障害者雇用促進法改正から考えるこれからの職場づくり【第2回】共生社会によって実現する未来とは?共生社会の課題と実現方法を解説

   

障害者雇用促進法改正から考える これからの職場づくりとは?【第2回】―共生社会の“課題”と実現方法を考える

現在、日本では超少子高齢化によって「共生社会」の実現が求められています。
共生社会の実現は、障害を持つ人でも健常者と同じように働くことができ、人と人とが助け合い、結果的に日本全体の活性化につながるとされています。

では、共生社会を実現するためにはどのような取り組みが必要なのか、また具体的にどういった行動を起こせばいいのでしょうか?

そこで今回は共生社会における課題と、共生社会実現のための取り組みや行動について解説していきます。
 

共生社会とは「全員参加型の社会 」

共生社会とは人種や性格、性別、学歴、年齢に関係なく、それぞれの人たちがお互いに尊重して支え合い、多様な価値観を認め合う全員参加型の社会のことをいいます。
人々の多様性を受け入れて、すべての人材を上手に活用して生産性を高めようという「ダイバーシティ」の考え方が共生社会の本質なのです。

現在の日本では「自分以外のことに気を払う余力がない」「手を差し伸べて、非難されたら……」と、自分と関わりのない人に対して無関心な言動をとる傾向が一般的になっています。それは日常生活でのふるまいだけでなく、経済活動や福祉といった社会的な運動に関してもそうです。
「無関心」・「自分と違うものを受け入れない」態度は、障害を持った人たちや、事故や大病を患って“ドロップアウト”した人々など本来であれば「活躍できる」人たちを障害があるから”、自分たちと違うから”とビジネスや生活の場から遠ざけてしまう大きな原因と言われています。

障害のある人とない人に分かれることなく、人々の能力が発揮される共生社会を実現できれば、地域社会と労働生活ともに新たな市場や生産性向上が期待できます。経済的な活力は、本人には社会活動や就労の場に参加する力が、周囲にも手を差し伸べる余力を与え、さらなる発展・新たな参加ひいては日本全体の発展へとつながる活動が期待されます。
そのための最初の一歩、共生社会の実現が求められているのです。
 

障害者との共生社会が注目されている理由

「共生社会」を考える際、まず注目されたのは【障害者との共生、社会参加】です。

障害者との共生社会が注目されている理由は、日本の超少子高齢化です。
現在日本は、超少子高齢化によって地域のつながりや労働生活における支え合い、保険など国を支える基盤が弱まってきています。企業は人材不足が課題となり、黒字経営でも人手不足によって倒産する企業は少なくありません。

そのため求人や雇用制度の現場では、シルバー雇用など高齢者が働きやすいような環境を整えて、人手不足を高齢者という“新たな人材”で補うという動きも定着しました。しかし、それでも限界のあることや高齢者特有の不便や配慮に頭を抱えている……という企業もおられるのではないでしょうか。

そこで現在注目されているのが、「障害者」と区分されている“人材” なのです。
 

障害者という隠れた人材

日本ではいまだに、障害者が“一人前の”人材としてみなされていない風潮があります。

厚生労働省が行なった、障害者の就業率に関する調査「身体障害、知的障害者及び精神障害者実態調査」によれば、身体・知的障害者ので50%前後でとどまっています。
さらに、精神障害者の就業率でいえば17.3%。働ける年代である16~60歳の人口に対して5%が「障害者」であるという厚労省の発表に対して、大変低い水準であることが明らかとなりました。

今の日本で障害を持つ人が十分に働けない状態は 「障害者=働けない」という認識をしている企業が多いなど、環境によるものが大きいとされています。

実際は、障害者とされていてもその”障害”の部分以外は 普通の人と変わりはありません。
身体に障害があっても事務や処理能力に影響を与えることはありませんし、精神障害があっても仕事の仕方や指示を明確にする、設備を整えるなど少しの工夫で十分に働くことは可能です。コツコツと仕事をこなす人、勉強熱心な方も多く、 実際にお話をすると共に働く同僚としても頼れるスキルや驚くような技術を持たれている方もいます。

共生社会を目指すためにも、日本の企業は障害者を人材とみなして評価し、積極的に雇用を進めることが必要だといえるでしょう。
 

過去の障害者への差別が社会の反省点

なぜ、「障害者」とされているだけで、能力があるのに働けないのでしょう?

共生社会を実現する上で、過去の社会的な反省といえば「障害者への差別」が挙げられます。
これまで日本では、障害者を良くも悪くも「特別視」することがほとんどでした。現在でもその傾向は残っており、依然として多くの方が「腫物扱い」や「隔離・差別」といったつらい環境に置かれています。

しかし、障害のある人を一律に「不自由な人」と決めつけ、“かわいそう”で“一方的に助けてあげるべき存在”ととらえるのは【 大失敗 】です。
障害者は基本的な人権をもつ、私たちと同様に日々を暮らし文化的な活動を楽しむ「社会生活」を送る一人の人間です。「障害がある」ことは特別扱いや、普通の人とは違う待遇・扱いをすることを肯定する理由ではありません。
「障害者だから」という言葉は共生社会を実現する上で一番気を付けたい考えです。

