社員の妊娠に対する適切な措置は?時系列に分けてご紹介!

   

社員の妊娠に対する適切な措置は?時系列に分けてご紹介!

「社員が働きやすい環境」の整備は企業にとって最も重要な”福利厚生”の一つです。
母子の健康を守るための措置を取るのはどの企業にも課せられた「義務」。
社員が安心して人生設計やライフマネジメントを行うためにも、社員やその家族が妊娠した際どのような”配慮・制度”があるのか社員全体に知らせなければなりません。

では実際にどのような措置を行うべきなのか……時系列に分け、それぞれにおいて会社ができる”配慮・措置”の実例をわかりやすくご紹介します。
 

社員から妊娠を報告されたとき、どうする?

妊娠がわかった時は、直属の上司に報告することが通例となっています。

報告時期は「病院で妊娠が判明した直後」「安定期に入ったころ」「12週が目安」など本人によりますが、 まずは妊娠に対してお祝いの言葉、ポジティブな言葉で応じましょう。
「妊娠して仕事に支障を出してしまう……」と不安に感じていたり、「まだ働いていたい」と考えている人もいます。不安を受け止める、これからの措置や産休・育休の話し合いの中でも良好な関係を気づいていくために、一番最初に伝えるべきは「おめでとう」です。

体調やホルモンの変化で多情多恨になりがちな妊娠中は 、”措置の必要性や配慮の内容について”や”「仕事を休む」ということに対する不安”も通常より大きく感じてしまいます。報告に対してお祝いを述べるとともに、
「妊娠しても働ける、スケジュールは会社と相談できる」
「妊娠は不慮のこともあるので、すぐ報告してほしい」

この2点を理解してもらいましょう。

男性やまだ妊娠したことのない女性にとって「妊娠した体」がどうなるのか、どんな経過があるのかは未知なもの。けれど、体調や健康状態に合わせて措置をするのは普通のことです。
まず妊娠の報告を受けた時に話し合う内容を考えておきましょう。
 

本人と相談して”必要な措置”を決めよう

現在の状態やスケジュールを確認する

社員が妊娠したことをの報告を受けて、まず行うべきは「妊娠期間・出産、予後に必要な措置の確認」です。

妊娠した社員の体調や状態は 同じ女性でも一人ひとり全く違う経過をたどります。男性でも「つわり」や貧血、おなかが膨らんでくるといった体調の変化は想像できますが、実際にそれがいつ頃起こるのか、どれくらい重い体調不良になるのかは妊娠した本人にもわかりません。同じ妊娠を経験した女性の間でも同じ経過をとることは稀で、「出産までバリバリ働ける」方もいれば「妊娠初期から立っていられない」方までその程度や進行は様々です。

妊娠と仕事についての価値観も様々、ご家族や金銭的な問題もあるので「この人がこうだったから今回も……」と一概に判断するのはお勧めできません。エンゲージメントの向上のためにも、その人の価値観や仕事に関する意識のウェイトを共有しましょう。

報告を受けたら、産業医または産業保健スタッフを交えて、これからのサポート内容を話し合う場を設けましょう。この時気を付けたいのは以下の二点です。

  • 本人の希望する出産後までのプラン・欲しいサポートを聞く
  • 措置内容や今後のスケジュールをメールなどで文章として共有する

話し合いで確認しておきたい内容は以下になります。

  • 現在の妊娠状態、出産予定日、検診の予定
  • 産休・育休の取得時期や出産後の復帰の希望について
  • 会社ができる配慮の内容、本人が希望する措置と実施のスケジュール
  • 措置や配慮の実施の際、周囲に妊娠を説明していいか。または自分で報告するか

特に配慮の内容やスケジュールはよく話し合っておくことが重要です。
他の社員への負担調整や 代替要員の確保 など実施までに会社がすべき内容があります。実施までに準備が必要なことをきちんと説明、納得してもらいましょう。

