身近になる外国人労働者、どう受け入れる?現場の声は「文化の理解」と「環境整備」がネック

   

身近になる外国人労働者、どう受け入れる?現場の声は「文化の理解」と「環境整備」がネック

平成30年10月末現在、厚労省発表の『「外国人雇用状況」の届出状況』調査では外国人を雇用している事業所は 216,348 か所。、前年比11%増を記録し過去最高を更新しました。2019年4月に施行された「改正出入国管理法」(改正入管法)によって新たな在留資格が設けられ、高度な技術・スキルを持った人材が様々な分野に登場することが見込まれます。

人材不足に嘆く業界では朗報と思われる「外国人労働者」ですが、これから初めて同僚として・従業員として付き合っていく当事者となることに不安を感じる人もいることでしょう。

実際に外国人労働者の受入れを行った「現場」の“ 良かった・難しかった ”を、2018年の調査をもとに振り返ってみました。
 

外国人労働者の受け入れ、若い世代ほど好感触

日本労働組合総連合会調べ「外国人労働者の受入れに関する意識調査2018」によれば、自分の職場に外国人労働者が増えることについて「よいこと」だと回答した人は20代を中心に全体の51%を占めています。
肯定的な回答が少なかったのは40~50代でしたが、賛成派が40%超であるのに対し、否定派・無回答はそれぞれ30%とおおむね「外国人と一緒に働く」ということに関して肯定的な空気が見られました。

外国人労働者に対して「よいこと」と回答した理由は「 人手不足を 補うためには 必要であるから 」という回答が多く、それぞれの職場で「 外国人労働者が 増えて多様な 考えに触れると、 新しい アイディアなどが 生まれるから 」「 自分の雇用・ 労働条件、 働き方や意識に プラスの影響が あるから 」とイノベーションや環境への刺激といった効果が期待されているようです。

中でも目を引くのは、 40.9 %が回答している「外国人労働者、 日本人労働者と 区別すること 自体が おかしいから」という理由です。
低賃金・過重労働・保険の未加入など様々な問題が報道される外国人労働者の労働環境ですが、「一緒に働いている」という 共通意識をもって接している方が少なからずいるということ。現場からの改善の兆しとしても、歓迎すべき傾向が出てきているのではないでしょうか。
 

「環境整備」「言葉・文化」に苦労の声、受入れの態度にも影響

対照的に、外国人労働者の受け入れに「よくないこと」だと回答した方が多く上げたのは「自分の職場で、多言語化などの環境整備が進んでいないから」でした。「自分の職場の中に外国人労働者を受け入れるという意識がないから」と合わせると半数以上の方が「今の職場環境のままで外国人労働者を受け入れるのは難しい」と感じていることとなります。

厚労省調べによると、外国人労働者を雇用している事業所の6割(58%)が「30名未満の事業所」という結果が出ています。また外国人労働者の多くが「製造業」「卸売・小売業」「宿泊・飲食サービス業」といった、身近で普段から目にする機会の多い職業に就労していることもこのアンケートの結果に関係しているでしょう。
日本的な独特のコミュニケーションや高度なサービスの提供を求められる業務上の苦労はもちろん、業務を教える際の言語や文化の差もあって企業が「教育に難儀している」というお話は耳にします。「人手が足りないために導入した外国人労働者を教育する人手がない」ということもしばしば。
中小企業が「いざ外国人労働者を」と考えた時、導入コスト・教育コストがかなりの負担となっているのではないかという予想も大きく外れたものではないと思われます。

別の視点から見ると、「自分が就きたくない仕事に、外国人労働者を活用すればよいという考えはよくないから」「外国人労働者を受入れるより、仕事のIT化、自動化などを進めるべきであるから」といった“今ある環境・今いる人の待遇”の改善を優先して求める声も少なからず存在しています。
国内の雇用や就労環境、外国人と一緒に生活していくことに対する意識が大きく変わっている今、現在頻繁にみられる就労条件や待遇の格差は今後の働き方改革の課題ともいえます。
 

政府の支援や国内雇用環境の整備が先という意見も

改正入管法を導入して外国人労働者の流入を推進する政府にも、問題の解決を考えなければならない責任があるのではないかという問いかけもあります。
国内の日本人就労者1000人を対象としたアンケートでは、外国人就労者の受入拡大が「雇用に影響を与える可能性がある」と回答した人は9割以上。良い影響かどうかについては意見が分かれていますが、半数の方が技能や人数など何らかの制限を加える必要があるのではないかと考えています。
また、新たな在留資格や滞在の制限といった外国人労働者を受入れるための情報についても正しい知識や対応方法の広まりは流入数の増加に対して遅く、「十分な説明がされていない」と考えている方も少なくないという結果に。

