パートタイム・有期雇用労働法とは?具体的な内容と対策について徹底解説

「パートタイム労働法」が「パートタイム・有期雇用労働法」が改正され、 2020年4月1日より 「同一労働同一賃金」の原則がいよいよ適用となります。

非正規雇用者と正規雇用者間における不合理な待遇差が禁止となり、非正規雇用者の対象も有期雇用労働者が含まれるようになります。企業によっては法改正に伴って、就業規則を大きく変更したり、非正規雇用者だけでなく正規雇用者の賃金についても考えなければいけません。

では具体的に法改正の内容はどんなものなのか、そして企業はどうすればいいのか。就業規則や賃金といった内容は労使双方を交えて話し合わなければならないので、パート・アルバイトを抱える企業はきちんと理解をしておきたいものですね。
そこで今回は、パートタイム・有期雇用労働法の内容の詳細から、企業および事業主が取るべき対策について解説していきます。
 

パートタイム・有期雇用労働法に改正

「パートタイム・有期雇用労働法」(正式名称 「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」 )は、2018年7月に法改正が行われました。
これによって、待遇格差の是正に取り組むことが「企業の義務」となります。

パートタイム・有期雇用労働法とは、同じ企業に勤める従業員において、正社員と非正規社員間に生まれるあらゆる待遇差について、不合理な差を禁止する法律のことです。待遇格差をなくすことによって非正規労働者が待遇に納得し、気持ち良く働き続けられる労働環境の実現を目的としています。
 

中小企業の具体的な基準とは?

今回の施行では「中小企業に1年間の猶予」が設けられています。
猶予措置を受けられる中小企業は、 中小企業基本法 の定めるところに基づいて資本金の額か出資金の総額、もしくは常時使用する労働者数を基準に定められています。
 

業種資本金の額または出資金の総額常時使用する労働者数
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他3億円以下300人以下

これらいずれかを満たしている企業は中小企業と判断され、パートタイム・有期雇用労働法の施行適応が2021年4月1日となります。
 

待遇差禁止を定める法改正、3つのポイント

法改正にともなって、企業がおさえておくべきポイントは以下の3つです。

  1. 不合理な待遇差の禁止
  2. 労働者に対して待遇の内容・理由を説明する義務
  3. 不合理な待遇差や内容説明などで対立したら裁判外紛争解決手続 (行政ADR)の手続き対象

それぞれのポイントについてくわしく解説していきましょう。
 

「不合理な待遇差」は3つの法律で禁止に

上記でも解説したとおり、パートタイム・有期雇用労働法におけるポイントの一つは、正社員と非正規社員とで不合理な待遇差を禁止することです。

主に差が出やすい待遇として、
賃金、賞与などの報酬の有無、その額
各種手当の利用の許可、制限
福利厚生 の種類 など
が挙げられています。

上記のような待遇差を禁止する方策として、以下3点の法律が整備されました。

  • 均衡待遇規定
    均衡待遇規定とは、不合理な待遇差を禁止する規定です。
    たとえば、非正規社員はクレーム対応を行わない代わりに交通費を支給しないなど、業務の違いに応じて合理的で具体的な待遇差を設ける必要があります。
     
  • 均等待遇規定
    均等待遇規定とは差別的取り扱いを禁止する規定で、たとえば業務や責任の範囲をはじめ、正社員と非正規社員とで労働条件が同じ場合は、給与の差別化などが禁止されます。
     
  • 同一労働同一賃金ガイドラインの策定
    基準を明確化するために、同一労働同一賃金ガイドラインの策定が必要になります。
    たとえば、
    ・各手当に対してどのような場合に支給されないのか、
    ・どのような待遇差が不合理に該当するのか
    など、具体的に示したものをガイドラインとして規定しましょう。
     

ガイドラインのくわしい策定方法については、厚生労働省が提供している「同一労働同一賃金ガイドラインの概要」を参考にしましょう。
 

労働者に対して待遇の内容・理由を説明する義務

企業は待遇の格差を是正改善する取り組みを進めるとともに、労働者に対して待遇の内容・理由を説明する、是正改善の取り組みを行っていることを周知する義務があります。

説明義務のポイントは以下の3つです。
 

  • 労働者に待遇差の内容や理由について説明する
  • 正規職員、派遣職員、パートタイム労働者だけでなく有期雇用労働者も対象となる
  • 事業主は説明を求めた労働者に対して不利益な対応をしてはいけない