また周囲への妊娠の報告は、流産した際 や妊活中の社員に不快感を与えてしまった場合、センシティブな問題にも発展する可能性があります。
妊娠を報告する範囲や内容は本人の希望を聞くとともに、配慮や措置、復帰を希望する際に快く迎えてもらえるようどんな人にどのように知らせるか一緒に考えましょう。

並行して、引継ぎや仕事のスケジュールの調整は早め早めに行ってもらえるようお願いすることもお忘れなく。
妊娠に対してニュートラルな意見を持っていた人でも、配慮や措置が理由で多大な負担がかかってしまうと、「妊娠」に対してマイナスなイメージや忌避感を植えてしまうことにもなります。なるべく準備や周囲への配慮・説明は迅速に、前倒し気味に行うことがトラブル回避につながります。
 

妊娠中は体を「守る」措置や配慮を

いわゆる”妊娠中”は突然の体調不良やお腹が膨らんでくる方も多いので、本人も周囲も戸惑いがちになります。また「迷惑をかけられない」として体調不良を我慢したり、「これくらい」と本人判断で肉体に負荷のかかる作業を行ってしまい就業中に搬送……といった事例も。

体の状態やどれくらいの負荷まで大丈夫なのかは個人個人の体力や妊娠状態にもよるもの。産業医やかかりつけ医からの意見を参考にし、会社としては「就業・通勤環境」や「業務内容」の見直しを中心に配慮を考えましょう。

とはいえ何ができるか、何からした方がいいのかは各企業の就業環境によって大きく変わります。色々な企業で実施されている ”配慮”の中で、比較的実施しやすいものを集めました。
 


★時差通勤でラッシュを避けよう

通勤ラッシュの混雑は普通の人でも体力を使うもの。
妊娠して体調が悪い・お腹が大きい方の場合、つわりの悪化や圧迫による切迫流産などを引き起こす可能性があります。また最近はラッシュ時に妊婦を標的にした嫌がらせを行う人についての報告もあり、安全配慮義務の視点からも安心して通勤できる環境は必要です。

本人から申し入れがあった場合、通勤ラッシュの時間帯を避けた「時差通勤」の措置を実施しましょう。
時差通勤というと時間帯をずらすことを考えてしまいがちですが、より混雑の少ない通勤経路を選択できるようにしたり、始業時刻や終業時刻を30〜60分ほど調整するフレックス形態の採用といったことも立派に混雑対策となります。
社員の通勤状況や健康状態を考慮に入れて各企業で適切な措置を行うのも必要です。

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★勤務時間は「短縮」ではなく、「体調に合わせる」

”配慮”と聞くと真っ先に考えるのが「勤務時間の短縮」ですね。

この場合、勤務時間を単に短くする措置が一般的ですが、始業時刻や終業時刻を社員が決定できるフレックス制度を導入・選択する会社が増えています。勤務時間の確保と調整が本人の体調に合わせられる上、先述した通勤の問題も解決できる有効な措置となります。

勤務時間を固定したい場合は会社の規則などに合わせ、5時間・6時間・7時間など複数から選択できるようにしてみるのも一策です。経理や総務といった部署の方も交えて、「どんな働き方が提案できるか」今後の対応も含め話し合ってみてはいかがでしょう。

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★業務内容の見直しは「肉体の負担 を減らす 」が第一

妊娠中の体には胎児や羊水の重さと母体の筋力がアンバランスで、足腰や内臓に様々な負担がかかっています。また体内の環境も不安定で、ホルモンや内部分泌物の影響が感覚にダイレクトな影響を与えます。
「考慮していれば防げた事故」を避けるためにも、まずは妊娠した社員の業務を見直し、”肉体的な負担”が赤ちゃんや母体に悪影響を及ぼさないよう再検討をしましょう。 
肉体労働に該当する業務としては以下のようなものが挙げられます。

  1. 重量物を取り扱う作業
    ※継続作業の場合は6~8kg以上 、断続作業の場合は10kg以上
  2. 常時、全身の運動を伴う作業
  3. 頻繁に階段の昇降を伴う作業
  4. 腹部の圧迫など不自然な姿勢を強制される作業
  5. 全身の振動を伴う作業

