「SOGIハラ」対策してますか?身近で起こりやすい“アウティング”に注意:ハラスメントの実態と予防・対策

   

「SOGIハラ」対策してますか?身近で起こりやすい“アウティング”に注意

パワハラ防止法の指針では、「ハラスメントのない社会」の実現のために自社内で起こるハラスメント以外についても対応を義務付けています。 その対象はフリーランス・関係者・就活生など、直接雇用していない第三者へのパワハラや、顧客からのハラスメントに関する相談を受けた場合など、「企業が関するハラスメント」全般にわたります。
特に企業として注意しなければならないのが、 最近話題になった「SOGIハラ」です。

2019年12月12日、経済産業省が受けた「性自認に基づいた女性トイレの利用を制限に関する訴訟」では、経産省に約130万円の賠償が命じられました。東京地裁は、経産省の行ったトイレの制限的な利用や自認性別を否定する発言について「 職務上尽くすべき注意義務を怠った 」とする判決を下しております。

LGBTQなどの性自認、性的指向に関わる問題はまだ日本ではなじみが浅く、「相談されたけどどう扱っていいか」「関係者にどう伝えるべきか」悩んだというお話もしばしば。きちんとした知識に基づく誠実な理解がなければ、対応・配慮自体が逆効果になってしまい、当人を傷つけてしまいかねません。この判決例は今後企業として行うべき「性的指向・性的自認に関するハラスメント(SOGIハラ)」の基準として今後重要視されるものとなるでしょう。

今回は、これからのハラスメント対策で注目を集める「SOGIハラ」について、その具体例などを交えて解説します。
 

SOGI=「誰もが持つ、“ 在り方 ”」

「SOGI」とは、性的指向(好きになる性の傾向; Sexual Orientation )と性自認(自分の心の性別; Gender Identity )、それぞれの英訳のアルファベットの頭文字を取った略称です。
既に世に知られている言葉として自分の性的な自認を表す「 LGBTQs」があげられますが、この言い方は性的マイノリティの総称として用いられることがあり、「少数の人だけの問題」「身近にそんな人はいない」というような誤解を招いてしまうことも起こりました。
SOGIはそのような問題を解決すべく、「性的指向および性自認」という概念(性の要素、尺度)を表す言葉として生み出されました。このSOGIに当てはまる「認識」は、 性別に対するアイデンティティ としてどのような属性の人でも、全ての人が持っているものです。

SOGIという表現は、2015年頃から日本でも使用・紹介が始まりました。2017年に開催されたレインボー国会で、SOGIに関連する差別やいじめ、いやがらせ、ハラスメントを指す「SOGIハラ」という言葉が提唱され、【 誰しもが関係のある、 性的なあり方の問題 】という観点からの「平等で不利益のない社会」を目指す運動が高まっています 。
 

指針で義務付けられたのは、「企業の関わるハラスメント」への対策

昨年発表されたパワハラ防止法の指針では、社内で起こりうるハラスメントの他にも組織や企業が関わる可能性のあるハラスメントへの対応についても言及されています。
フリーランス・取引先・関係者・就活生など直接雇用していない第三者へのパワハラや、顧客からのハラスメント(カスハラ)に関する相談についても、事実確認や被害者・行為者への適切な対応を行うよう企業へ働きかける内容となっており、パワハラに限らない「ハラスメント」を許さない社会・組織を目指す動きが本格化していると言えるでしょう。

その中で「SOGIハラ」は、セクハラやマタハラといった「社内で起こりやすい」ハラスメントにあたります。
前述のとおり、SOGIハラとは全ての人が持っている性的なアイデンティティに関わるハラスメントです。「うちにはLGBTQはいないから」「私はヘテロ(異性愛者)だから」といった認識はSOGIハラの発生や助長につながる一番大きな問題、 LGBTの人口は日本全体の約8%と言われ全く「珍しい」ものではないこと、また ” プライバシーに深くかかわるデリケートな問題ですので口外していない方も多い “という調査結果も報告されています。
SOGIハラはもう「知らなかった」「そういう意味ではなかった」というステージを超えて、企業として、働く成人として知っておくべき基礎知識であるという認識が求められています。
 

