健康経営のための「心の健康づくり計画」とは?「心の健康づくり計画助成金」についても解説

年々メンタルヘルスの被害は深刻化し、その対策はどの企業にとっても取組む必要性が高まっています。

従業員のメンタルヘルス対策など職場環境改善に向けた計画作りや、対策実施にあたって「金銭的・人的コストの削減につながる助成金や、社外のメンタルヘルス対策サービスを活用できないのだろうか」と頭を悩ます人事労務担当の方々も多いのではないでしょうか。

メンタルヘルス対策に関連する「心の健康づくり計画」の策定は、労働安全衛生法で定められた義務です。計画策定のコツや、「心の健康づくり計画」に直結する助成金について、一緒に学んでいきましょう。
   

「心の健康づくり計画」とは?

企業がメンタルヘルスを意識する初めは、「心の健康づくり計画」ではないでしょうか。

「心の健康づくり計画」とは、事業主側が従業員のメンタルヘルス対策のために行うメンタルヘルス予防や、研修などの情報提供、相談や職場復帰のサポートなどについて定めたものです。

「労働者の健康保持・増進を図る計画的な措置」を背景として、労働安全衛生法にはメンタルヘルスに関する指針表明や対策を組み入れるなど、7つの事項を満たした「心の健康づくり計画」を策定するよう義務付けられています。
 

目指すは「メンタルヘルス対策の推進」  

心の健康対策(メンタルヘルスケア)に取り組む事業所の割合は、平成27(2015)年時点では全体の59.7%。同年12月からストレスチェックの実施が義務付けられたことから同数値の向上が見込まれていましたが、予想に反して翌年は56.6%と数値を落とすも、平成30(2018) 年時点で59.2%と割合を戻しつつあるという状況です。
 

心の健康対策(メンタルヘルスケア)に取り組んでいる事業所割合
年度全体の割合実施した主な対策
平成27(2015)年度59.7 %事業所内の相談体制の整備(44.4%)
労働者への教育研修・情報提供(42.0%)
管理監督者への教育研修・情報提供(38.6%)
平成28(2016)年度56.6 %
平成29(2017)年度58.4 %
平成30(2018)年度59.2 %労働者のストレスチェック(62.9%)
労働者への教育研修・情報提供(56.3%)
事業所内の相談体制の整備(42.5%)

※厚生労働省 / 独立行政法人労働者健康安全機構『職場における心の健康づくり』
2019(2020年7月発行)版、2016(2017年3月発行)版をもとに情報基盤開発で作表
 

ストレスチェックの実施は従業員50人以上の事業者に義務付けられていますが、日本の経済を下支えする中小企業において、その普及が滞っているようです。

これを受けて、厚労省の発する労働災害防止計画では、重点施策の一つに「 メンタルヘルス対策の推進 」を挙げ、「メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業場の割合を80%以上とする」という目標を掲げました

目標達成のために行われる施策の一環として、“不調を予防する職場改善” ・“取組み方が分からない事業場への支援”に並び、「企業が行うべきケアの原則的な実施方法について定めた指針」の発表があります。

この指針によって“中長期的視野に立った継続的かつ計画的な実行”・“事業場の実態に則した取組み”のための計画、「 心の健康づくり計画 」策定が義務付けられています。
 

作成には「4つの視点」と「7つの事項」をチェック

「心の健康づくり計画」を考えるにあたり、必要なことは何でしょうか。

実態の調査、環境に合った施策、医療との連携……様々な施策が考えられますが、何より初めに行うべきは「企業の意思表明」です。

事業者・企業自身から「メンタルヘルスケアを積極的に推進すること」「労働環境の改善に積極的に取り組むこと」「ハラスメントなど労働環境や従業員の健康を害するものを許さないこと」を表明するとともに、就業規則などでどのような対応を行うのかを示しましょう。
 

計画の組み立ては “7つの事項” を満たそう

「心の健康づくり計画策定」は、「方針の表明」「 組織づくりと目標の設定」と並んで “実際の改善・対策実施を進める”・“継続的・長期的な実施を目指す” ための取り組みです。

