2024年4月以降、段階的に「障害者の法定雇用率」が変わります:法定雇用率や特例措置について

2024年最新!障害者の法定雇用率、2.7%に段階的に引き上げへ。障害者雇用制度について解説

2023年1月の第123回労働政策審議会障害者雇用分科会による情報を追記しています。
※2023年3月1日時点の情報をもとにしています。

 

 

障害を持つ方もそうでない方も活躍できる社会を目指して、全ての事業主はその従業員数に応じて一定の割合の障害者を雇用する義務が設けられています。障害者の雇用義務について周知している企業であっても、業務拡大によって新たに雇用の義務が生じ対応が必要になることも。

そこで今回は、障害者雇用制度が定める障害者雇用の対象となる企業と雇用率の計算方法を具体的に解説したいと思います。2022年6月の労働政策審議会障害者雇用分科会の意見書、および、2023年1月の分科会で言及された内容を踏まえて、2024年4月1日より施行される改正法の最新情報をお届けします。
最終的に、2026(令和8)年には障害者法定雇用率は2.7%に引き上げが決まっていますので、先を見据えた対策が必要です。今後の変更点も含めて、障害者雇用制度について確認しておきましょう。
 

■この記事では、こんなことがわかります
  • 法定雇用率は民間企業の場合、2.5%(2024年4月現在)
  • 従業員を40人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければならない(2024年4月現在)
  • 令和5年度以降「2.7%」に段階的に引き上げられる予定(令和5年度は2.3%、令和6年度は2.5%、令和8年度は2.7%)
  • 法定雇用率は「障害者の常用労働者数÷常用労働者数」で求められる
  • 障害の程度や種類、労働形態によって2名~0.5名に換算されることがある
  • 「除外率制度」、「雇用義務の特例」も考慮の必要がある
  • 令和7年4月より、除外率が引き下げに
  • 法定雇用率、障害者雇用の相談は管轄のハローワークへ

 

中小企業にも障害者を雇用する義務があります

「障害者雇用制度」とは、「障害者の雇用の促進等に関する法律」 定められた身体障害者、知的障害者、精神障害者の雇用に関する規則です。民間企業、国、地方公共団体に 組織の構成に応じて一定数の障害者を雇用する義務を課すものになります。

「法定雇用率」と呼ばれているのは、この障害者雇用制度で定められた「雇用しなければならない障害者数の、従業員における割合」を指しています。

2024年4月1日現在、各組織、団体に課せられた「法定雇用率」は以下のとおりです。

この数値を実際の従業員数に換算すると 、民間企業では、従業員を40人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければならないということになります。

実際には「常用労働者」と「短時間労働者」でカウントされる率が変動するなど働き方によって細かい規定があります。詳しくは、所轄のハローワークなどでご相談ください。
 

■新たに対象となる範囲&今後の変更点(2024年4月1日現在):
令和5年度以降、障害者の法定雇用率が2.7%に段階的に引き上げられています。令和6年度(2024年4月1日)~令和8年6月までの法定雇用率は2.5%ですが、令和8年7月以降は2.7%まで引き上げられる予定です。

 

 

雇用規定に満たない場合「納付金」が発生

障害者の雇用数が法定雇用率を下回っても法的に罰金・罰則が課されることはありません。

ただし、「障害者雇用納付金制度」に基づいて「常用労働者」が100人以上の企業は規定割合と比べて不足している雇用障害者数1人につき毎月50,000円を国に納付する必要があります。この納付金は障害者を積極的に雇用する企業に分配される報奨金の財源となります。

また、障害者の雇用状況は毎年6月1日時点のものを7月15日までにハローワークへ報告しなければなりません。これを怠ると罰金として30万円が課されるほか、制度に非協力的な企業は社名が公開されるなど社会的な制裁が行われます。
 

除外率制度や特例も考慮する必要があります

2018年4月以降、法定雇用率の計算方法も改定され、以下のものになりました。

★法定雇用率 =
(身体障害者、精神障害者、知的障害者の常用労働者数
+失業している身体障害者、精神障害者、知的障害者の労働者数)
÷
(常用労働者数-除外率相当労働者数+失業者数)

(単純化すると「障害者の常用労働者数÷常用労働者数」となります。)


「常用労働者」とは、1週間20時間以上、1年以上の労働雇用の見込みがある(あるいはされている)労働者を指し、パート・アルバイトでも1名とされます。週20時間以上30時間未満の短時間労働者に対しては、1人あたり0.5人とカウントされます。

