障害者の法定雇用率2.3~2.5%へ。民間企業における改正点を再整理

画像等で「2021年4月」となっていた法定雇用率引き上げ開始時期を「2021年3月」と修正致しました。

また、新型コロナウイルス流行による社会経済への影響を鑑みて2020年8月発表の厚生労働省 障害者雇用分科会による支援強化策に関する記載を追記しています。
※2020年9月16日時点の情報をもとにしています

 
2018年8月、中央省庁が障害者ではない者を障害者として雇用し、障害者の雇用率を水増ししていた事実が発覚しました。

障害者が安心して生きられる社会の実現を目指すはずの政府が「障害者雇用水増し問題」を引き起こしたことをある種の衝撃とともに記憶している方も多いのではないでしょうか。

障害を持つ方々もそうでない方も活躍できる社会を目指して、日本では全ての事業主はその従業員数に応じて一定の割合の障害者を雇用する義務が設けられています。障害者の雇用義務について周知している企業であっても、業務拡大によって新たに雇用の義務が生ずるなどの対応が必要になることも。

そこで今回は、障害者雇用制度が定める障害者雇用の対象となる企業と雇用率の計算方法を具体的に解説したいと思います。
 

!この記事では、こんなことがわかります!

  • 法定雇用率は民間企業の場合、現在「2.2%」
  • 2021年3月までには「2.3%」に引き上げられる(2020年9月現在情報)
  • 現状では、45.5人以上の事業主では障害者雇用の義務が生じる
  • 法定雇用率は「障害者の常用労働者数÷常用労働者数」で求められる
  • 障害の程度や種類、労働形態によって2名~0.5名に換算されることがある
  • 「除外率制度」、「雇用義務の特例」も考慮の必要がある
  • 法定雇用率、障害者雇用の相談は管轄のハローワークへ

 

———————-! 障害者雇用率引上げに向けた対応 について!———————-
2020年8月、新型コロナウイルス流行による社会経済への影響を鑑みて厚生労働省 障害者雇用分科会 より以下の支援強化策が提案されました。

・2021年に予定されていた障害者法定雇用率の引き上げを3月へ
・令和2年6月1日時点で障害者雇用率を達成している企業が、
 雇用率引き上げによって未達成となったり、事業内容見直しやテレワークの
 導入によって障害者が担う業務が減少している場合への企業向けチーム支援
・ よりきめ細やかな企業と障害者のマッチングを図るための機関の連携や専門
 的な支援の強化・提案型雇用支援の推進 、テレワークなどの柔軟な働き方の
 促進

この案では、 適用までに数年の期間があることを踏まえて法定雇用率未達成の企業に対するペナルティなどは新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた猶予措置などは講じられないとのことです。
また今後の障害者雇用制度へもたらす影響を考え、「業績等を踏まえた雇用率差」「未達成企業の納付金額の引き下げ」などは引き続き慎重な検討が必要とされています。
——————————————————————————————————-

 

中小企業にも障害者を雇用する義務があります

「障害者雇用制度」とは、 「障害者の雇用の促進等に関する法律」 定められた 身体障害者、知的障害者、精神障害者 の雇用に関する規則です。民間企業、国、地方公共団体に 組織の構成に応じて一定数の障害者を雇用する義務を課すものになります。

「法定雇用率」と呼ばれているのは、この 障碍者雇用制で定められた 【 雇用しなければならない障害者数の、従業員における割合】を指しています。

2019年現在では、各組織、団体に課せられた「法定雇用率」は以下になります。

  • 民間企業・・・2.2%
  • 国、地方公共団体等・・・2.5%
  • 都道府県等の教育委員会・・・2.4%

この数値を実際の従業員数に換算すると “民間企業では「45.5人につき1人」の障害者を雇用”が目標ですね。

現行の法定雇用率は2018年4月に改訂されたもので、2021年3月までにそれぞれ0.1%の引き上げ、 “民間企業(2.3%)は「43.5人につき1人」の障害者雇用目標” が予定されています。

実際には「常用労働者」と「短時間労働者」でカウントされる率が変動するなど働き方によって細かい規定があります。
所轄のハローワークなどでご相談ください。
 

雇用規定に満たない場合「納付金」が発生

障害者の雇用数が法定雇用率を下回っても法的に罰金・罰則が課されることはありません。

ただし、「障害者雇用納付金制度」に基づいて「常用労働者」が100人以上の企業は規定割合と比べて不足している雇用障害者数1人につき毎月50,000円を国に納付する必要があります。この納付金は障害者を積極的に雇用する企業に分配される報奨金の財源となります。

また、障害者の雇用状況は毎年6月1日時点のものを7月15日までにハローワークへ報告しなければなりません。これを怠ると罰金として30万円が課されるほか、制度に非協力的な企業は社名が公開されるなど社会的な制裁が行われます。
 

除外率制度や特例も考慮する必要があります

2018年4月以降、法定雇用率の計算方法も改定され、以下のものになりました。
 

★法定雇用率 =
(身体障害者、精神障害者、知的障害者の常用労働者数
+失業している身体障害者、精神障害者、知的障害者の労働者数)
÷
(常用労働者数-除外率相当労働者数+失業者数)

(単純化すると「障害者の常用労働者数÷常用労働者数」となります。)


「常用労働者」とは1週間20時間以上、1年以上の労働雇用の見込みがある(あるいはされている)労働者を指し、パート・アルバイトでも1名とされます。

ただし、それぞれの企業・組織に実際に適用されている法定雇用率の算出は「障害者数のカウント方法」、「除外率制度」、「雇用義務の特例」の3つを考慮して行う必要があります。一つずつ見ていきましょう。
 