メンタルヘルスケアは、実施後すぐに結果がでるようなことはあまりありません。特に職場の関係性や風土といった形のないものが心の健康を害している場合、つらいと感じている人だけでなく、職場全員の認識・理解・価値観といったものを変えていく必要があり「結果が出るまで続ける」という中長期的な視点が欠かせません
 

仕事の満足度は、「動機づけ要因」と「衛生要因」の2種類によって構成される

 

対策や改善を続けていくにあたっては、事業者が労働者の意見を聞きつつ事業場の実態に則するよう「取組みの見直し」を定期的に行うことも不可欠です。

このため、衛生委員会等において十分調査審議を行い、「心の健康づくり計画」に盛り込む事項を精査しましょう。

「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、「心の健康づくり計画」に盛り込むべき7つの事項を以下のように示しています。 ストレスチェックなどのメンタルヘルスケアに関する制度への対応も盛り込む必要がありますので、一緒にチェックしましょう。
 

  1. 事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明に関すること
  2. 事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること
  3. 事業場における問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施に関すること
  4. メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保及び事業場外資源の活用に関すること
  5. 労働者の健康情報の保護に関すること
  6. 心の健康づくり計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関すること
  7. その他労働者の心の健康づくりに必要な措置に関すること

 
メンタルヘルスケアは、企業側から一方的なケアを行っていても改善は見られません。

「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」及び「事業場外資源によるケア」の4つのケアが総合的に働き、継続的かつ計画的に行われることが重要です。
 

・セルフケア
従業員個人個人が行うストレスへのケア。主に「気づき・対処・正しい理解」が求められる。

・ラインケア
職務上管理責任のある監督者から行われるケア。 「 職場環境等の把握と改善 ・労働者からの相談対応 ・職場復帰における支援」など。

・事業内保健ケア

事業場内産業保健スタッフ等によるケア。「労働者及び管理監督者への支援、心の健康づくり計画の実施・企画・立案 、個人の健康情報の取扱い ・事業場外資源とのネットワーク形成、職場復帰における支援」など。

・事業外産業保健ケア
病院や専門機関など、職場外の専門家や医療・保健機能によるケア。「情報提供や助言を受けるなど、サービスの活用 ・ネットワークの形成 ・職場復帰における支援」など。

 

対策内容の検討は「4つの視点」から

「心の健康づくり計画」 やストレスチェック制度の実施方法等に関する規程は、 衛生委員会等において十分調査審議を行い策定される必要があります。 企業側からだけでなく、実際に働いている労働者側・医療の知識を持った専門家の見地からもその施策が本当に有効か・実施可能かを検討するためです。

メンタルヘルスの問題は複雑で、対策を実施する方法やその内容、実施する際に求められる配慮などについても検討が求められます。

衛生委員会などで対策を取り上げる際は、事業所での有効性や実行可能性のみならず、メンタルヘルスの問題が持つ“4つの視点”から「対応の不備がないか、適正か」を検討してみましょう。
 

  • 心の健康問題の特性への理解
    健康問題は誰にでも生じる可能性があります。しかしメンタル不調を抱える従業員に対して、健康に関する問題以外の偏見や誤解の目で見るという問題があるのです。
    メンタル不調には個人差が大きいことや、評価が難しいことをきちんと理解・周知すべきです。
  • 人事労務管理との連携
    メンタル不調は人事異動や職場配置などの影響を受けやすいため、
    適切な対応のために人事労務管理部門との協力が必要となってきます。
  • 個人情報保護への配慮
    「特性への理解」にもある通り、心の健康問題の情報は本人の人間関係や就労環境に大きく影響します。
    従業員が安心して相談できるように、個人情報保護に関して適切な管理を行い、従業員の意思を重んずる必要があります。
  • 職場以外の問題
    メンタル不調は職場以外の家庭やプライベートな場面での影響も受けます。同じ従業員同士でも就業時間外での付き合いがあるなど、関係性は様々です。メンタル不調の全てが業務に関係あるとは限らないという点で、対策・計画には注意が必要です。
     

運用後の評価については、その対策を予防目的別・実施別に分け、それぞれの役割が充分に機能しているか、実施に関して業務上の支障はないかなどを確認しましょう。
 

予防目的
・メンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」
・メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う 「二次予防」
・メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援等を行う「三次予防」