ただし、それぞれの企業・組織に実際に適用されている法定雇用率の算出は「障害者数のカウント方法」、「除外率制度」、「雇用義務の特例」の3つを考慮して行う必要があります。一つずつ見ていきましょう。
 

障害の程度や就労条件によってもカウント率は変化

「雇用している障害者数」のカウントに関しては次のような規定が設けられています。雇用時、契約時に考慮しましょう。
 

表中の※について、一定の条件を満たす場合は、0.5ではなく1とカウントする。
 

  1. 重度の身体障害者、知的障害者は2名として計算する(ダブルカウント制
  2. 重度の身体障害者、知的障害者は、
    週20時間以上30時間未満の短時間労働者も1名
    として計算する
  3. 短時間労働者の精神障害者は、以下の要件を満たすとき1名として計算。(表中※)
     ・「新規雇用から3年以内」
      または
      「精神障害者福祉手帳の交付から3年以内」の場合
     ・令和5年3月31日までに、雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得した方
    要件を満たさないときは0.5名として計算。 この特例措置は令和4年度末までとされていましたが、省令改正により当面の間延⾧される。
  4. 2024年4月1日より、週所定労働時間が特に短い10時間以上20時間未満で働く「特定短時間労働者」である、精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者については、事業主が雇用した場合、雇用率において1名をもって0.5名と算定します。

また、「対象障害者」としてカウントが認められるのは「障害者手帳」を持っている方に限られます。 なお精神障害者福祉手帳は有効期間が定められていますので、更新手続きが必要な場合もありますので、申請時や雇用契約時に確認しましょう。
 

■新たに対象となる範囲&今後の変更点(2024年4月1日現在):
令和5年度以降、精神障害者の算定特例が延長されています。
令和6年度(2024年4月1日)以降、「特定短時間労働者(週所定労働時間が10時間以上20時間未満)」の雇用率への算定が可能になります。またそれに伴い、これまで週20時間未満の雇用障害者の数に応じて支給されていた特例給付金は廃止となります。
詳しくは厚生労働省のパンフレット等でご確認ください。

 

業種によっては「除外率制度」の対象となります

障害者の職業の安定のため、法定雇用率を設定していますが、職種によっては、機械的に一律の雇用率を適用することになじまない性質の職務もあるからという理由で、障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種について、雇用する労働者数を計算する際に除外率に相当する労働者数を控除する制度(障害者の雇用義務の軽減)が設けられていました。それが除外率制度です。
 
なお、この制度はノーマライゼーションの観点からすでに廃止されましたが、経過措置として、除外率設定業種ごとに除外率を設定するとともに、廃止の方向で徐々に除外率を引き下げ縮小することとされています。
 

障害者雇用:除外率設定業種及び除外率

障害者雇用:除外率設定業種及び除外率


■ 今後の変更点 (2024年4月1日現在) :
令和7年4月以降除外率が引き下げられます
詳しくは厚生労働省のパンフレット等でご確認ください。

 

特例子会社・関係会社は障害者数を通算できる制度があります

子会社を有するようなグループ企業や、複数の事業所(本店、支店など)を持つ企業では、企業全体の法定雇用率を通算することができます

民間企業の場合、 グループ内の各企業や事業所で障害者を2.5%ずつ雇用することが理想ではありますが、障害者を優先的に配置する企業や事業所の設置によってこれを満たすことができます。
 

  1. 特例子会社
    障害者雇用の促進を目的として設立された会社(特例子会社)は、親会社と法定雇用率を通算可能
  2. 関係会社特例
    特例子会社を持つ親会社は、他の子会社でも障害者を雇用する場合において親会社、特例子会社、子会社の法定雇用率を通算可能
  3. 関係子会社特例
    厚生労働省の認定する基準において、特例子会社を設置しなくてもグループ企業内で法定雇用率を通算可能
  4. 事業共同組合等算定特例
    事業共同組合などを活用している中小企業間では、事業共同組合、中小企業、組合員間で法定雇用率を通算可能

上記の認定は管轄のハローワークが行っています。
 


法定雇用率に定められた障害者雇用は企業の義務であり、これに満たない事業者には厚生労働省からハローワークを通じた指導や、制度への協力を要請されるなど中小企業においても無視することのできない事項となっています。

成長分野における業務拡大を考える上では障害者の雇用も念頭に置いておく必要があるといえるでしょう。
 

 

 

〔参考文献・関連リンク〕

初出:2019年12月20日 / 編集:2023年03月02日

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