ストレスチェック実施者になろう!:産業保健スタッフに必要な「実施者講習」とは?

   

ストレスチェック実施者になろう!―産業保健スタッフに必要な「実施者研修」とは?

2018年8月、労働安全衛生規則の一部を改正する省令が施行となり、「労働安全衛生法」に基づくストレスチェックの実施者が追加されました。
これにより実施者となることができる資格に「歯科医師」「公認心理師」が追加され、【必要な研修】を受けることで“ストレスチェックの実施者”となることが可能になりました。

ストレスチェックで中心的な役割を果たすのは「実施者」です。
医師、保健師、看護師・精神補年福祉士といった「精神や医療に関する知識・経験」の資格が求められます。その中でも医師と保健師は、国家資格があれば無条件でストレスチェックの実施者になることができますが、看護師および精神保健福祉士、歯科医師、公認心理師は、厚生労働省が定める所定の研修を受けなければなりません。

厚生労働省の「ストレスチェック実施マニュアル」では、「事業場で選任されている産業医」が最も望ましい 実施者 とされています。しかし、産業医の専門診療科がメンタルに向いているか、事業所と産業医の所在地が離れているため就業時間内で面接や説明といった業務は頼めない……という企業もあり、現在産業医以外で会社の健康や環境を相談できる「産業保健スタッフ」の導入が注目されています。

産業保健スタッフに実施者を依頼する時、役割や研修用意はどうすればいいのでしょう。実施者に必要な「実施者研修」についてまとめました。
 

実施者の役割「専門知識からの判断」

厚生労働省のストレスチェック実施マニュアルでは、実施者の具体的な役割について、以下のように定めています。
 

実施者の役割

  1. 事業者がストレスチェックの調査票を決めるに当たって、
    事業者に対して専門的な見地から意見を述べること。

     
  2. 事業者が高ストレス者を選定する基準や評価方法を決めるに当たって、
    事業者に対して専門的な見地から意見を述べること。

     
  3. 個人のストレスの程度の評価方法に基づき、
    医師による面接指導を受けさせる必要があるかどうかを判断すること。

     
  4. 個人のストレスチェック結果を当該労働者に通知すること。
     

実施者の役割に求められるのは「専門的な見地から」ストレスチェックが正しく行われるよう「判断する」ことです。
これらの事項は実施者が行うことが義務とされていますが、さらに必要に応じて実施事務従事者に指示して以下の事項も行うこととされています。
 

トレスチェックに必要な実施事務

  1. 高ストレス者であって面接指導が必要と評価された労働者に対して、
    医師による面接指導の申出を行うように勧奨すること。
  2. 高ストレス者であって面接指導が必要と評価された労働者であって、
    医師による面接指導の申出を行わない者に対して、相談、専門機関の紹介等の支援を必要に応じて行うこと。
  3. 個人のストレスチェック結果について記録を作成・保存すること。
  4. 個人結果を集計し、集団的に分析したうえで、事業者に提供すること。
     

上記のように、実施者には非常に専門的な業務内容が求められます。
また、労働者について直接の人事・職務配分の権限を持つ監督的地位にある者は検査の実施の事務に従事してはならないと定められています。
人事権を持つ人(例・病院長、理事長など)は実施者の要件を満たしていても、自分が権限を持つ職場の実施者にはなることはできません。そのため、医療施設や病院では院内の医師の他に保健師など産業保健専門のスタッフを置く企業が増えています。
 

「実施者研修」は全国で受けられます

身体の健康状態の評価には健康診断が行われていますが、こころの健康状態の評価を行うのがストレスチェックです。
健康診断を行えるのは医師だけですが、ストレスチェック制度においては医師の他に、保健師と厚生労働省が定める一定の研修を受けた看護師・精神保健衛生・歯科医師・公認心理師も実施者となることができます。

※省令により、
・平成27年11月30日(施行日の前日)までに3年以上
・労働者の健康管理等の業務に従事した経験を有する
・看護師・精神保健福祉士・労働衛生コンサルタント免許所持者
は、研修を受けなくても実施者となることができます。

現行のストレスチェック制度においては常時使用する労働者が50人以上のすべての事業場に実施義務が課されていますが、制度趣旨から今後はさらに対象が広がるかもしれません。
事業場の数に対して実施者業務を行う医師の数が不足している状況において、 スムーズな制度運営 を行うために、保健師や看護師、精神保健福祉士にも対象を広げ十分な人数の実施者確保が進められています。

看護師と精神保健衛生士については、「検査を行うために必要な知識についての研修であって厚生労働大臣が定めるもの」を受講することが条件となっています。この研修は厚生労働省の指定を受けた企業・団体が主催を行っており、制度の内容や結果に対する見方・高ストレス者についてなどのストレスチェック制度に関わる詳細の研修を行います。大体の研修は1日程度、座学を中心として構成されており、受講証明書の発行などもされます。

研修の日程については、厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課産業保健支援室より開催情報が公表されています。 平成31年11月末時点の情報によると、以下の7つの実施主体が研修会を開催しています。
 

  • 中央労働災害防止協会
  • 株式会社ウェルネット
  • 日本精神保健福祉士協会
  • 特定非営利活動法人地域生活支援ネットワークケアーサポート
  • 一般社団法人メンタルヘルス協会
  • 一般社団法人日本遠隔カウンセリング協会
  • 一般社団法人日本産業カウンセラー協会 東京支部・中国支部
     

東京を中心に北海道・宮城・愛知・大阪・兵庫・広島・福岡といった交通の便がいい主要都市で開催されています。

来年度の開催予定については詳細がまだ公開されていない団体が多いですが、それぞれの団体を合わせて20~30回の開催が見込まれています。受講料はどの団体でも参加者1名15,000円程度となっているので、費用面のハードルはそれほど高くなさそうです。
 


医師がストレスチェックの実施者となる事業場が多いと思われますが、要件を満たす産業保健スタッフがこれを代行することも可能です。また、産業健保スタッフとして実施者をサポートする立場であっても、実施者として必要な知識を学習することは意義あることです。
特にストレス負荷の高い職種では産業医の他に、職場に常駐しいつでも相談できる保健師・看護師・精神保健福祉士といったスタッフの導入は検討する価値があるかもしれません。

産業保健スタッフとして看護師や精神保健福祉士の資格を持つ人が働いている職場では、これらの人達にストレスチェック実施者の研修を受けることを勧めてみてはいかがでしょうか。
 

〔 参考・文献 〕

初出:2017年10月18日 / 編集:2019年11月26日

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