ストレスチェックスコアからみた「健康リスク」と「高ストレス者」判定法:改めてチェック!ストレスチェック制度

   

ストレスチェックスコアからみた「健康リスク」と「高ストレス者」判定法

ストレスチェックを受検して高ストレス者と判定された場合、健康リスクも必ず高いと思われがちですが、実際の結果ではすべてがその通りではありません。

高ストレス者の判定法と健康リスクの判定法は、意味や算出方法が異なります。

ストレスチェックの活用にも関わる2つの判定方法を解説します。
 

健康リスクの判定

集団分析の方法として、職業性ストレス簡易調査票の開発当時から「仕事のストレス判定図」の使用が紹介されてきました。

厚生労働省発表のマニュアルにおいても、
【集団ごとの集計・分析の具体的な方法は、(中略)「職業性ストレス簡易調査票」に関して公開されている「仕事のストレス判定図」によることが適当】(P84)
とされています。

仕事のストレス判定図は「量―コントロール判定図」と「職場の支援判定図」の2視点から、事業場全体・部や課などの集団にかかる心理社会的な仕事のストレス要因の程度と、これらが労働者の健康に与える影響の大きさを評価する方法です。

各集団のデータを仕事のストレス判定図上で全国平均と比較することで、その集団における仕事のストレス要因の特徴を知ることができます。

健康リスクの判定方法をみてみましょう。

まず、職業性ストレス簡易調査票の57項目の質問のうち就業環境から来るストレスの要素と関係する
A領域の「仕事の量的負担」、「コントロール」
C領域の「上司の支援」、「同僚の支援」

のなかから合計12項目の得点を算出し、それを「仕事のストレス判定図」の上にプロットします。

次に、判定図にプロットした「仕事の量的負担」と「コントロール」の点数/ 「上司の支援」と「同僚の支援」の点数から、各図ごとに斜線に書かれた数値を読みます。

この斜めの線は各要因から予想される疾病休業などの健康問題のリスク(健康リスク)を全国平均を 100 として表すものです。
2つの図から得られた健康リスク値を乗じて100で割ることで「総合健康リスク」値が算出されます。

各健康リスクは「100を超えたらその分リスクが高く、数値が低いとリスクが少ない」、つまり1ポイント=1%として全国平均との差からその職場のリスクを評価します。

例えば、総合健康リスクが120となっている場合は全国平均よりも21ポイント高い状態にありより「健康問題が起きるリスクを抱えた」集団であると言えるでしょう。リスクの要因は各図にプロットされた点数のバランスやその他ストレスチェックに含まれる尺度から分析を行います。

逆に100以下となった場合は、全国平均よりも健康的な職場・勤務環境であると言えるでしょう。
 

高ストレス者の判定

ストレスチェック結果の評価方法・基準(高ストレス者の判定基準)は、各企業においてデータや環境に適した基準を定めることができます。

この基準は事業者が決定するものでありますが、衛生委員会での承認や実施者・産業医といった有資格者の確認・助言を得る必要があります。また、その上で実施者が各個人の結果を踏まえて評価を行います。
基準を定める際は、まず社内産業保健スタッフにアドバイスを求めてみましょう。

高ストレス者を判定する基準を定める際、注目すべきは 「心身のストレス反応」の評価点数 です。

医療やケアを必要としている労働者の可能性が高い「心身のストレス反応」の評価点数が高い者を優先的に選ぶことが必要ですが、評価点数の基準や採点法によっては実態に沿った判断を行うことが困難になります。
また、心身の反応だけで判断を行うと自覚症状はないけれどメンタルヘルス不調のリスクがある労働者を見逃してしまう可能性があります。

現在は約 2.5 万人(男性 15,933 人、女性 8,447 人)の種々の業種、職種の労働者のデータベ ースを元に作成された【 素点換算法 】を用い、「心身のストレス反応」と「仕事のストレス要因」及び「周囲のサポート」の2軸によって判定を行う厚生労働省マニュアルに沿った評価方法が一般的となっています。

上記のサンプルデータから算出された区分評価点を活用する【素点換算法】では、ストレスチェックの各設問をその内容から「尺度」に分け、 算出された点数の合計から評価を行います。
各尺度はまた3つの領域にまとめられ、それぞれ仕事・心身反応・周囲のサポートのバラメータとして用いられます。

領域は、以下の3分類から構成されています。
A領域:ストレスの原因と考えられる因子
B領域:ストレスによって起こる心身の反応
C領域:ストレス反応に影響を与える他の因子

では、実際の判定方法をみてみましょう。
1)職業性ストレス簡易調査票の質問項目から算出された点数を一定の計算式に
  あてはめ点数化
2)各尺度の合計点を素点換算表を用い5段階に分け、各1点~5点で評価を行う
3)各尺度の評価点を領域ごとに合計し、基準として用いる


この3ステップが基本的な基準点の計算方法になります。
厚生労働省による数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する場合、素点換算表を用いた評価基準としては「以下のいずれかを満たす場合に高ストレス者と選定する」とされています。

1)Bの評価点の合計が12点以下(最低点は1×6=6点)であること)
2)AとCの合算の評価点の合計が26点以下(最低点は1×9+1×3=12点)
かつ
★領域Bの評価点の合計が17点以下であること


この方法は質問数の影響を受けず、尺度ごとの評価が反映されたストレスの状況を把握できるというメリットがあります。
 


上記のように、健康リスクと高ストレス者の判定方法は異なるものなので、健康リスクが高いからといって必ずしも高ストレス者であるとは限りません。

例えば、高ストレス者が全体の5%と低かったにも関わらず健康リスクは110である場合は、職場環境が生産性を下げるものであったり、その集団が負担している仕事の量が多すぎたりする可能性が疑われます。

適切な対策によって健康リスクを改善することができれば、従業員と事業所の両者にとって大きな利益があるでしょう。

健康リスクがいくつを超えれば対策が必要かという明確な基準はありませんが、労働者および企業の生産性を上げるためには、現状よりも健康リスクを少しでも低下させる努力が必要になるでしょう。
健康リスクを低下させるためには、職場環境、作業内容あるいは職場組織の改善によって仕事のストレス要因を減少させなければなりません。

ストレスチェックの集団分析の結果を有効に活用して健康リスクを下げるようにしましょう。
  

〔参考文献・関連リンク〕

初出:2017年11月16日 / 編集:2020年11月04日

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