ハラスメントの実態と予防・対策:悪質クレーマーから従業員を守る!企業ができる「カスハラ対策」とは?

   

悪質クレーマーから従業員を守る!企業ができる「カスハラ対策」とは?

労働契約法で定められている安全配慮義務には、使用者が労働者の生命や身体等の安全を確保しつつ労働できるよう配慮するよう書かれています。

それは「社内の危険」のみならず「社外の危険」についてもおなじこと。
カスタマーハラスメントが従業員にストレスを与えているという状況があるならば、対策を取らない場合には安全配慮義務違反となる場合もありえます。

企業はカスタマーハラスメントから従業員を守る必要がある中、具体的にはどういった対策を行っていけばいいのでしょうか。
 

まずは「カスハラ」の定義を明確に

悪質なクレームは従業員を疲弊させるだけでなく、他のお客様にいきわたるべきサービスや対応がおろそかになってしまいます。悪質なクレームへの対応が長時間、頻繁化してしまうと通常の営業に影響があるだけでなく、クレームをするお客様が定着してしまう・過剰な対応、不当な要求に前例を与え応えなければならなくなるといった「問題」に育ってしまうことも。

ネットやSNSが普及したために、クレームが「炎上」と呼ばれる不祥事の情報の拡散・イメージやブランドの汚損につながってしまうことを警戒する企業も多いでしょう。売り上げや今ある顧客への影響を考えるあまり、理不尽な要求にも黙って耐えることを選択してしまう企業も少なくありません。
ですが、「カスハラ」の影響力は店舗・企業だけでなく、他に来店していただいているお客様にも及びます。不当なクレームに対応する・従業員がハラスメントを受けている状況を目撃したことで嫌な思いをさせてしまっている可能性もあるでしょう。

「カスハラ」とされる悪質なクレームの中には刑法に抵触するような行為もふくまれます。法律による明確な基準は設けられていない難しさもありますが、大事なよいお客様・従業員を守るためにも企業内で明確な線を定めそれを超えるような「カスハラ」には毅然とした態度で臨むことが求められています。
 

~7つのカスハラ典型例~

  • 社長や責任者、上の者をだせの一点張りで内容を話してくれない
  • 対応の悪さやささいなミスを謝罪しても執拗に指摘、説教、攻撃
  • 明らかに個人的な理由によって叶いそうにない要求をあえて主張
  • 謝罪文の送付など、文章や証明の請求
  • 長時間の対応を強要、何度も同じことでクレームを入れる
  • 謝罪や対応を拒絶しつづける、満足するまで謝罪を要求する
  • 店舗や事務所に居続ける、閉店なとでの退去に応じない、大声での非難・恫喝

また、カスハラの起こる背景に「業界内の企業間で対応の差があること」も影響があると言われます。同業の企業間で対応や態度に違いがあると、「あそこの会社はやってくれた」とクレーム要求の基準を「一番対応してくれる会社」に合わせるよう強要するカスハラが目撃されています。

業界全体・社会全体で「従業員・企業も“対等な人間”であること」「理不尽・不当な要求には答えない」という姿勢を表明していきましょう。
 

カスハラ対策は「明示」と「確認」

企業が行える悪質なクレームへの基本対応は 「カスハラに過剰に対応しないこと」「何かあれば、すぐ上司に報告すること」などの【毅然とした態度をとれる職場の用意】です。
UAゼンセンのアンケート結果においても、「迷惑行為への対応を円滑にする企業の組織体制の整備」を求める現場からの意見が5割近くあげられています。

先ほども述べた通り、最初にやるべきは「何がカスハラ(不当な要求)にあたるのか」、要求を拒否できる基準を示すことです。いざその場面に行き会ったらどうするか、対応や報告のフロー/マニュアルを作成しておくことも並行して行いましょう。
対応の基準・対応策の明示は現場にいる従業員にとって組織から与えられた「信頼できるよりどころ」になります。

また、中には適切に対応すれば企業にとって有益な情報になるクレームも存在します。お客様を「クレーマー」にしないためにも、 「情報の確認」を怠らないようにしましょう。

①事実の確認
②因果関係の確認
③応答内容の確認
④意見・要求の妥当性の確認


特に電話や対面で対応する企業の場合、「いった言わない」の確認が取れないことがトラブルの原因になりえます。録音や店内映像の記録といった記録システムが活用できるよう、お客様から見えるところに明示しましょう。
  

カスハラに潰されない人材を作るためには社内が大事

悪質なクレームを行おうとするお客様は、新人、女性、若者、など、「比較的クレームがいいやすい」とおもわれる相手をターゲットに言いがかりを付ける傾向にあります。ターゲットにされてしまった従業員は、何度もクレームをつけられたり、一人で対応し続けるとエスカレートするということも多いようです。

カスハラのほとんどは理不尽な言いがかりで、現実的な解決策が存在しないことがほとんどです。 理不尽な要求にきちんとした対応ができるような人材に育てるために企業ができることは何でしょうか。
以下のの対策が挙げられます。
 

  • カスタマーハラスメントに関する研修・事例共有
  • カスタマーハラスメントに関する報告フロー・相談窓口の整備


第一に必要なのが、「カスタマーハラスメントに遭遇した場合にどのように対応すべきか」という研修です。 実際に自社であった事例などを取り上げて、分析や正しい対応を紹介することも有効でしょう。
悪質クレームの対応にあたった従業員はその場で正当なクレームか悪質クレームなのかを判断するのが難しいケースもあるため、事前に悪質クレームの事例を共有し、「こういう悪質なクレームを受けた場合には助けを求めたり相談したりしてもいいんだ」という感覚がもてるようにすることが重要になります。

カスハラを受けてしまった従業員のフォローとして、ストレスを相談できるような窓口を整えておくことも有効です。ストレスだけでなく、ハラスメントが相談できる体制を作り、相談窓口が使われるように周知も徹底しましょう。

前述した通り、悪質なクレームは 「クレームが言いやすそうな人」に集中します。 管理者などに対応が交代するだけで場が収まるケースも報告されています。
すぐに報告ができる職場は日頃の人間関係から、信頼が構築できるようコミュニケーションを心がける管理者指導も求められるでしょう。

中にはお店だけで対応するのが難しい悪質クレームや暴行・恐喝・強要といった法律に抵触するハラスメントもあるため、大きなトラブルがあったときに相談できる弁護士や専門家、通報先を決めておくというのもポイントとなります。
 


カスハラは企業にとっても「従業員の時間をとられる」「サービスをよりよくするクレーム情報のノイズになる」「教育した人材の喪失」とマイナスの影響が大きく、対応に悩まされている方も多いでしょう。

企業の利潤はお客様あってのこととはいえ、 企業と顧客/従業員とお客様という立場はあれど、「サービスを間に挟んだ対等な人間同士のやり取り」であることを忘れてはいけません。
言いがかりに近い理不尽な要求や暴力、従業員の人格を否定するような暴言はクレームではなく「ハラスメント」です。

リスクマネジメントととらえると難しく見えますが、「クレーム対応」は企業を困らせる“損失”です。「組織の問題」として対応することが必要となっています。
 

初出:2019年12月11日

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