「改正障害者雇用促進法」2020年4月施行:今後の障害者雇用は「多様化」がキーワード!増える障害者雇用で企業が得られる「+α」とは?

   

今後の障害者雇用は「多様化」がキーワード!増える障害者雇用で企業が得られる「+α」とは?

平成30年の厚生労働省の調査によれば、民間企業における障害者の実雇用率は2.05%、法定雇用率を達成している企業の割合は全体の45.9%という結果となっています。
現在障害者の就労形態は多様化が進み、ITやIOTを利用した勤務システムや医療との連携も今や珍しいことではありません。リモートワークやクラウド・ノマドといった在宅での就労も普及し、今まで就労が難しかった障害者にも活躍の場が広がりました。
そんな中、障害者の人材価値に注目し、障害者の雇用を考えている・見直し始める企業も多いのではないでしょうか。

今回は、障害者雇用のデータから雇用・就労の形態、そして障害者を雇用するとき企業が得られる「プラスα」までご紹介します。
 

障害者の雇用数は増加
「障害者雇用ゼロ企業」とは?

従業員50人つき1人以上。
これは民間企業に定められている「障害者の法定雇用率2.2%」を人数に直したものです。平成30年の調査時点で民間企業に雇用されている障害者の数は53万人、前年より7.9%(4万人弱相当)増加し15年連続で過去最高を記録しました。実雇用率は、過去7年で最高の2.05%と「2%の壁」を突破し、法定雇用率にぐんと近づいた印象です。
特に「精神障害者」の雇用数は伸び率が多きく、他の2種を大きく引き離す34.7%増という結果になりました。これは休職・退職理由に精神疾患が増加していることから「休職した社員の再雇用」という側面も加味されているのでしょう。

ですが法定雇用率を達成した企業割合は全体的に前年度より減少、未達成企業は約5万社、そのうち「障害者雇用ゼロ企業」(障害者を1人も雇用していない企業)は31,439社にも上りました。これは未達成企業の57.8%、半数以上を占める大きなグループとなっています。
法定雇用率未達成企業の特徴として、不足数が0.5人または1人である「1人不足企業」の多さが挙げられます。その割合は64%、 「障害者雇用ゼロ企業」の割合も鑑みると 「法定雇用率は1人だけど、その1人が雇えない」という企業が大半というところに日本の現状がありそうです。
 

雇用形態の人気は「一般就労」
政府もその活躍に期待

現在、日本で障害者として就労する場合、働き方には主に以下の2種類があります。

  • 福祉的就労
  • 一般就労

福祉的就労とは、仕事をしながら福祉サービスも利用する働き方のことです。
就労という形態をとりますが福祉サービスの利用・参加がメインで、職場への出欠勤や作業時間、作業量などは障害者の希望や医療ケア計画との相談の上決定されます。就労よりも「就労と同様の環境内で生活に必要なスキルを身に着ける」という目的が中心に据えられる場合もあり、あくまでもサービスや訓練の一端としてペナルティなどが発生することはありません。
福祉的就労を行なう事業には、「就労移行支援事業」や「就労継続支援事業」などがあります。特に就労継続支援事業にはA・B、2種類の支援が設けられています。

一般就労とは企業などと雇用契約を結んで働く、一般的な就労形態のことです。
民間企業や公的な団体で一般枠・障害者雇用枠で働くこととなり、給料形態や勤務時間、仕事内容などは経営者主体で決められます。大概の求人では就労条件を設ける際に障害について考慮されていないため、障害者が一般枠で就職すると配慮が受けにくい・働き続けること自体にとてもエネルギーを使わなければならない場合もあります。
労働者の自由度は低く仕事内容なども融通や工夫がしにくいですが、社会的な信用や賃金・社会保障といった「見えないリターン」は大きいです。また求人数も多いため「障害を隠して応募する」といったケースも常態化しています。

