「職場の喫煙」どう変わる?受動喫煙防止条例や健康増進法で企業が満たすべき義務とは?

   

「職場の喫煙」どう変わる?受動喫煙防止条例や健康増進法で企業が満たすべき義務とは?

2020年に開催される東京オリンピックに向けて、禁煙の流れがどんどん加速しています。
東京オリンピック大会組織委員会は2019年2月に「競技会場の施設内および敷地内も禁煙にする」と明言、これは近年の大会で最も厳しい喫煙対策となりました。学校・オフィスといったオフィシャルな場所以外でも飲食店などを対象とした喫煙対策が進んでいます。
その代表例が2018年6月に制定された「受動喫煙防止条例」と同年7月に改正された「健康増進法」です。

現場や企業では「まだまだたばこが手放せない」という愛煙家の方もいらっしゃることと思います。東京オリンピックで催される種目の何個かは北海道といった他地域での開催が目される中、東京から端を発したこれらの条例も一緒に“輸出”されていく可能性は高いでしょう。
現に北海道などでは士別、美唄の両市がより厳格な条例を定め、試行しています。

「関係ない」と思われる企業でも、喫煙環境を整えておくことは福利厚生の一環。法準拠の観点からも、喫煙を「悪」にしないためにも、吸う人・吸わない人両方が快適に過ごせる空間の整備は急務です。
当記事ではこれら2つの「受動喫煙対策」に関して企業が行うべき対応をご紹介します。
 

喫煙する人としない人が快適に過ごせる「空間」を目指す“ 受動喫煙防止条例 ”

“ 受動喫煙防止条例 ”は「 健康増進法の一部を改正する法律 」によって定められた 望まない受動喫煙を防止するための取り組み に関する条例、その中でも特に「東京都受動喫煙防止条例」を指すことが一般的です。

2018年6月に制定された 「東京都受動喫煙防止条例」 は、「屋内での受動喫煙」を防止することを主な目的として作られました。
喫煙が健康に与える害を周知し、 青少年 ・喫煙を望まない人を受動喫煙から保護するため、都内の保育所・幼稚園・教育施設といった子供の多い環境の他、大学・老人福祉施設・飲食店など多目的にわたる施設が対象として設定されています。

受動喫煙防止条例は2019年 7月1日 から施行され、施設の目的ごとに禁煙を進め2020年4月1日までに改正健康増進法の全面施行を計画しています。
医療施設・児童福祉施設・行政関連施設での「屋内全面禁煙」および「屋外喫煙所の設置」から始まり、順次「他目的施設内での分煙・全面禁煙」を目指し活動を広げているところとなります。

特に特徴的な対象が「飲食店」です。 既に2019 年9月1日から店内の喫煙状況を店頭に表示することが義務付けられ、2020年4月1日からは指定の要件を満たした店舗は専用喫煙室 を設けることと定められています。
バスやタクシーといった「交通設備」・都内のオフィスなどを含む 「その他多数の人が利用する施設」 では2020年4月1日から同様の規定が適用されます。

受動喫煙防止条例に違反した場合、5万円以下の罰金として処せられることも。
 

「健康増進法」は九rに全体での取り組み
受動喫煙対策違反は企業名公表も

「東京都受動喫煙防止条例」が基礎とする「健康増進法」および「 健康増進法の一部を改正する法律(平成30年法律第78号) 」では、

国及び地方公共団体は、望まない受動喫煙が生じないよう、受動喫煙に関する知識の普及、受動喫煙の防止に関する意識の啓発、受動喫煙の防止に必要な環境の整備その他の受動喫煙を防止するための措置を総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならない。

健康増進法 第六章受動喫煙防止 第一節二十五条  (国及び地方公共団体の責務)
   

と明記され、受動喫煙に関する取り組みを国全体で推進することを明記しています。

健康増進法は国民の健康維持と現代病予防を目的として作られた法律で、もともと2002年に制定されました。2018年7月に受動喫煙防止の内容を盛り込んだ内容に改正されたのです。
改正された目的は受動喫煙防止条例と同様に、公共交通機関や学校、オフィスといった屋内施設で臨まない受動喫煙を防ぐことです。学校や病院、市役所といった行政機関では2019年7月1日に既に健康増進法の改正内容が施行済みです。オフィスでは2020年4月1日から実施されます。

改正健康増進法では、受動喫煙に関する義務に違反した場合都道府県などから指導・勧告・命令といった企業への対応の他「企業名の公表」「罰金の適用」が行われます。
受動喫煙に関する相談窓口なども設けられ実際の対応や報告がしやすいよう制度が整えられているので、企業としてはきちんと順法した設備・店頭表記が急がれています。
 