 
特に実施後の効果はどの尺度・どの意見に注目すればいいのか専門的な知識が必要でわかりづらく、手ごたえを感じにくいかもしれません。

ストレスチェック制度は従業員から直接その効果を伺うことのできる良い「検査」です。自社の取り組みのフィードバックとして、有効活用しましょう
 

 

小規模でもできる「産業保健」は公的資源を活用

小規模事業場では、 実施可能なところからひとつひとつ取組みを進めることが効果を出す実施のカギになります。

事業者による影響力がありますので、「事業主によるメンタルヘルスケア実施の表明」の効果が高く風土の改善も比較的短期間で効果が表れます。ぜひ積極的に取り組んでいただきたい部分です。

人数が少なく従業員各個人の顔が見えることが小規模事業場 の特徴ですので、セルフケア・ラインケアを中心として計画を組み立てましょう。

小規模事業場でネックになるのは、事業場内産業保健スタッフが確保できない・コスト的にできない場合ではないでしょうか。

指針では衛生推進者または安全衛生推進者を「事業場内メンタルヘルス推進担当者」として選任することをお勧めしています。実際の作業環境や安全管理の知識を持った担当者、として監督者がメンタルヘルスに関わる機会を増やすことから知識の周知を始めましょう。

保健師や産業医といった保健スタッフとの契約が難しい場合、 地域産業保健センターなどの提供する支援を積極的に活用することが有効です。
 

助成を受けるなら「策定前」に相談を

「心の健康づくり計画助成金」をご存じでしょうか?
 

独立行政法人 労働者健康安全機構(JOHAS)

 

厚労省が所管する独立行政法人 労働者健康安全機構が運用する「心の健康づくり計画助成金」は、事業主がメンタルヘルス対策促進員によるサポートやアドバイスを受け、「心の健康づくり計画」を作成し、計画に沿ってメンタルヘルス対策を行った場合に助成を受けることができます。

助成額は1企業一律10万円(初回申請のみ)です。

助成には以下の要件を満たす必要があります。

  1. 労働保険の適用事業場であること
  2. 登記上の本店または本社機能を有する事業場であること
    (個人事業主については、開業届の写しが必要)
  3. 訪問したメンタルヘルス対策促進員から助言・支援を受け、平成29年度以降、新たに「心の健康づくり計画」を作成していること
  4. 作成した「心の健康づくり計画」を労働者に周知していること
  5. 「心の健康づくり計画」に基づき具体的なメンタルヘルス対策を実施していること
  6. メンタルヘルス対策促進員から、「心の健康づくり計画」に基づき具体的なメンタルヘルス対策が実施されたことの確認を受けていること

 
申請は「心の健康づくり計画」の実施後に可能となります。

注意したいことは、助成を申請するための要件を満たすためには、「メンタルヘルス対策促進員」から助言・支援を受けなければならない点です。受けた助言に基づいた「心の健康づくり計画」を事業者が作成し、その計画に基づいたメンタルヘルス対策を実施して申請の要件を満たすこととなります。

申請にはメンタルヘルス対策促進員による「具体的なメンタルヘルス対策が実施されたかどうか」の確認も必要になるため、事前に相談などの調整を行いましょう。

メンタルヘルス対策促進員の訪問・相談依頼は、全国の産業保健総合支援センターにお問い合わせください。

期間内に事業者が申請する形式で、助成対象となる実施期間・申請期間も設けられています。本年度の申請期間は終了していますが、次回の募集に間に合うためにも今から策定・実施の検討を一度考えてみてはいかがでしょうか。

また、助成金の支給を受けた事業場は、書類を5年間保管する必要があります。
 


「心の健康づくり計画」の実施は、従業員の健康促進だけでなくモチベーションアップ、ひいては生産性の向上が期待できます。

衛生委員会や産業医との連携を見直す機会にもなる「心の健康づくり計画」、貴社ではどのような取り組みをされているでしょうか?
 

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〔 参考文献・関連リンク〕

初出:2019年12月17日 / 編集:2021年06月30日

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