ハラスメントの実態と予防・対策:セクハラは「その後」の対処が重要!

   

セクハラは「その後」の対処が重要!“セカンドハラスメント”の実際と対策

平成29年に都道府県の雇用環境・均等部(室)に寄せられた相談のうち、「男女雇用機会均等法に関するもの」が19,187件、そのうちセクハラに関する案件は 3割以上を占めました。これは男女に関する相談の中でも最も多い割合です。

身体の性・心の性に関する ハラスメント は近年働く場でも問題化されており、として認識され始めたといえるでしょう。
その中で、セクハラを相談した人が「セカンドハラスメント」によって周囲の人から二次的な被害に遭うケースが急増しています。

せっかく声を上げてくれた被害者を守るためにも、企業が対策すべき問題の1つです。
この記事では「セクハラの二次被害」とはどのようなことを指すのか、セカンドハラスメントの原因と対策について解説します。
 

セクハラの二次被害とは?

「セクハラの二次被害」とは、セクハラの相談をした・被害にあったと周囲に伝えた際に、相談した相手や周囲の人たちから加害者ではなく「被害に遭った人が悪い」と責められたり、被害を軽視され不利益を被ることをいいます。

セカンドハラスメントはしている本人に自覚がない・悪気がないことも多く、また一見「正論」のように思える内容や理論で表現されるため、被害を受けた人も「自分が悪かったのかもしれない」とセカンドハラスメントだけでなくセクハラの被害自体を我慢してしまうケースにも発展します。
 

セクハラの二次被害の例

セクハラの二次被害には具体的にどういった言動があたるのでしょう。

  • どうしてNOと示さなかったのかと責める
  • セクハラされるのは女性として魅力的だから、と被害を肯定する
  • 加害者は昔からそういう人だから仕方ない、と諭す
  • 社会人なら辛いことくらいあるよ、と問題の主語を大きくする
  • 女性ならセクハラをかわせて一人前、と一般化する
  • 「あなたが誘ったのでは?」と疑う
  • あなたみたいな容姿の人が、と容姿やそのほかの要因をけなす
  • セクハラされるわけがない、と被害事実を否定する
  • イケメンにされてよかったね、と被害を喜ぶかのようなイメージの押し付け
  • 売名行為だと決めつける、事実確認をしない
  • 襲われなくてよかったね、など被害を矮小化する

このような発言は何気ない会話で言ってしまう可能性の強いものですが、被害者を傷つけるおそれがあるため控えましょう。

セクハラ被害者には女性が多いものの男性が被害に遭うこともあります。深く傷つくのは女性と同じなのに、特に男性の被害者は「男性だから」と被害を堪えてしまう、訴え出にくい環境に置かれています。

  • 男性が被害に遭うわけがない、と取り合わない
  • 勘違いでは?そういう仲だったの?と性的指向をからかう
  • 気にしすぎ・男ならそんなもんでしょ、と被害を軽視しきちんと話を聴かない

以上のような言動も立派なセカンドハラスメントです。
勇気を出して相談してくれた被害者をさらに苦しめてしまうことになります。
 

二次被害は被害者を傷つけ、対応を難しくする原因

2019年に日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が行った「セクシュアルハラスメント被害と職場の対応に関するWEBアンケート」では、セクハラ被害に遭った・被害を見聞きした人の中で60%以上が相談・通報しなかった、できなかったと回答しています。
日本の企業環境の中ではセクハラ被害を相談することの難しさ、セクハラ被害を相談した人がどれほどの勇気を必要としたのかが想像できます。

ですが、勇気をもって相談した人が「気のせい」扱いをされたり、被害に遭った方が悪いと言われたりすれば、どのように思うでしょうか。
「自分が悪い」と思えば我慢を続けてしまいメンタル不調に陥る、または「対応してくれない会社なら……」と退職や転職、外部への通報といった最悪の可能性はいくつも考えられます。
そこまで悪化することは少なくとも、 もうそれ以上会社には相談しようとは思わないのではないでしょうか。

