企業に必須!「就業規則」の作り方とトラブル回避のためのポイント

   

企業に必須!「就業規則」の作り方とトラブル回避のためのポイント

「就業規則」は、10名以上の企業に作成と提出が義務付けられています。制服や就業時間などを定めたり、有給休暇について規定しているものですので、社員のどなたでも必ず一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

非正規契約・フレックス制度など新たな働き方が主流になりつつある今、SNSでの言動など社員の引き起こしたトラブルに企業が巻き込まれるケースも少なくありません。労使間のトラブルが起こった際に古いままの「就業規則」が役に立たなかった……という事例も。
「就業規則」は日々の業務を形作るルールです。それを運営する企業・経営・社員へ説明する人事がその重要性や詳細をきちんと把握してこそ最新の事情へ適応し働きやすい環境を作れるもの。

最新の事例や判例に合わせた就業既定の見直しに向けて、管理なら押さえておきたい最低限の「就業規則のポイント」について説明をしていきたいと思います。
 

就業規則は企業を「チームにする」ためのルール

「就業規則」とは、「その企業における、就業上守られるべき規律や労働条件の具体的な詳細を定めた規則」です。法律上は「賃金規程」や「退職金規程」なども労働に関する規定・会社の規律を定めるものであるため「就業規則」として届け出の対象となります。
  
また、処罰や報酬といった人事評価の規定や始業・終業時間、服装、休憩といったことを社全体で規律として設けることで「この企業で働くうえで何が正しいか」「業務のために何をすべきか」を示し、スムーズな業務の遂行と社や事業所全体の連帯を高める狙いもあります。

企業の就業規則には、「労働するためのルール」と「会社の規範」を定める目的があるのです。
 

就業規則は職場に定められた「レギュレーション」

就業規則を定める際に一番考えたいのが、労働条件。
就業規則で定められた労働条件は、その事業場における「最低条件」となります。

企業は従業員との雇用契約の際、賃金や労働時間などの労働条件をあらかじめ明確に示しますが、「合理的な労働条件が定められている就業規則」を周知させていた場合、その就業規則で定める労働条件で合意したとして「一括承認」がなされたとされます。
つまり、「みんなが知っている職務規程」=「この企業での労働条件」として承認されたと取り扱われるのです。
それゆえ就業規則は、労働基準法に準じた、かつ合理的で配慮あるものとしなければなりません。
  

「ひな形のまま」や「従来の規定」では高リスク?
実態に沿った作成・見直しを!

企業と従業員の共通のルールである就業規則ですが、多くの企業はひな形を利用して作成していることでしょう。厚生労働省からも就業規則のひな形が公開されており、法令に則った就業規則のモデルとして活用された企業も多いと思われます。

厚労省公開のモデルや、インターネットの処々で公開されているひな形を使用することに問題はありませんが、「モデルそのまま」での利用ではいざという時【企業の不利益】になるかもしれません。

ひな形はあくまで「最低限」、実態に合わせたオリジナル条文を

厚労省の公開するモデルやその他のひな型は、現在実際に適用されている業務内容にそぐわない部分があるでしょう。ひな形はあくまでも「テンプレート」、実際に運用するにあたっては記載が足りなかったり、不十分な点があります。

「就業規則を作ろう!」と思い立った際に一から作り上げるというのは非常に手間がかかりますし現実的ではありませんが、ひな形を利用する際は、以下の点に注意しておきましょう。
 

就業規則のひな形利用に注意!点検の4ポイント

  • 自社の実情と照らし合わせた時、不可能な内容ではないか
  • 記載されていないが自社において重要な項目は加えるべきか
  • 自社の現在働いている従業員から納得してもらえる内容か
  • 自社の従業員の労働条件を不利益な方へ変更するものではないか

本来であれば、就業規則は「会社の実情」に沿って作るべきものです。
「厚労省のものだから……」とひな形にある規定を読まずにそのまま採用すると、労使トラブルの際に問題になります。
いざという時に自社の規定を弱点にしないためにも、早めに専門家の視点でチェックを行いましょう。
 

社内で適用される「全部」を書くなら労基法を確認

就業規則はその会社のルールブック、法律で決められている記載をきちんと満たしていれば、原則何を追加で書いてもよいとされます。

しかし「企業が守るべき社会の最低基準」として労働基準法が設けられています。労働基準法を無視して、従業員に不利な規定を作ることはできません。

もし違反した就業規則を策定してもそれは無効とされ、裁判などでは労働基準法で定める基準が適用されます。また、労働条件や賃金についてもあやふやにぼかして記述することは認められません。
ですが、労働基準法を上回る条件・従業員側が有利となる規定に関しては自由な記載を行ってもほとんどが認められます。

なお、雇用契約書の定める条件と就業規則に矛盾が生じている場合、社員にとって“ より有利な内容 ”が適用されることになります。
 

就業規則見直しには「適用範囲」「計算式」「ハラスメント」に注意

では、「就業規則」を見直す際、リスクとなるようなところはどこか、どうやってチェックすればよいのでしょう?