障害の程度や就労条件によってもカウント率は変化

法定雇用率は原則として週30時間以上の「常用労働者」の数によるものとなります。

「 雇用している 障害者数」のカウントに関しては次のような規定が設けられています。雇用時、契約時に考慮しましょう。
 

  1. 重度の身体障害者、知的障害者は2名として計算する(ダブルカウント制
  2. 重度の身体障害者、知的障害者は、
    週20時間以上30時間未満の短時間労働者も1名
    として計算する
  3. 短時間労働者の精神障害者は、以下の要件を満たすとき1名として計算。
     ・「新規雇用から3年以内」
      または
      「精神障害者福祉手帳の交付から3年以内」の場合
     ・2028年までに雇用され、精神障害者福祉手帳が交付された場合
    要件を満たさないときは0.5名として計算。

「対象障害者」としてカウントが認められるのは「障害者手帳」を持っている方に限られます。 更新手続きは必要な手帳制度もありますので、申請時や雇用契約時に確認しましょう。
 

業種によっては「除外率制度」の対象となります

「障害者雇用促進法」は障害者に均等な労働機会と待遇の確保を目指した法律です。しかし、現実の業務を考えた時に一定の業種には障害者の従事が難しいものがあるのも否定できません。

そのような業種は「障害者雇用率制度」においても、法定雇用率の算出に用いられる常用労働者数からそれぞれ定められた割合が控除されます。

  • 倉庫業、航空運輸業など・・・5%
  • 採石業、水運業など・・・10%
  • 鉄道業、医療業など・・・30%

上記以外にも、一定の製造業・鉱業、電気業、幼稚園など業種に応じて5%~80%の控除率が設定されています。申請や雇用を考えた時、留意しておくと良いでしょう。
 

特例子会社・関係会社は障害者数を通算できる制度があります

子会社を有するようなグループ企業や、複数の事業所(本店、支店など)を持つ企業では、企業全体の法定雇用率を通算することができます

民間企業の場合、 グループ内の各企業や事業所で障害者を2.2%ずつ雇用することが理想ではありますが、障害者を優先的に配置する企業や事業所の設置によってこれを満たすことができます。
 

  1. 特例子会社
    障害者雇用の促進を目的として設立された会社(特例子会社)は、親会社と法定雇用率を通算可能
  2. 関係会社特例
    特例子会社を持つ親会社は、他の子会社でも障害者を雇用する場合において親会社、特例子会社、子会社の法定雇用率を通算可能
  3. 関係子会社特例
    厚生労働省の認定する基準において、特例子会社を設置しなくてもグループ企業内で法定雇用率を通算可能
  4. 事業共同組合等算定特例
    事業共同組合などを活用している中小企業間では、事業共同組合、中小企業、組合員間で法定雇用率を通算可能

上記の認定は管轄のハローワークが行っています。
 


法定雇用率に定められた障害者雇用は企業の義務であり、これに満たない事業者には厚生労働省からハローワークを通じた指導や、制度への協力を要請されるなど中小企業においても無視することのできない事項となっています。

成長分野における業務拡大を考える上では障害者の雇用も念頭に置いておく必要があるといえるでしょう。
 

〔参考文献・関連リンク〕

初出:2019年12月20日 / 編集:2020年09月16日

関連記事

  1. 「パワハラ防止法」施行決定!企業がすべき「義務」と対策とは?

    「パワハラ防止法」施行決定!企業がすべき「義務」と対策とは?

  2. 育児休業の新形態「パパ休暇」、「パパ・ママ育休プラス」とは?

    育児休業の新形態 「パパ休暇」、「パパ・ママ育休プラス」とは?

  3. メンタルの不調を防げ!ストレスチェックはメンタルヘルスの“リトマス紙”…

  4. 「改正障害者雇用促進法」2020年4月施行:「精神・発達障害者しごとサポーター」は会社の中の“理解者”マーク

    「誰もが働きやすい職場」のために “精神・発達障害者しごとサポーター”…

  5. 第3回「福利厚生EXPO」開催延期が発表されました

    【開催延期】「福利厚生EXPO」に初出展!新サービス・来場者特典も続々…

  6. ネプチューン名倉さん復帰!「術後の侵襲」によるうつ病・休業報道から見る「休業期間とリワーク」精神医療的考察

    ネプチューン名倉さんの「術後の侵襲」によるうつ病・休業報道から見る「休…

  7. 安全衛生管理:企業の災害対策に欠かせない「防災」と「BCP」とは?

    企業の災害対策に欠かせない 「防災」と「BCP(事業継続計画)」 とは…

  8. 福利厚生?課税対象?気になる「諸手当」の違いを解説

    福利厚生?課税対象?気になる「給与明細の諸手当」の違いを解説

Pick Up 注目記事 メンタルヘルスケアコラム
  1. 改めてチェック!ストレスチェック制度:高ストレス者の対応、“社内の負担”になってない?面接指導に来ない「ワケ」を解説
  2. ハラスメント対策:ハラスメント発生時の4ステップと、予防・解決のための3つのポイント
  3. 「雇用調整助成金」活用の要点整理と現状:新型コロナウイルス対策
  4. 従業員満足度調査のメリットとは?従業員エンゲージメントとの違い
  5. 改めてチェック!ストレスチェック制度:ストレスチェックの結果の閲覧・保管期限
  1. 「職場環境改善」はすぐできる?集団分析で見えてくる職場の改善点:人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム
  2. コロナ禍で「5月病」も延期?在宅勤務でも起こる「適応障害」:人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム
  3. ストレスチェックを活用!結果を活かせるセルフケアとは?:人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム
  4. 人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム:燃え尽き症候群(バーンアウト)の症状・予防法とは?なりやすい傾向や予防法を解説

最近の投稿記事