「パワハラ防止法」施行決定!企業がすべき「義務」と対策とは?

   

「パワハラ防止法」施行決定!企業がすべき「義務」と対策とは?

都道府県の労働局へのパワハラの相談件数は年々増加しており、2018年度は8万件を超えました。
パワハラで悩んでいる人が多い中、2019年5月に日本で初めてパワーハラスメント(パワハラ)について企業に防止措置を課す条文を盛り込んだ新たな労働施策総合推進法が施行されました。


ハラスメントとなるかどうかは相手との関係性やされた相手の受け取り方によってかわってくるもの、企業としてどのような対策をすればいいのか悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、 改正した労働施策総合推進法 、すなわち「パワハラ防止法」で定められている企業の義務や企業がすべき対策を紹介します。
 

パワハラ防止法で定められている内容

パワハラ防止法ではどのような内容が定められているのでしょうか。

  • 防止すべき対象のパワハラ行為とは
  • “パワハラ防止”が義務となる時期
  • 企業がパワハラ防止としてとるべき対策とは
  • 企業が “パワハラ防止” について違反した場合

上記の4点について説明していきます。
 

パワハラ行為=“抵抗しにくい”関係性での嫌がらせ

そもそもパワハラとはどういった行為を示すのか、つかめていない方もいらっしゃいますよね。
厚生労働省によると【 職場におけるパワハラ 】は、

  1. 優位な立場を背景に
  2. 業務内での必要な範囲を超えて
  3. 就業環境を害したり、身体的や精神的に苦痛を与える

以上の3つが全て当てはまったときパワハラと定義されます。

パワハラにおける「優位な立場」とは、単に「職務上地位が上の者」「人事権・指示権のある者」というだけではありません。「パワハラを受ける人が、抵抗や拒否が難しいと考える・感じている関係」が背景にあれば、部下や同僚といった直接的な上司以外からの嫌がらせも当てはまります。
“パワハラ”というと上司が部下に対して行うものというイメージがとても強いですが、今回の定義を受けて部下からの嫌がらせについて「こんなことで相談できない」「自分の管理ができていないからだ」と悩む方へもサポートが届くようになるのではないでしょうか。

厚生労働省ではパワハラの6類型を示しています。パワハラの定義に当てはまる6類型の例は、

  • 身体的暴力による攻撃
  • 人格否定などの精神的攻撃
  • 仕事を与えない・職場を隔離させるといった行為
  • 異常なノルマ、過酷な環境、勤務と関係のない作業を行わせるといった過大な要求
  • 実力に合わない簡単すぎる業務を任せるといった過小な要求
  • 集団で1人へ他の従業員との接触を妨害したり、行動を監視したり、
    休暇申請をした従業員へ嫌がらせをするといった個を侵害する行為

一読いただけるとわかる通り、これらはパワハラに関わらずすべての嫌がらせに当てはまる「ハラスメント行為」です。
先述の「優位な関係性」「業務を超える範囲」に当てはまらなくても、ハラスメント行為がある環境はほかの労働者にとっても大きなストレスを与えます。法律の義務に関わらず早めに対応を考えることが必要です。
 

パワハラ対策が義務となる時期は?

企業のパワハラ対策が義務化される時期は、現在以下のように予定されています。

  • 大企業:2020年4月 2020年6月1日(予定)
  • 中小企業:2022年4月1日 ※2022年3月31日までは努力義務

法的な義務化は早くて2020年6月。
中小企業とされている事業所でも、「どんな対応が必要になるのか」「自社で取り組むにはどうすればいいのか」について情報収集や準備を勧めましょう。

もちろんパワハラは従業員のモチベーションを下げ、職場の活力を下げる1つの要因です。安全配慮義務にも触りますので、義務化の前から問題があればすぐに対応すべきでしょう。
 

企業側がとるべき対策

パワハラ防止として企業側は以下のような取り組みを義務にすることが予定されています。

  • パワハラそのものの防止のために 研修や啓蒙活動
  • パワハラ防止に関する会社の方針を示し、従業員へ周知
  • 相談を受ける際の窓口の整備
  • パワハラ被害者への支援やケア
  • 相談者への相談をしたことへの不利益な取り扱いの禁止

適切な対応を行っていない場合、是正指導がされることも。また担当する従業員に対しても、他の労働者に対する言動や情報の取り扱い、担当者本人のメンタルケアに注意する必要があります。

この中でも企業として気になるのは「窓口の整備」や「被害者の支援・ケア」ではないでしょうか。
実際に被害にあってしまった方は、心身の大きなダメージとともに会社や就労に対して強い不安を感じているもの。信頼される相談先・窓口でなければ、声を上げることが難しいでしょう。
また窓口を設ける、ケアの手配を行うといった対応は企業の義務・責任とされますが、対応するスタッフもメンタルについての専門的な知識や経験は一朝一夕で積めるものではありません。

これらの対策・対応については、【 外部へ委託する 】ことも配慮の一端として認められています。
情報の安全性や不利な取り扱いを防ぐことはもちろん、 「社外」窓口 は被害者が安心して専門家・資格のあるスタッフへ相談ができる・一貫したケアが受けられるとして注目が集まっています。
 

違反した場合、罰則は?

「パワハラと適切な指導の境目が難しい」という企業側の意見にもとづき、今回の法改正では罰則のある規定は見送られました。

そのため、本当にパワハラを防げるのかといった点で心配する声も上がっています。
現時点では罰則はありませんが、悪質なケースは個人間・労使間での訴訟の他、企業名の公表を厚生労働省が行うような対応もされています。

今後より一層の取り締まりも見込まれる分野ですので、リスク管理としても積極的に対策・対応を取り組みたいですね。
 

パワハラの実態調査をしましょう

パワハラ防止の対策を考えるとき、企業の実態を知ることも必要になります。
従業員が現在困っていることや、相談の問題点をピックアップし、改善に向けて検討しましょう。

パワハラの背景にはハラスメントに関する知識不足以外に、「パワハラの行為者自身がストレスを抱えている」ことが考えられます。 管理職が責任の重さを1人で抱えなくてはいけなかったり、過密なスケジュールや無理な業務が険悪な雰囲気の原因になっているケースも。

会社として、従業員の健康を預かる立場として、従業員がストレスを溜めないように業務内容や実際の作業環境を定期的に見直し、健康診断やストレスチェック等で定期的に従業員の状態を把握することがより肝要となってくるでしょう。
そのためにも、毎年のストレスチェック・検査は社員が本当の状態を出すことができる「信頼のおける」調査であることが求められています。
 


パワハラ防止の義務化までに準備を

パワハラの定義やパワハラ防止法における企業の義務や企業がすべき対策を紹介しました。パワハラは組織の生産性や従業員満足度を下げます。

企業としてパワハラをなくしていく、パワハラが起きても適切に対応できるようにすることが大切です。

【2019年11月13日加筆】
2019年10月28日に行われた「第21回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」において、パワハラ防止法(女性活躍推進法等改正法)の施行・指針適用開始日ともに、大企業については2020年6月1日に決定となりました。当初2020年4月1日からとされていましたが、指針や政省令の策定の進行状況等を考慮した上で変更となったようです。
中小企業・事業主は、2022年3月31日までは「努力義務」、4月1日から義務付けになる見通しです。
 

〔参考文献・関連リンク〕

初出:2019年09月4日 / 編集:2019年11月13日

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