このような作業に従事している場合、外出や出張が多い業務と同様に就業について業務転換や制限を行わなければなりません。

またなるべくなら周囲へも説明を行い、妊娠に対しての知識と理解をお願いしましょう。不公平感が出ないためにも「妊娠時の身体負担は命にかかわる場合もあること」「期間限定の作業配慮であり、その分の各人の業務内容を配慮すること」は、周囲の社員へきちんと伝えたいところです。

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★休憩時間は「時間」「回数」「場所・設備」の3ポイント

妊娠した社員の健康状態に合わせて、適切な休憩をとってもらえるよう時間や回数を設定しなければなりません。健康状態は各社員、各妊娠時期それぞれによって異なりますので、「通常の休憩時間+1日1回15分の作業中休憩」から開始し、様子を見て調整することから始めてみてはどうでしょうか。

また物理的に体が重くなることもあり、本人が感じているよりも肉体的に負荷がかかっていることも。休憩時間の配慮の他に、「横になれるスペースの確保」「ゆっくり休める休憩室を設ける」といった設備的なものも考えられるでしょう。このような設備は一般社員にも開放することで、妊娠に対するムードや理解をワンランク高める”秘策”としても活用できます。

とはいえ、自己申告だけで企業側が的確な時間や回数を把握するのは難しいところがあります。
心身の具合や今の休憩制度が体調に遭っているのかは、産業医や主治医と連携し意見をうかがうことが重要となります。そのためにも検診や気軽に相談できる環境について一度見直してみると、さらに社内の安全衛生環境の向上につながるでしょう。

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★外出や出張の制限は本人だけでなく家族も

妊娠した社員、特に出産日が近い方について、外出や出張が多い業務に従事している場合は業務転換や就業制限が必要となります。

新幹線や飛行機を使った長距離・ 長時間の移動は、気圧や振動といった肉体的・体力的な負担だけでなく、「既往症や今までの経過がわかる病院」から離れてしまうためもし妊娠にかかる危険があった場合対応ができない、一刻を争う事態で遅れを生じる事態が考えられるからです。妊娠中の事故や外部からのダメージは、母子の命に係わる事態を引き起こしかねません。

また、特に妊娠後期の家族を持つ社員にも同様の配慮が必要でしょう。
”妊娠は病気ではない”けれど、出産は大量出血や切開といった輸血・手術を必要とすることも頻繁です。
家族の署名や同意が必要な時、不安で支えてほしいときにきちんとそばにいてあげられるよう、駆け付けられる距離・行きつけの病院にかかれる環境で落ち着いて就業できるスケジュールを考えましょう。オンライン会議などIT技術を活用したり、 スケジュールを調整するだけでも安全度は格段に上がります。 
 


産前・産後は「体の回復」を中心にスケジュールを

出産を迎えた社員に対して、会社ができる最大の配慮は「産休」です。

産休に入る社員が安心して療養にあたれるよう、期間やその間の仕事の割り振り、復帰前の相談について事前によく相互で話し合っておくことが大事です。
休業中も総務や人事と連絡を取り、回復の具合や本人の意気込み、家庭の状況を確認しておくと、復帰後の働き方のイメージも明確になるでしょう。
 

産前・産後休暇は医療スタッフの意見も参考に

そもそも産前産後に関して、労働基準法において働いてはいけない期間が以下のように設けられています。

  • 産前6週間:本人から休業申請があった場合、就業させてはいけません
  • 出産日から8週間(産後): 就業させてはいけません
  • 出産日から6週間後~:本人の申請と医師の許可があれば就業させてもよいです

基本的にこの規定に基づき、産前産後休暇を設定するようにしましょう。

また休業期間は出産する状況や母体の状態によっても変わってきます。
双子以上であったり、母体や胎児に医療ケアや治療が必要な場合、 上記期間よりも多くの休業が請求できます。妊娠報告時に計画した期間で本当に大丈夫か、産休に入る前に産業医やかかりつけ医の意見書を交えて再度確認をとりましょう。