セカンドハラスメント的な対応は、対応されなかった本人だけでなく、周囲の人の行動にも影響を及ぼします。
「相談しても相手にされなかった」「被害者が悪いと言われた・言われているのを目撃した・言ったことがある」という経験があると、自分がセクハラに遭遇したりセクハラの相談を受けた時、「会社や誰かに相談する」選択肢を自分から拒否してしまう可能性が高くなるのです。
セクハラの被害を食い止めるために重要な「初動対応」のポイントである「目撃証言」「被害者のSOS」を潰してしまう環境は、そのほかのメンタルヘルスに関しても悪影響しかありません。

また企業の知りえない加害者が、他の被害者を生んでいるおそれもあります。
相談をしたけれども対応がなく、つらい目に遭った被害者は退職、加害者はまた他の人へセクハラを続け、被害に遭った人は次々辞めていく……というケースも。
解決のきっかけがあったにもかかわらず、セカンドハラスメントでそのきっかけを自ら潰してしまったために 、どんどん会社全体としての状況が悪くなることも考えられます。

 

セクハラの二次被害防止は法律で決められている

男女雇用機会均等法にてセクハラの防止措置については定められていましたが、2019年の法改正によりセクハラ防止がより強化されました。

今回の改正ではセクハラ(ハラスメント)は行ってはいけないものであることや、会社側も従業員も他の労働者への言動に注意を払う必要があると定められています。
また相談をした労働者に不利益な取り扱いをすることも法律で明確に禁止されています。
既にセクハラへの対応をきちんとしなかったことで会社側への損害賠償が請求されたケースもあります。

また企業としての対応だけに注目されがちですが、セクハラの相談が総務・人事の窓口ではなく、直接の上司にされることもありえます。
セカンドハラスメントの知識がない上司が対応したために「企業側の対応がなかった」として後々問題に……ということも考えられます。
知識や対応のマニュアルなどを設けることも、制度や窓口整備と並んで行っていきたい対策です。
二次被害を起こさないことも、リスクマネジメントとして重要になります。
 

セクハラ被害者がNOを示しにくい理由 

セクハラ被害者が逃げなかったことを責められたり「本当に嫌なら断れたのでは?」と言われたりすることは少なくありません。

このような発言は二次被害であるということは先にも説明しましたが、なぜ被害者はNOと言えないのでしょうか。
被害者がはっきり嫌だと示せない理由については、海遊館事件がさんこうになるでしょう。最高裁の判決では、「被害者は内心は嫌だと感じながらも職場に居づらくなることをおそれ明確な拒否を示せないこともある」と指摘しています。

これはセクハラ被害に遭った女性に限らずパワハラ被害に遭う男性にとっても共通した部分があります。
加害者の社会的立場が上ですと、はっきりNOと示しにくい状況ではなかったかと考えられます。同僚や部下といった関係でも「職場の空気を悪くしたら……」「関係が崩れて、いじめられてしまうのでは」と不安を感じれば、声を上げることのハードルはぐんと上がるでしょう。

そもそもハラスメントに関する相談を上司や会社とすることについて、「もし周囲に情報が洩れたら……」と相談する行為自体に不安があるもの。普段から信頼関係の基礎があるからこそ相談をしてくれたのだとみることができます。
その信頼にこたえるためにも、不用意な反応・対応をしないように身を振り返ることが求められます。
 

セカンドハラスメントをしてしまう人は
「こうなんだ・こうあるべき」という認識バイアスがあるかも

セクハラ被害に遭った人の話を聞いて「狙われやすい服装をしていたのでは?」「被害者にも落ち度があったのでは?」と、周囲の人が悪気なく考えてしまうのには理由があるのです。