政府は障害者は少子高齢化における『人手不足』問題に対して障害者の活躍を期待し、この一般就労における雇用の増加を推進しています。
民間企業としても様々な働き方モデルや技術の登場によって「障害」をハンデではなく一つの“人生経験”“その人のタレント”としてとらえることが可能になった今、新たな人材のブルーオーシャンとして今まで「障害者」とされていた人々に注目が集まっています。
 

就労形態の多様化は
「普通の人」にもうれしいイノベーション

現在、障害者の就労形態は技術の革新とともに大きく多様化が進んでいます。

特にその推進力となったのはIT(情報通信技術)の発達です。
パソコンを使って在宅で仕事をする「リモートワーク(テレワーク)」は、政府主導で「在宅雇用の推進」の一端として推奨され、注目を集めました。
ネットを使ったクラウド化やパソコン・タブレットによる視覚化・モバイル化によって成立した「低コストで仕事がどこでも・誰でもできる」配慮の導入は、通勤をはじめとした現場での就労が困難であったり理解やコミュニケーションに特徴のある障害を持つ方々の活躍の場を身近にしたと言えるでしょう。

平成28年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」でも、「障害者の希望や能力などに応じて障害者が最大限活躍できる環境整備」を目指しており、その選択肢の一つとしてICTを活用したリモートワークが例に挙げられました。

このような新しい就労形態は障害者に限らず「小さな子供を持つ家族」や「海外在住者」など様々なライフスタイルの選択に就労の機会を増やし、「能力に応じた働き方」の可能性を広げていくでしょう。
 

障害者雇用につきものの環境コスト、どう乗り切る?

障害者の雇用をためらう一番の理由に「施設や設備の設置及びメンテナンスのコスト」を上げる企業は多いでしょう。
障害者を雇用する・障害者に力になってもらうには少なからぬ「環境整備」が発生します。

政府は法定雇用率を超えて障害者を雇用している事業者に対し、調整金や報償金の支給や、その他条件に応じて助成金が支給されるなどのメリットを用意しています。
 

「障害者雇用」に支給される助成金 有効活用を

障害者を雇用したときに支給される助成金には、主に以下のものがあります。

  • 特定求職者雇用開発助成金
    1. 特定就職困難者コース
    2. 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
    3. 障害者初回雇用コース
  • トライアル雇用助成金
    障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース
  • 障害者雇用安定助成金
    1.障害者職場適応援助コース
    2.障害者雇用安定助成金(中小企業障害者多数雇用施設設置等コース)

たとえば特定求職者雇用開発助成金の「障害者初回雇用コース」では、初めての障害者雇用で法定雇用率以上の障害者を雇用した中小企業に対して120万円が支給されます。ほかにも、障害者に対して適切な雇用管理の措置を行なった場合や、職場定着のための措置を実施した時などにも得られる助成金があります。

障害者雇用を行った後に起こるであろう整備コストにこれら助成金をうまく活用すれば、社会貢献だけでなく「働きやすい会社」としての信頼向上にもつながるでしょう。
 

新たな視点の導入で社内に「+α」
これからの時代の準備としての雇用を

歴史の中では働けないほどの「障害」とされていた近視や乱視も、眼鏡の普及によって今や「身体的特徴の一つ」程度という認識になりました。「障害」というものの本質は『今現在の社会で感じる困難さ』でしかありません。
配慮や技術、工夫といった「周囲の理解」があれば、その特徴や個性は刺激となってモチベーションの向上や職場環境の向上という企業にとって「+α」のシナジー効果を生み出します。

独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が掲載している、障害者の雇用促進における好事例集では、障害者を雇用した企業のポジティブな声を特集しています。
すでに障害をプラスとして取り込むことに成功した企業の事例から、障害の付き合い方・配慮の方法について様々な事例や当事者の声を学ぶことができるでしょう。

「今の社会に困難を感じる」というのは、私たちが感じている「普通」に対して疑問を投げかけられる視点でもあります。
これから企業が迎える「多様性の時代」、社内に様々な背景や思想を持つ人がいることはトラブルやミスマッチを防ぐ最大のメリット。積極的な「雇用」の推進を!
 

〔 参考・文献 〕

初出:2019年11月01日

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