また、【産休制度】について平素より社員に周知しておくことも重要です。
「家族が妊娠した場合、自分が妊娠した場合にどうすればいいのか」を常日頃より知っておくこと、前例があればなお具体的なイメージがしやすいでしょう。

「この会社なら安心して家族を迎えられる」という社員からの信頼を得る、 社員のエンゲージメントを上げるためにも日頃の周知・対応の前例は必要です。
  

育休も含めて、休業中から復帰のスケジュールを

1歳未満の子供が家庭におり、その世話や育児をする必要がある場合、産休終了の一週間前に会社へ申し出れば「育児休暇」の取得が認められます。
「育児休暇」は子供が1歳になるまでの間、希望する期間育児のために休業ができる制度です。一茶になるまでの間でしたら、申請した期間を延ばすことも可能です。
また、子どもが1歳になった後に保育所に入れないなどの不可抗力の事情がある場合、 子どもが2歳に達する日まで延長することができます 。

産休中・育休中から本人と連絡を取り、「体調の回復具合」や「復帰の意思があるか」「復帰の際はどの程度の仕事量から始めたいか」など本人のイメージや意思を確認し、その状態に向けて社内の準備や情報共有を進めていると保育園の確保など、復帰のチャンスを逃さず活用できます。

また、育休を取得できる方には要件があります。申請前に確認を行いましょう。
 

様々な支援が受けられます

休業など会社が設けた措置以外でも、公的な機関や国が産前産後の妊娠した方に向けて支援を展開しています。
 

  • 看護休暇
    小学校入学前の子どもを養育する労働者は 会社に申し出ることによって、 年次有給休暇とは別に 1年につき5日 康診断のために休暇を取得することができる
  • 育児休業給付金
    雇用保険に加入している人が育児休業をした場合に、原則として休業開始時の賃金 給付の 50 %(※) を受けることができます 。
  • 産前・産後休業期間中、 育児休業等期間中 の社会保険料の免除
    事業主の方が 年金事務所又は健康保険組合に申出 をすることによって 育児休業等をしている間の社会保険料が被 保険者本 人負担分 及び事業主負担分ともに免除さ れます
  • 出産手当金
    出産日以前42日から出産日後56日までの間 欠勤1日について健康保険から賃金の3分の2相当額が支給されます
     

代替要員の確保は早めに、余裕をもって

企業が一番頭を悩ますのは「代替要員の確保」ではないでしょうか。

代替といえども、一緒に働く社員です。なるべくなら妊娠が決まった際に雇用、または候補を決め、産休に入るまで一緒に働き引継ぎを済ませておくよう、早いうちから段取りを進めておくのがベストパターンです。

他部署や同部署内で代替要員を募る場合、その方の通常業務がきちんと回るよう再配分したり、肉体労働ばかりとならないよう業務内容について意見を聴いて調整を行うなど負担が偏らないよう、また過剰に配慮や措置が行われていないかを確認することが「上手な確保のコツ」となります。

自分が普段触れない他の人の業務を体感する・妊娠出産に関わる手続きを間近で見ることができますので、代替要員となった方には新しい知見が得られるチャンスでもあります。
社内の雰囲気を整えることは「心残りなく」休業を認め送り出せる心の環境整備にもつながっています。
 


「妊娠」の報告を受けた時、慌てて全部をそろえなくとも、段階を踏んでその時必要な配慮や措置を実施していけば女性社員が妊娠した際に働きやすい環境を整えることが可能です。
大事なのは「互いに相談をすること」、妊娠した女性の健康状態というのは個人差があるので、しっかりと相談に乗った上で適切な措置を取るようにしなければなりません。

適切な措置を行い、妊娠した社員を社内全体でフォローできるような環境作りを徹底すれば、より魅力的な企業として企業規模の拡大にもつながるでしょう。
当記事がその参考になれば幸いです。
 

〔 参考・文献 〕

初出:2019年09月24日

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