気になる他社の実施状況は?『ストレスチェックのリアル』をデータから解説

   

気になる他社の実施状況は?『ストレスチェックのリアル』をデータから解説

2015年12月に義務化され、50名以上の労働者がいる企業では実施しなければならないストレスチェック。今年度で5年目を迎え、身近でも「知ってる」「やったことある!」という声が普通に聞こえるようになってきました。

しかし、実際の実施状況はどれくらいなのでしょうか?
ストレスチェックの受検は健康診断と違い自由参加ですので、本当に他社の従業員も受検してくれているのでしょうか。運用についても指針やマニュアルで定められているとはいえ、産業医とのやり取りや面接についてどうしたのかも気になるところ。

今回は厚生労働省が発表したデータを基に、業種別の実施状況や産業医・実施者の内訳などその状況を詳しく説明いたします。
 

メンタルヘルスケアの注目度はアップ!
過去3年間で半数の企業に休職者

労働安全衛生法が改正されたことにより、2015年12月から労働者が50人以上いる事業所では毎年一回全ての労働者に対して実施することが義務付けられています。ストレス社会と言われる現代日本では非常に重要な制度です。改めてストレスチェックの目的をまとめると以下の3点となります。

  • メンタルヘルス不調を防止する
  • 労働者自身がストレスに対して対処することを促す
  • より働きやすい職場へ改善する

令和元年8月に公表された「平成30年「労働安全衛生調査」(実態調査)」では「メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所」の割合は59.2%と、前回(2017年)の調査より0.8%の増加がありました。

メンタルヘルスの問題があると従業員の働きやパフォーマンス、業務の効率にマイナスの影響を与えるということは、すでに2011年の調査の時点で9割の企業が認識していました。実際、労働政策研究・研修機構(JILPT)によれば休職者が1人以上いる企業は全体の52.0%、半数以上の企業が平均して3人ほどの休職者を抱えているそうです。

従業員側からもメンタルヘルスに対する取り組みの希望は強く、「現在の仕事に関することでストレスを感じる事がある」と答えた割合は58.0%。会社で働く半数以上が何らかのストレスを職場・業務から受けているという結果が報告されています。
メンタルヘルス対策に取り組んでいない事業所でも、過半数が「今後は強化する」「取り組まねばならないと思う」との声が強く出ています。
 

ストレスチェックの実施率は80%  
接客・現場ほど「やりにくい」現状が

企業に課せられたメンタルヘルス対策として、義務化されたストレスチェック。
労働者がより良い環境で働き、生産性向上には欠かせない制度と言えるでしょう。しかしその実施方法に関してはまだ手探り状況が続いている状況です。
では現在、どれほど実施されているのでしょうか?

厚生労働省が2018年10月に発表した「ストレスチェック制度の実施状況」によると、その実施率は全体で約79%となりました。

表1. ストレスチェック制度の実施状況(事業規模別)

事業規模(人) 50〜99 100〜299300〜9991000人以上
実施事業場の割合 72.2%87.1%94.8%94.0%78.9%

表2. ストレスチェック制度の実施状況(主な業種別)

産業分類実施事業場割合(%)
エネルギー業
(電気・ガス・熱供給・水道)
96.8
複合サービス事業93.8
学術研究,専門・技術サービス業90.0
金融業,保険業89.5
情報通信業89.4
鉱業,採石業,砂利採取業88.4
教育,学習支援業84.4
製造業84.1
運輸業,郵便業82.9
卸売業,小売業79.4
不動産業,物品賃貸業78.6
建設業78.4
生活関連サービス業,娯楽業77.0
医療,福祉76.6
農業,林業(林業に限る。)69.3
サービス業(他に分類されないもの)68.9
宿泊業,飲食サービス業49.0
78.9

データを見るに、従業員規模の大きさ・業種によって実施率に差があることがわかります。

全体を通して平均80%の企業がストレスチェックを実施していることがわかりました。特に「300名以上」「デスクワーク中心」の企業では9割以上がきちんとストレスチェックを行っているという結果がでました。

注目したいのが、『業種別実施率の差』です。
医療・サービス業・第一次産業といった「現場作業」「感情労働」「24時間サービス」業務が中心となる業種では実施率が低いのが特徴的に。「100名未満の事業所」について実施率が少ないこととも共通点がありそうです。
 