一番良いのは修行規則の不備によって会社に損害が発生した判例をお手本に学ぶことです。
修行規則自体が労働基準法に違反しているというのは論外ですが、昨今ですと懲戒や労働条件の他に「 残業代 」「 機密保持に関する条項 」「 就業規則の変更が従業員の不利益になる 」という就業規則の不備に関する労使間トラブルが起こっています。いずれの判例も企業側に支払いまたは対応の責任を問うものです。

また新たに登場したパワハラ防止法にも、就業規則などでハラスメントに対する処罰や対応、企業としての取り組みを定めるよう努力を求める分がもりこまれました。健康経営などを目標としていなくてもハラスメント対策はもはや必須、少なくとも「企業がハラスメントを禁じていること」「どんな事をハラスメントとするのか」「該当する処罰の条項」といった項目を作成しておくべきとされています。

・賃金に関する条項は適用範囲・計算式を明確に掲載する
・現在の生活や法改正、業務内容に合わせて定期的に内容を更新する
・ハラスメントに対する企業の対応


以上の3点は、これから就業規則を作成する・見直すならモデルに追加して押さえておきたいポイントです。
 

Q1:追加時効の発生や記載漏れ、どうしたら?

就業規則の項目は 絶対的必要記載事項 ・ 相対的記載事項 ・ 任意記載事項 の3種類に分けられ、「作成時に必要な項目(必要記載事項)」が定められています。

必要記載事項に法律違反や記載漏れがあった場合、労働基準監督署に提出する際に多くは調査が入りますので不受理や指摘、指導を受けることとなるでしょう。
前述のように就業規則の不備はリスクしかありません、発見次第修正し、意見書とともに労働基準監督署へ届出を行いましょう。

ですが、まだ企業の体力のない時期だと従業員に対する福利厚生が望むようなものを用意できないこともままあります。「いずれ行うものだから」「今はないけどとりあえず」と就業規則に入れてしまうと、その規則が承認された時点からその内容が企業の“義務”となってしまいます。まずは「今必要なこと・行っていること」をシンプルにまとめ、実施に合わせて徐々に規則を変更・改正していくことが定石です。
そのためにも『就業規則の見直し』は定期的に行うようスケジュールに組み込んでおくべきでしょう。

また助成金などを申請する場合、記載漏れや不備のある就業規則では不支給の理由となる可能性が高いです。
 

Q2:社員とアルバイトの賞与規程を別々にしたい!

修行規則は原則「全従業員に適用」されるルールです。
しかし、会社の中で雇用契約の内容によって条件が異なる人が多数いる場合、就業規則で定める内容が異なる場合もよくあるもの。

そのような場合
・就業規則の中に適用範囲を明記する
・特殊な雇用や契約によって適用する就業規則を別に定める

といった対応をとればOKです。その場合社員用・アルバイト用など適用範囲によって別に就業規則を設けなければなりません。
 

有効な就業規則も『周知』しなければ意味がない!

就業規則を作成した後は、 労働基準法第106条 によって従業員全員に周知することが企業に義務付けられています。
 

使用者は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。

労働基準法第106条
 

就業規則の周知方法としては以下のようなものがあります。

  1. 10名以上の従業員がいる支社、営業所、店舗などに掲示する。
  2. 従業員全員に書面(印刷物・PDFなど)で交付し、各自保管してもらう。
  3. メールで従業員全員に送付する。
  4. データとして保存し、従業員全員がいつでもアクセスできる方法を周知する。


周知のポイントは「従業員全員がいつでもアクセスできる」ことです。
就業規則は基本10名以上の事業所ごとに届出を行うこととされていますので、掲示や周知を行う際も事業所ごと、またはより丁寧に各従業員宛てに行わなければなりません。
就業規則を確認するのに上司の許可が必要だったり、本社で手続きを踏まなければならないといったことであればそれは「就業規則が有効」となる条件を満たしていない可能性があります。

周知をされていない就業規則は多くの裁判で無効として判断されています。
せっかく作った就業規則をきちんと有効とするために、「届出」と並んで「周知」は徹底して行いましょう。
 


就業規則は、運用してみて初めて問題が発覚することが多い「落とし穴」になりがちです。
「項目や規定の不十分」や「不必要な条文」に社員からの質問や労使トラブルが発生してから気が付いても対応は難しいもの、まずは今ある就業記憶をしっかりと自社の実態に沿ったものにできるよう見直しましょう。
 

〔 参考・文献 〕

初出:2019年11月20日

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