パワハラ防止法:「パワハラ防止対策関連法」の施行は2020年6月で確定?“対策”の明確な基準は?

   

「パワハラ防止対策関連法」の施行は2020年6月で確定?“対策”の明確な基準は?

2019年5月に誕生した 「パワハラ防止対策関連法(ハラスメント規制法・ パワハラ防止法 )」 。
ハラスメント対策を企業に義務づけるものとして企業の担当者様から注目を集め2020年4月1日より施行と言われていたこの法律ですが、2019年10月に「2020年6月施行」案が発表されました。
対策を進めていた担当の方は驚かれたことと思われます。

新しい施行時期はいつなのか、どういった対応が求められるのかを解説しました。
 

5つの“法改正”からなる「パワハラ防止法」

2019年5月、参議院本会議で 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」 が可決されました。この法律案は労働環境で起こりうるハラスメントを防止するため、その対策や対応を義務付けるよう労働に関する法律を改正するものです。
現在ではこれらの内容をまとめて、 「パワハラ防止対策関連法(ハラスメント規制法・ パワハラ防止法 )」と呼ばれ施行が待たれています。

少しややこしいことでありますが、ハラスメント対策・防止措置を企業に義務付ける 「パワハラ防止法、ハラスメント規制法」 という法律ができたわけではないのです。パワハラ防止義務の内容は、労働施策総合推進法の改正によって、同法律内に規定されました。

「パワハラ防止対策関連法(ハラスメント規制法・ パワハラ防止法 )」はこの他下記の法律に関する改正を含んでいます。
 

  • 女性活躍推進法
    ⇒女性活躍推進のための行動計画策定等義務企業の対象を拡大
     
  • 労働施策総合推進法
    (正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)
    ⇒パワハラ防止措置の義務化 の明記
     
  • 男女雇用機会均等法
    ⇒セクハラ・マタハラに関する相談や訴えを理由とする
     不利益な取扱いの禁止
    ⇒就活生・取引先等の「社外の関係者」とのセクハラに関する措置 など
     
  • 労働者派遣法
    ⇒パワハラ防止措置について、
     派遣先事業主も「派遣労働者を雇用する事業主」とみなす旨の追記
     
  • 育児・介護休業法
    ⇒育児休業・介護休業等に関するハラスメントの相談・訴え等を
     理由とする不利益な取扱いの禁止 など

施行日も改正される法律毎になっていて統一はされていません。
 

施行の目標期日は【 2020年4月 】から【2020年6月】へ

発表時、「企業に対するパワハラ防止措置の義務化」について「公布日から1年以内の政令で定める日(中小企業については、公布日から3年以内の政令で定める日)」を施行期日として据えられています。

2019年10月28日、 厚生労働省で開催された「第21回 労働政策審議会雇用環境・均等分科会」において、「パワハラ防止対策法制化」の施行期日を定める政令案として、以下の内容が示されました。
 

  • 労働施策総合推進法の改正
    ★パワハラ防止対策の法制化・パワハラ防止措置等の実施義務の創設
    (公布後1年以内の政令で定める日 /中小事業主は、公布後3年以内の政令で定める日 までは努力義務 )
    ⇒2020年6月1日(中小事業主は令和4年3月31日)
     
  • 男女雇用機会均等法、育児・介護休業法の改正
    ★セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化
    (公布後1年以内の政令で定める日)
    ⇒2020年6月1日
     
  • 女性活躍推進法の改正
    ★行動計画策定・情報公表義務の対象拡大
    (公布後3年以内の政令で定める日)
    ⇒2022年4月1日
     
  • その他
    ★情報公表の強化・勧告違反の公表、プラチナえるぼし、報告徴収等の対象拡大
    (公布後1年以内の政令で定める日)
    ⇒2020年6月1日

「パワハラ防止措置等の実施義務」については、令和2年4月1日からの施行が目されていましたが、「令和2年(2020年)6月1日施行(中小事業主では、令和4年(2022年)3月31日までは努力義務)」ということになりそうです。

施行時期延期に関して 、その理由や経緯に関しては 指針や政省令の策定が思うように進まなかった、省庁内での実施・対策に関する調整が難航している等様々な要因が考えられています。
特に 10月21日に発表された 「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案」 に対し、 労働関連の弁護士団体である日本労働弁護団は同日、同指針案の抜本的修正を求める声明を発表したことが関連しているのではないでしょうか。

日本労働弁護団の声明では 「優越的な関係を背景とした言動」 ・「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」 といった 現在発表されているハラスメントの定義 や判断基準がかなり限定的であることを指摘し、加害者側が非常に有利な内容であるため修正を求めるものでした。

さらに提案された介護休暇制度の柔軟化も含めて、さらなる検討が見込まれます。
 

“対策”の明確な基準はいまだ発表なし、
人気の対策は「窓口の設置」と「就業規則改正」

6月までの施行延期となっても、いまだ明確な対策の基準や報告等の企業が行うべき義務内容の発表はなく、どう対応策を講じればいいのか迷われている企業もいまだ大勢いると思われます。

厚労省発表の「パワーハラスメント対策導入マニュアル(第4版)」の調査では、企業のパワーハラスメント対策で実施されている施策内容上位3位は「相談窓口の設置」「管理職に研究会に参加させる」「就業規則に盛り込む」。“ 厚生労働省の推奨している予防策 ”はやはり信頼がおかれているようです。

また 厚生労働省のアンケートでは、パワーハラスメント対策を行っていると回答した企業の8割の企業が相談窓口を設置・運営しており、6割の企業が就業規則にハラスメントの禁止とその対策を追加していました。
就業規則にハラスメント対策を盛り込んだ企業では、ハラスメントをおこなってしまった職員に対し「懲戒を行う」という規定が定められることが一般的となっているようです。
 


ハラスメントの原因には少なからず「閉鎖的な関係性」「社外から関与されにくい環境」といった会社が組織としてあるために発生する特徴的な風土が関係しています。
従業員全体の心身の健康を損ねるだけでなく、パフォーマンス低下・人材の流出、獲得困難を招く重大な問題です。またミスやインシデントの報告を恐れ、経営判断に必要な情報の伝達が遅れるなど労災につながる、会社の経営に悪影響を与えるといった明確な損失が発生することも懸念されます。
被害者からの訴訟や従業員の健康保護の面に着目して、防止対策と並行した治療・支援の確保など「被害者の健康を取り戻す」点をクローズアップし施策を行っている企業も見られ始めています。

ハラスメントは会社の中にある「大きなリスク」、企業としてハラスメント対策を考える際に一番重要なのは「法律で決められているから」ではなく、「従業員を一人の人間として大切に扱う」視点なのではないでしょうか
 

〔 参考文献・関連リンク〕

初出:2019年12月5日

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