受検率も8割が目安
面接指導まで進むのはそのうち0.5%

このような状況の中で「受検率はどれくらいあれば成功と言えるのか?」という点がよく疑問として挙げられます。
受検率は労働者が実際にストレスチェックに回答した割合であるため、どれほどストレスチェックが社内に浸透しているかということの指標となります。厚労省発表の「ストレスチェック制度の実施状況」では受験率に関する「ストレスチェックの受検状況」として受験率を公表しています。

表3. ストレスチェックの受検状況

事業場規模(人)50~99100~299300~9991,000人以上
ストレスチェックを受けた労働者の割合77.2%78.2%79.1%81.2%78.6%

先述した項目を参考にすると受検率の平均は78.0%であることがわかります。
8割の従業員が受検してくれれば、ひとまずは「成功」といえるでしょう。

もちろん受検率が増えれば良いというわけではなく、その結果を受けて具体的なアクションを行うのは必須です。高ストレス者が面接指導までつながったら企業としては安心ですが、なかなか申し出を行いにくい現状があるようです。

表4 医師による面接指導を受けた労働者の状況

事業場規模(人)50~99100~299300~9991,000人以上
医師による面接指導を受けた労働者の割合0.6%0.5%0.4%0.5%0.5%

ストレスチェックを受けた従業員のうち、面接指導の申し出を行い実際に面接を受けた方は0.5%にとどまりました。ストレスチェックの実施率とは変わり、100名未満の事業所では面接指導を受けた割合が高くなっています。
 

実施者は産業医が半分、
外部委託による実施も「主流」に

面接指導や高ストレス者を判断する『実施者』は産業医に依頼するのがベター、とされています。
50名以上の従業員を抱える事業所なら産業医を選任する義務が課せられています。事業所にはだれか一人は「労働環境を知っている産業医」がいることになりますね。

ですが厚労省資料「現行の産業医制度の概要等」から見てみると、産業医を選任できているのは100名未満の事業所のうち78.6%。残り2割の企業が「産業医がいない」状態となっているようです。
産業医がいても、「産業医が複数の企業と契約していて、忙しくて来てくれない」「企業と契約している医師と思うと面接の申し出がしにくい」という声もお聞きしました。

その場合、ストレスチェックの実施者は『誰』に頼んでいるのでしょう。

表5 ストレスチェック実施者の状況

事業場規模(人)50~99100~299300~9991,000人以上
事業場内の産業医等56.4%60.1%70.8%86.3%65.7%
事業場選任の産業医48.5%50.8%59.0%74.5%55.7%
①以外の選任産業保健スタッフ7.9%9.3%11.8%11.8%10%
外部委託先の医療スタッフ43.6%39.9%29.2%13.7%34.3%

約7割の企業が「事業所が選任した産業保健スタッフ」が実施者を務めるストレスチェックを実施していました。
『事業所が選任した産業医』が実施者を行っていたのはそのうちの半数、残りは「ストレスチェックを外部委託した先に所属する有資格者」に実施者を依頼しているとのことです。特にその割合は100名未満の企業に多く、産業医やその他産業保健スタッフの選任・雇用率によって下がる傾向が見られました。

実施者、またはストレスチェック自体を外部委託で実施することは、維持費やコストのかからない「専門知識のレンタル」として主流になりつつあります。
 

ストレスチェックを「活用できる企業」
成功のカギは集団分析

メンタルヘルス対策として打ち出されたストレスチェックは、「実施後の労働環境改善」までが目的です。有効な『改善案』が立てられるかは、ストレスチェックで得られた結果やデータを「集団分析」などでストレスの傾向や原因を分析し、活用できるかが決め手となります。

統計上でも企業が「データの活用方法・効果的な分析方法」に注目していることはうかがえました。ストレスチェックを実施した事業所のうち、結果の集団分析を実施した事業所は73.3%。このうち分析結果を活用した事業所の割合は80.3%と、平成29年調査より7.7%の増加をみせています。

この『活用』は、専門知識や職場の現在の状況・産業保健に関するスタッフとの話し合いなど時間と知識の求められる「難題」でもあります。集団分析の実施についても「結果を見ても具体的な改善方法が見つからない」「原因はわかるけれど、根本的な改善や対策をとることが現状厳しい」といった企業担当者様の声をお聞きしました。
これからのメンタルヘルス対策は『予防』の時代、トラブルを防ぐことが最大のアグレッシブな行動としてスタンダード化していくでしょう。

様々な対策が法制化していく中で、すでに皆がやっている「ストレスチェック」でいかに未然に防ぐかが「独自の取り組み」の肝となりそうです。
 

〔 参考・文献 〕

初出:2019年10月31日

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