国内の景気動向や雇用情勢を鑑み、国内の介護や地震の疾病で「働きたくても働けない状況に置かれている」人材の活用が優先されるべきだという考えも聞こえる中「本当に外国人労働者の増加を選択すべきか」という根本的な議論はまだ続いています。
 

文化が違う、からこそのメリット
雇用問題よりもプラスをもたらす「関係性」への影響

実際に外国人労働者と働いている方は、「同僚が外国人である」ということをどのように感じているのでしょう。ディップ株式会社が運営するはたらこねっとで実施された「外国人と一緒に働くコミュニケーションの取り方」についてユーザーを対象とした調査の詳細を参照しました。

外国人と働いたことのある方は全体の60%、その多くは「中国出身の方が同僚にいた」というシチュエーションのようです。「学ぶ意欲や働く意欲が触発された」という業務上のメリットの他に、「交友関係が広がった」「日本以外の文化を知るきっかけになった」といったプライベートでのプラスや「言いにくいことをはっきりと言ってくれた」と異文化故に職場の雰囲気やコミュニケーションの風通しに良い影響を与えていることがうかがえました。

逆に「困った事」としては「意思疎通がスムーズにできなかった」「日本人よりも細かい指示や説明が必要だった」といったコミュニケーション上の問題が多く聞かれました。
「仕事に対しての価値観が違った」というような“労働”に関する価値観や尊重する部分の違いについても少なからぬ声があり、働いていく中でカスタムの違いがトラブルを起こしてしまった経験がある方もいらっしゃるようでした。

一方で注目したいのが「働き手が増えてシフトが削られた」という方は全体の2%程という結果です。
現状では外国人労働者の増加が国内の雇用や人材活用に問題視する程の影響は与えていないと考えても良いと思われます。
 

「違い」は「強み」!少しの“手助け”でトラブルをメリットに

「外国人労働者と一緒に働く」「部下に外国人がいる」ということはもはや“よくある”こと、企業や従業員はどんな対応で受入れを行っているのでしょう。

「困った事」で一番に挙げられた言語やコミュニケーションの壁については、かなりの皆さんが独自の取り組みを行っていました。
「ゆっくり・わかりやすい単語で話す」「ジェスチャー・実際にやって見せる」といった他に、「外国語のマニュアルを用意した」「同じ国出身の従業員をサポートとしてチームを組んだ」という企業側の取り組みも。アジア諸国ではタブレット等を使用した動画視聴やゲームが普及していることもあり、「翻訳ソフトを入れた機器を支給」「動画教材やEラーニングを取り入れる」といった先進的な取り組みも効果を上げているそうです。

文化や考え方の相互理解についても従業員同士の努力だけでなく、企業が「手助け」できる場面は多いです。
「同じ業務内容なら雇用条件や労働環境に理不尽な区別をつけない」といった他に、日本社会で使う日常的なルールを別に研修する・日本人の社員へ辞書の支給・簡単な日常会話、どんな文化背景なのかを紹介する社内報の作成といった“双方への理解・対話”を促す取り組みを行っているところが多いようです。
特に部下を持つ従業員に向けて、その文化でタブーに当たる言動や食べ物・行動のしきたり・宗教、社会通念といった「マナー」をあらかじめ研修などで共有しておいたことが「とても役立った」という企業もありました。

また、積極的に 専門的・技術的分野で外国人を取り入れている業種では、他国の文化から見て「ここがおかしい」「効率的ではない」といった指摘を取り入れ業務に反映しているといった体験談も。
日本人同士なら「当たり前」として済ませてしまうことや「普通」として声を上げにくい部分に改善の手を入れていく「風土改善のきっかけ」としても、外国人労働者は大きなメリットになっていくことでしょう。
 


「外国人労働者を受け入れる」と一言で言ってしまうと“労働”や“企業”だけの問題のように見えますが、実際は来てくれた外国人労働者やその家族の「生活」の問題が背後にあります。
言葉の通じない環境で暮らす時、誰しも心細いもの。生活の中心となる「労働の場」で何らかのコミュニケーションが取れることは彼らの心の助けになるだけでなく、日本のマナーやルールを教えあい彼らが暮らす地域への「貢献」ともなります。

人手不足が深刻化する現代、外国人労働者は日本にとってより重要化してくるでしょう。企業としては、文化の差からくる問題を考えるとともに、異文化の長所・日本の長所双方を活かせる「フラット」な環境を目指していきたいですね。
 

〔 参考・文献 〕

初出:2019年11月22日

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