オフィスでは「原則禁煙」「喫煙表記」「換気設備」が必要に

企業として気になるのはオフィスが該当する「 その他多数の人が利用する施設 」に課せられた義務ですよね。
改正健康増進法が全面的に施行される2020年4月1日以降、一般企業のオフィスでは原則的に屋内禁煙となります。
また下記「禁止行為」が設けられ、順守するよう義務が発生します。


施設利用者に対する義務
 以下に準ずる行為を施設の利用者(従業員や来客など) が行うことは禁止されます。

  • 喫煙を禁止されている場所での喫煙
  • あたかも喫煙が可能であるような誤解を招く標識の掲示
  • 禁煙を表す標識を汚す・見てわかりづらくするような改変、加工、設置


施設管理者に対する義務
  以下に準ずる行為を 施設管理者(ビルやオフィス管理者、総務など)が行うことは禁止されます。

  • 喫煙を禁止されている場所に喫煙器具や設備(灰皿)などを置くこと
  • 喫煙室に未成年者を立ち入らせること

特に注意したいのが、「灰皿等の設置」です。
詳しくは後述しますが、屋内に喫煙室を設ける・屋外(敷地内)に喫煙所を設けるどちらの場合でも「煙がどの範囲に影響を及ぼすのか」を把握しなければなりません。
 

喫煙所を設けるなら「専用のスペース」が必要に

法令の遵守とはいえすぐその場から禁煙を行うのは難しいもの、当面の場合移行措置として経営者が必要を認めた場合「全面禁煙」か「空間分煙」かを選択して実施することが許可されています。
これは空間分煙の場合屋内に専用スペースを、完全禁煙の場合でも屋外に喫煙所を設けることを可能にしています。

しかし、どちらの場合にも排気や環境に対して「一定の基準」を満たす必要があります。

屋外喫煙所の基準(注意ポイント)

  • 煙が屋内に流れ込まないよう、施設の出入口からなるべく離す
  • 非喫煙者が近くを通らずに済むような場所であること
  • 近隣に学校・通学路・児童公園等がある場合は、煙が流れないかにも注意


煙や空気の流れは見える範囲より複雑です。ドアの開閉や風向きにより、たばこの煙が屋内に入ってしまう可能性を考えて、喫煙者と協力をし「煙がどのような動きをするのか」把握しておきましょう。
また敷地内に喫煙所を設けない場合は「定められた場所以外での喫煙や歩きたばこの禁止」など近隣の皆様の迷惑になることがないよう、喫煙する従業員には特にマナーや配慮への注意を促すことが大事です。
 

屋内喫煙室の基準

  • たばこの煙が室内から流出しないよう、
    〇壁や天井などによって区画される
    〇出入り口以外には非喫煙場所に対する開口面がない、独立した部屋
  • たばこの煙が屋外または外部の場所に排気されるよう
    〇想定される喫煙本数に合わせた排気設備の設置
    〇排気先にて非喫煙空間に影響がないかの確認
  • 空気がきちんと循環されるよう
    〇出入口での計測において空気の気流が0.2毎秒以上ある
    〇空気取り入れ口の付いた扉、または換気用の開口部を設ける
    〇非喫煙場所に空気が漏れないよう、スクリーンなどで開口部を仕切る

    といった措置を行う必要があります。

基準を満たした喫煙室についても、対策や設備がきちんと動いているかを確認するために3か月に一度は「空気環境の測定」と「排気装置の保守管理状況の確認」を行うことが理想です。浮遊粉じん・一酸化炭素の濃度が適正か、非喫煙場所から喫煙場所への気流が確保されているかを計測し、記録として保管しましょう。

これらの基準は既存の喫煙室にも適応されますので、もし今まで使用している喫煙室がある場合対応を取る必要があります。また企業の業種によっては、喫煙室の設置費用に関して助成を受けることも可能です。
 

受動喫煙対策は全国的に広がる可能性大
今から設備や周知方法の見直しを

受動喫煙防止条例に関しては現状として東京都に限定された実施ですが、今後全国的に企業が喫煙対策を行うべき状況になるのは大いに予想されます。

実際にソフトバンクでは2020年10月を目処に、「全国の事業所内の喫煙所撤廃」を明言しています。全国1万人の飲食店禁煙化に関する調査では、全体の約8割が飲食店などでの受動喫煙防止の取り組みに賛成するなど、世間的にも禁煙化に対する意識は非常に高いです。
このような事例はこれからも増加していくこと、企業がしっかりと受動喫煙防止対策を行うことは安全管理義務としても「常識」となりつつあるでしょう。

一方で、喫煙者にとって喫煙する時間というのは仕事時間の息抜きとして重要なものです。そのため、企業は喫煙者と非喫煙者いずれにも配慮しながら喫煙対策を進めていく必要があるでしょう。
 

〔 参考・文献 〕

初出:2019年11月25日

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