社会を送っていく中で、私たちは「こうなんだ」という様々な思いこみ(認識バイアス)を獲得しています。
例えば「あの人は〇〇大卒だから、優秀だろう」「 あの店は行列ができているからおいしい」……一見“正しく”見えるけれど統計や実際のデータでは“間違っている”【認識バイアス】は、私たちの日常のあちこちで見ることができます。

セカンドハラスメントでも、この認識バイアスが原因となるケースがあります。
それが 「公正世界仮説」 とよばれる、「悪いことが起こったのは、その被害者に原因がある」考えです。この認識バイアスを無意識のうちに持っていると、「被害に遭った=被害者に原因があった」と考えてしまいます。
被害者に原因があったと思うことは、「悪いことをしていない自分には、悪いことが起きないだろう」という信念を崩してしまうため、無意識のうちに不安を感じ被害者を先に避難してしまう行動につながるのです。

セクハラに関しては、被害者が被害を受けたのは被害者に落ち度があったのでなく「加害者が加害を行ったから」。 裁判や事件の事実検証の場でも、この認識バイアスがあれば「信頼性を損なう」として慎重に取り扱われるものです。
自身で気が付きにくいバイアスは研修などで事例を知り、自分自身の行動から気付きを得ることで発見できます。
 

セクハラ相談を受けたらまず「傾聴」、そして事実を確認

ではセクハラの相談や訴えを受けたら、企業としてどのような対応をすべきなのでしょうか?
 

適切な対応は “受け止めること”から

セクハラ相談を受けたら、第一に配慮すべきは「被害者の保護」と「事実確認」です。

そのためにも被害者本人からなるべく正確な情報が聞きたいもの。
企業ができる一番初めの対策は「被害者の話を否定せず、傾聴する」ことです。 窓口や相談員を設け安心して相談できる環境を整えるとともに、 相談した人がきちんと情報を守られ、不利益な取り扱いをしないという態度や対応を見せることが一番の「傾聴」態度となります。

相談担当として社員を任命する場合、その人にも傾聴の大切さ・ハラスメントの被害者の心理について知識の共有や研修を行いましょう。
担当の方は、事実確認を進めたり被害の相談を受けるにつれて、つい「なぜそういった行動をとったのか」と聞きたくなることもあるかもしれません。しかし被害者はなぜ?と聞かれると責められた気持ちになるでしょう。ほかにも、日常ならば全く問題のない発言でも被害に遭った方の心から見れば「責められた」と感じてしまうポイントがあります。

何気ない行動や発言で被害者を追い詰めてしまわないよう、また担当になった方が疲弊してしまわないよう、応答マニュアルや信頼できる連絡体制を作ることも企業の務めとなります。
 

セカンドハラスメントを起こさないために会社全体で研修を

二次被害を起こさないためにも、 「セカンドハラスメント」についての知識は会社の全員が知っておくべきです。

  • どういったことがセカンドハラスメントになるのか
  • 被害者はどういった気持ちになるのか
  • 上司はどういった対応をすべきか
     

上記のような内容は、定期的に社の全員が知ることができるよう研修やラーニングのテーマとして会社から学習の機会を提供しましょう。
また実際の相談や報告にどう対応するのか、窓口や通報の流れについて明確に定め、社員に「セクハラが起こった時の対応」として周知することも重要です。

誰がセクハラの被害に遭っても、相談しやすい・相談されやすい環境を作るには「みんなが知っている」ことが一番効果があるのです。
 


海遊館事件では、ハラスメントを行った社員の対処について「 セクハラ禁止の旨を文書として周知していた、セクハラに関する研修への毎年の参加を全従業員に義務付けていた」として企業側・被害者側が勝訴しました。
企業がきちんとした対応が実を結んだ一例といえるでしょう。

まずは、「全員が知ること」、そして「実際に行動できること」。企業として ハラスメントが起きにくい、起きてもきちんと対応できる環境を目指し、従業員の働きやすい環境づくりを検討してみませんか。
 

〔 参考・文献 〕

初出:2019年09月18日

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