こんなことありませんか?SOGIハラ行為例

では、SOGIハラとして該当する行為とはどんなものなのでしょうか。
指針に記載の例はあくまで事例に過ぎず、国会では「性的指向・性自認を理由に仕事から排除する」こともパワーハラスメントに該当すると政府が答弁しており、記載されていないような例も含まれるとされます。
 

見直すべきは「いつもの言葉」です

「SOGIハラ」は、 一見普通に見えるやり取りの中にも潜んでいることがあります。
 

  • 差別的な呼称や嘲笑のネタにするといった言動
  • SOGIを理由とするいじめ、無視、暴力
  • 望まない性別での生活の強要
  • 不当な異動や解雇
  • 人のSOGIを許可なく公表する(アウティング)

一番頻繁にあるのは差別的なニュアンスを伴う「からかい」や「いじり」に値する言動でしょう。 日常会話やメディアでもみられる言葉ややり取りの中にも『ホモ、オカマ、オネエ、レズ』といった当事者にとって差別的な呼称があることを自覚するところから始めなければなりません。
当事者の約6割がこのような言葉や「ネタにされる」「気持ち悪いよな、と否定を受ける」といったいじめの経験があると報告されており、これからの社会全体の課題としても重く受け止められるべき問題です。

また面接の途中でカミングアウトをしたら選考を打ち切られる・内定を取り消されたりといった不利益な取り扱いのほか、男女別の制服の強要やトイレなどの必要施設の制限も「業務上必要な配慮に欠けた、不利益」とされます。
「交際相手について追究される」「配偶者に対して悪口を言われる」などは「個の侵害」に当たると厚労省は示しており、同性パートナーに限らず従業員やその家族に対するハラスメントとして注意が必要です。
 

「アウティング」は特に注意!

「アウティング」と聞くと、2015年に起こった 一橋大学アウティング事件 を思い出す方もいるのではないでしょうか。ロースクールという法曹に携わる人材を教育するような現場で起こったということもありショックを受けられた方もおられるでしょう。
本人の性的指向や性自認を知る立場の人が第三者に本人の同意なく勝手に伝えてしまう「アウティング」は、職場内で“配慮”“対応”を行う際にとても起こりやすいです。本人が安心して・必要に応じて開示した情報を周囲が悪意を持って広めてしまう、悪意はなくともふと漏らしてしまった情報を元にハラスメントが起こってしまうことは十分にあり得るもの。「アウティング」防止対策には情報公開範囲の同意をとるなどの本人=担当者間で行う対策の他に、「アウティングがハラスメントになる」ことを従業員に周知徹底するといった啓蒙活動を継続的に行う必要があるでしょう。
 

「性別」ではなく個人を見る心がけを

SOGIハラとして取り上げられているハラスメントの中には、「セクハラ」としても扱うことのある者が多く含まれています。セクハラも内容としては「性別」に基づいて行われる広義のSOGIハラです。

これらのハラスメントは心身の性別という「属性のみをみて行われる」という共通点があります。結婚や交際といったプライベートなことは誰でもずけずけと立ち入ったことを聞かれたらいやなもの。「何がハラスメントか、どんな言葉が差別の意味を含んでいるのか」と知ることも大事ですが、「それを聞いてもいい・聞かれたくなければNOと言える信頼関係が間にあるか」といった相手と自分の人間としての関係性を見ることが、ハラスメントを防ぐ大事なキーポイントになります。
 

〔 参考文献・関連リンク〕

  • 厚生労働省:職場のいじめ・嫌がらせ問題の予防・解決に向けたポータルサイト「あかるい職場応援団
初出:2020年03月25日

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