上記をまとめると、【事業主はパートタイム労働者・有期雇用労働者から「正社員との待遇差における内容と理由」について聞かれたら、必ず説明しなければならない】義務があります。
また、説明を求めた労働者に対して解雇や減給をするなど、不利益な対応をしてはいけません。

説明義務の対象となる従業員は、有期雇用労働者も含まれます。
パートタイム労働者および有期雇用労働者が待遇差について事業主に説明を求める場合、 「待遇差の内容や理由」のみならず「待遇や配慮を決定する際に、考慮した事柄」についてもきちんと説明を行わなければなりません。
または「雇用上の措置・待遇( 賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用など )」 について 雇い入れ時に前もって説明を行うことも、同様に義務の対象となります。
 

事業者と労働者との対立は《行政ADR》の対象
解決のための援助を受けられます。

パートタイム・有期雇用労働法の施行後、労働者と企業・組織の間で起きた紛争は、裁判以外の手続きを経て解決する 「行政ADR」の対象となります。当事者の希望によって都道府県の労働局から早期解決のための支援を受けることができるようになりました。

ADRとは、 裁判をせずとも各種行政のサービスを利用して問題解決が行われる 手続きを指します。行政サービスの一環として行われる行政ADRは、原則として非公開・無料・裁判より簡便で手続きが迅速という特徴があり、取り決められた合意は民法上の和解と同様の効力があると認められています。
今まで取り上げられていた「いじめ・嫌がらせ・ハラスメント」「損害賠償に関わる事柄」「募集・雇用・解雇」に関する手続きに加え、この改正より 「均衡待遇( 同一労働同一賃金 )」や「待遇差の内容・理由に関する説明義務」についても対応が可能になりました。 <法第24条、第25条、第26条 参考>

加えて有期雇用労働者も行政による助言・指導等/行政ADRの対象として、ADRの希望を出したり対立の早期解決のための行政の助言・あっせんが受けられるように。
都道府県労働局では総合労働相談コーナーや 局雇用環境・均等部(室)に窓口を設け、労働問題に関する個別相談を行っております。
  

企業が取るべき対策とその進め方

厚生労働省が発表している「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」によれば、法施行に向けて企業が取るべき対策は以下の6ステップに分かれています。
特に4ステップまではなるべく早急に取り組むよう、推奨されています。
 

  1. 労働者の雇用形態を確認
  2. 待遇の状況を確認
  3. 待遇に違いがある場合は、違いを設けている理由を確認
  4. 待遇の違いが不合理でないと説明できるように整理
  5. 法違反が疑われる状況からは早期の脱却・改善を目指す
  6. 改善計画を立てて、よりよい環境づくりに取り組む

まずは従業員が正規雇用か非正規雇用か、それぞれの待遇の状況や福利厚生の使用について就業規則等と照らし合わせて確認するところから始めましょう。

待遇に差がある・福利厚生やその他手当について別紙で規定がある場合は、それが不合理であるかどうかを確認しなければなりません。 「働き方や役割などが異なる」といった理由があれば、それに応じて賃金(賞与・手当を含む)や福利厚生などの待遇が異なることはあり得ます。
しかし職務の内容や責任範囲、遂行能力、評価制度や手当の目的など様々な視点から考えた際に「不合理ではない」と言い切れない場合は待遇の改善が必要です。

就業規則および賃金規定を見直すためには、自社の資金を考慮する必要があるほか、短時間および有期雇用労働者を含む労使間での話し合いの場を設けなくてはいけません。また、 正社員と短時間労働者・有期雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消を目的として、 労使で合意することなく、正社員の待遇を引き下げることは望ましくありません。

従業員全体の意見を参考に、よりよい雇用に向けて改善の必要はないか、検討を重ねていきましょう。

それぞれの対策と手順についてくわしく知りたい方は、「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」を確認しましょう。
 


~パートタイム・有期雇用労働法のポイント~
• 2020年4月1日(中小企業は2021年4月1日)から法施行
• 非正規雇用と正規雇用との不合理な待遇差が禁止
• 事業主は労働者に対して待遇の内容をきちんと説明する義務がある
• 法施行の前に待遇差とその内容・理由を確認して定める
• 不合理な待遇差が確認できたら早めに対応する


就業規則等を見直すためには想像以上に話し合いや手続きの手間がかかります。
特に中小企業ではパート・アルバイトが現場での主戦力を担っていたり、正社員と同一の業務・責任を行っているというケースも珍しくないでしょう。なるべく早めの対策を講じるよう、今から確認を。
 

〔参考文献・関連リンク〕

初出:2020年06月22日

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