩こり」や「不眠」といった身体症状として現れることもあり、不調のサインが発見しにくいです。
努力家で抱え込んでしまうタイプ、最近休暇を取っていない従業員がいる場合は注意して様子を見るようにしましょう。
 

■新型うつ

【非定型うつ・ 気分障害】に「今まであまり見られなかった」症状の方が増加しています。“うつ病”と聞いて一般的にイメージされる症状とは異なるため、ニュースなどで「新型うつ」と呼ばれ話題になりました。

「新型うつ」病という名称はマスコミ用語で、精神科医療分野で正式に使われることは少なく、“ 症状が昔の病気の定義では決めかねるうつ病 ”という程度の意味合いで「新型」と呼べるような新規性は認められていません。精神科医療分野で昔から使われてきた用語では、「気分障害」が 症状としては一番近く、そこから少し変わったものと理解されています。

具体的には、活発で外出はできる、 感情が不安定で不機嫌になりやすい……など様々な症状があります。 本人にとってなじめない環境でのみ不調が起こる、といったことも。
一見元気に見えるためサボりや甘えに見えてしまいますが、投薬や本人の努力で解決することは少なく、侮りは禁物です。当事者は症状に苦しんでいるので適切な対応が必要です。

疾病としては入院を必要とするほど重度ではなく、むしろ軽症であるので外来通院程度で治療が可能ですが、診断は困難で治療もうまくいかず慢性化しやすいと言えます。
そのため、休職と復職を繰り返す場合も多く、うまくいかないことを他人やまわりの環境などのせいにする他罰的傾向が強く、職場への影響としては大きいのです。

病気としては重いわけではないものの、企業としては困っている事例性の高い症例も少なくないのが特徴で、慎重な取り扱いが求められる症状です。
 

■適応障害

適応障害とは、職場や人間関係など本人にとってつらくなじめない環境に対して現れる精神や行動の症状を指します。

職場に向かうとゆううつになる・不安になるといった精神面だけでなく、涙もろくなった・意図しない無断欠席や遅刻を繰り返す・喧嘩や物を壊すことが多くなるといった行動に問題が出ることもあります。

原因となる環境や物事がありますので、それから離れ、その方に適した落ち着ける環境にいられるようになれば自然と改善します。
 

■パニック障害(パニック症)

パニック障害は若年層、特に女性に見られやすく、全く心当たりがないのに、 突然息苦しさやめまいなどを伴う「パニック発作」が起こることが特徴です。

この発作はとても強い恐怖と無力感を伴うため、 発作が再び出ることを恐れる「予期不安」や、 パニック発作が出たとき逃れられない 場所を避ける「広場恐怖」を併発し、 電車など生活に必要な外出ができなくなってしまうことがあります。
 

■発達障害

その人の脳機能の特徴とおかれている環境・社会が合わないことで問題が起こる、これが「 発達障害」のメカニズムです。
主にコミュニケーション面で周囲とトラブルになることが多いですが、環境によっては大人になるまで気づかないといったケースも多いです。

日常的な行動に特徴があり、就職や家庭環境の変化などがきっかけで問題化することがあります。

  • 質問の意図や人の発言の意味を捉えることが難しい。
  • 同時進行で複数の物事に取り掛かるのが苦手。
  • 建前や暗黙の了解など曖昧なルールの理解が難しく、
    「空気の読めない」行動をとってしまいがち
  • 勤務時間中に居眠りしてしまう・ ケアレスミスが多い
  • 忘れ物や落とし物が多い・タスクやスケジュール管理が苦手。
  • 順番待ちが苦手・ 貧乏ゆすりが激しいなど静かにするのが難しい

というような特徴は、社会生活を行う上で特に
特徴の傾向によって 自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)・注意欠陥多動性障害(ADHD)など 何種類かに分類されます。
特徴は周囲や本人のストレス原因になることがある一方、その人にあった環境や得意分野では問題なく過ごせたり、他の人よりも力を発揮できることも。

発達障害はその人が持つ脳の特徴が原因であるため、努力で改善することは難しく、周囲の配慮や働きやすい環境を整えることが適切な対処方法になります。
得意なことと苦手なことが極端という傾向があるため本人の特徴を生かす働き方ができるよう周囲のサポートが必要です。
 

■アルコール依存症

アルコール依存症は、お酒や飲酒することに精神的に依存してしまい、「飲酒をコントロールできない」状態となることです。

  • お酒を飲んではいけない状況でも、少しだけなら…と飲んでしまう
  • お酒を飲むと問題を起こすことがわかっているのに我慢できない
  • 「ストレス発散」など、理由をつけて飲酒をする
  • お酒を飲まないと体調が悪くなる
  • 一度飲み始めると酩酊するまで飲んでしまう、途中でやめられない

というサインがあれば要注意。
自覚がないまたは本人も「依存症だ」と認めがたく、仕事中や就業前に飲酒をするといった問題行動が起きて初めて周囲が気が付くことがままあります。

アルコール依存症は普通の生活に戻ることは可能ですが、お酒を辞め続ける必要があります。そのことを周囲が理解し、お酒を勧めないことも重要です。
 

体もメンタルも“治療”、“休息”、“再発予防”が大事

仕事中に手や足を怪我してしまった時、病院に行かずに無理に働いたり、同じ場所を何度もぶつけてしまったらどうなるでしょう。
さらに悪化して就業できなくなったり、同じ場所をさらにひどく怪我してしまうかもしれません。そうならないよう医師に手当をしてもらい、良くなるまで運動を控え、事故の原因を探るのではないでしょうか。

身体のけがや病気と同じように、メンタルの不調を治していく際にも“治療”、“休息”、“再発予防”が大事です。
メンタルの不調は体の怪我とは異なり、目に見えて回復経過が分かりませんし、回復する力自体が落ちているため時間がかかる場合がほとんどです。
重症化すれば回復までの時間はさらに伸びていくほか、本人でも回復したかどうかわかりづらく、少し良くなった時期に無理を重ねてしまい再発や悪化を繰り返すこともあります。

しかし、“回復する力”が失われたわけではありません。
「症状に見合った専門家の治療を受けること」
「疲れ果ててしまった脳をしっかり休ませること」
「カウンセリングなどで原因を見つめ、対策すること」
この3点をしっかり守り、焦らずゆっくり治療と対応を続ければ、日常生活やまた働くことも十分に可能になります。

メンタルの不調が部下や同僚、会社の大事な従業員を損なう前に、その不調に気づいてあげるのは、一日のうち長い時間を過ごす職場の大事な役割になりつつあります。
病気のサインに気が付けるよう、気づいた後サポートできるよう、メンタル不調について知識を深めてみませんか。
 

身体のけがや病気と同じように、メンタルの不調を治すには治療・休息・再発防止が大事

〔 参考・文献 〕

初出:2019年8月23日

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