障害のありなしに関係なくすべての人が助け合い、共に生きていき、人々の間から「障害者」という考え方をなくすことこそが 本来の意味の 「共生社会」といえるでしょう。
 

障害者との共生社会を実現するために

共生社会を作っていくためには、以下2つの課題があります。

  • 障害者の機能的障害をどうとらえるか
  • 他の社員の「障害者に対する心のバリア」をどう解消するか

障害者には機能的障害があり、一般的な社員と比べてできることが限られます。
目に見える形で障害があらわれることもあれば、理解の方法や「普通にできるだろう」と思っている単純な作業などが困難な場合もあるでしょう。
設備や教育にコストを割く、時間をかけて問題をひとつひとつ解消するといった単純だけれども「地味で時間のかかる」そして「コストのかかる」方法が求められます。

「心のバリア」の問題はより複雑です。
障害のない人が今の日本で生活をしていると、これまでの暮らしや体験の中で「障害者」に触れる機会がとても少なくなってしまいがちになります。そのため職場で日常的に「障害」に触れることに対して、とまどいや不安、「特別感」を感じる人は少なくありません。また上記の機能的な問題の解決のために、設備や制度を導入する・他の社員と業務調整を行うなど企業が対応をした場合、元からいる社員が「特別対応ではないか」と否定的な感情を持ったり障害者を敵視するといったことも想像できるでしょう。
とまどいやマイナスな感情は、障害者が困っているところに遭遇しても助けないといった排除的な行動に通じていきます。

この両者間の「障害」は根深く、また対応が難しいため「通常の業務に支障が出る」と考える企業が未だ多いのが現状です。その対応や心理的なバリアを回避するためか、障害者であることを表明して就職活動を行うと一般的な待遇が受けられないという話がとてもよくみられます。
こういった現状は「障害の社会モデル」として社会学などで研究が進められています。

「障害の社会モデル」の解消方法は、“健常者の心のバリアを取り除くこと”と考えられています。相手を理解し、障害者に対する心のバリアを取り除くよう具体的な行動に移すこと。共生社会に必要なのはそんな一人一人の行動です。
 

共生社会に向けた政府の取り組み

共生社会の実現に向け、政府や市町村、公共団体も様々な取り組みを行っています。

  • 啓発活動の推進・企画
  • 障害理解に必要な教育の充実
  • 障害者雇用の促進・法整備
  • 保険や医療体制の整備

各市区町村によってその具体的な取り組みは多種多様ですが、活動を大きく分けるとこの4つになります。特に文部科学省では 「ノーマライゼーションの取り組み」 や「インクルーシブ教育システムの構築」などの大目標を掲げ、計画や指針、カリキュラム例が発表されています。

***ノーマライゼーションとは?***
「normalization(標準化・常態化)」と表記される障害をもつ者ともたない者とが平等に生活する社会を実現させる取り組みのことです。
車いすや足が不自由な方でも移動しやすいようスロープを取り付けるなどバリアフリーを進める、誰もが使いやすいユニバーサルデザインを採用するといった障壁(バリア)のない状態が「当たり前」とされる地域や組織、 社会を目指す活動を指します。
政府は、「障害者基本法」による計画の策定、「ノーマライゼーション7か年戦略」などを打ち出してノーマライゼーションの価値観を共有できるよう 具体的な施策を示しています。

 

***【 インクルーシブ教育 】とは?***
“インクルーシブ ”とは「inclusive(違うものを包み込む・包括的な)」という英語がもとになった 思想です。ノーマライゼーションに基づき、障害の有無やそれぞれの得意不得意に関係なく、自分が望んだ環境・自分に合った配慮を使って教育を受ける権利やそれを達成するための活動を指します。
教育の場面では、障害の有無によって教育制度一般から排除されないこと、自分の生活する地域で基礎教育が受けられること、必要な「合理的配慮」が得られることを目標として、これまで養護学校など障害の有無で学習する環境を区別していた制度や十分な配慮ができるような体制への見直しから「多様な学びの場」の用意を進める活動として現れています。
「一人ひとりの違いを肯定し、それに合わせる」、「違う背景、違う能力を持った人たちが一緒の環境で学ぶ、暮らす」を両立させることは、社会における個々の能力や経験の違いにも価値があると評価する、持っている属性で判断されることなく組織全体で個人を受け入れる「ソーシャル・インクルージョン」の実現した社会を志しています。


固定観念や社会についての考え方が柔らかい子供のうちから、人間個人個人の違いを尊重する価値観、自己肯定感や人権についての理解、障害や様々な“生きづらさ”に対して積極的に取り組む活動に触れることは、偏見や差別をいった ”心のバリア”に対してとても有効とされています。

国や地方も教育や障害者が働ける、また健常者と同じような生活が送れるような社会づくりへの取り組みを進めているのです。
 

共生社会を実現するために「まずここから」

共生社会を実現するためには、障害の有無に限らず「困っている人に対してどう接すべきか」、自ら考えて行動することが要となってきます。

しかし日本で暮らしていると、困っている人に気づいても人目をはばかったり拒否されることにとても敏感になったりして、躊躇しがちな傾向にあります。「一歩踏み出せない」というのも立派な“心のバリア”、そのせいで具体的な行動を起こせないという人は多いです。
心のバリアをなくす一番の方法は「行動を起こす」ことです。自分の周りを見渡して、人々の困りごとを見つけたら、積極的に話をして、相手がどんなことを求めているのか知るというのも一つの大事な「バリアフリー化」です。

共生社会を作り上げるには、日本人ひとりひとりが自分の心のバリアを取り除き、行動を起こしていかなければいけません。
 

〔 参考・文献 〕

初出:2019年10月01日

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