ストレスに負けない働くオトナのメンタルケア:“もしも”の時にあなたはどうする?災害時のメンタルの変化を知ろう

   

“もしも”の時にあなたはどうする?災害時のメンタルの変化を知ろう

台風・大雨洪水・津波・地震……
日本で暮らす私たちにとって、災害はけして他人ごとにはありません。

災害が起こった時はくれぐれも身の安全を第一に考え行動していただきたいのですが、命に関わる経験は強いストレスとしてその後の心身に大きな影響を与えるケースがあります。

その日その場では冷静に対処できても、一週間二週間と日を追うにつれて不調が出てくることもあります。これからの生活への不安や、避難生活のストレス、もし身体に傷病があればそのつらさもあるでしょう。

心に大きな傷をつけるようなショッキングな出来事は、回復までに長い時間が必要です。自分が当事者になった、または大事な人が災害の被害を受けた時、寄り添うために。

災害時のメンタルについて、知っていてほしい「こころの知識」があります。
  

もし災害の被害にあったら……
私たちの心と体に起こる”反応”

人間が日常的に経験しえないような恐ろしい災害・事件、大切な人の死を経験すると、その強いストレス(トラウマティックストレス)から心を守るため、私たちの心身は緊張や外的負荷に対する反応を引き起こすことがあります。

身体であれば血圧や脈拍が変動したり、筋肉の緊張が取れなかったり……
突然感情の揺り返しが起こったり、悪夢やフラッシュバックに悩んだり……
被災直後から数カ月にわたって起こるこのような現象は【ごく正常な反応】です。

被災したら、まず安全・安心・安眠が確保できる環境へ可能な限り早くアクセスできるようにしましょう。

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安 全 ……災害の影響を避け、風雨をしのぎ安心して体を休める時間・場所
安 心 ……公的なスタッフや医療従事者、支援者がきちんと機能していて
      “守られている”と感じられる人のいる空間や関係性
安 眠 ……体を横たえることができるスペース、体温を守る寝具や静かな環境
      など一定時間以上の睡眠がとれるかどうか
——————————————————————

命の危機を感じるような経験から来る緊張は、簡単にほどけるものではありません。

また、誰かを喪失するような体験はどんな立場にいる人であっても、慣れてしまうことはないでしょう。

大事なのは

「自分の心身にどのような反応が起こっているのか」
「体調不良を感じるのは正常なことであり、時間がかかるかもしれないがいつかは受け止めることができるようになる」

この2点をしっかり知っておくことです。

災害時の強いストレスから来る反応には、次のようなものがあります
 

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①感情・思考の変化
ストレスの対象について考えることができない・拒否してしまう時期と、そのことばかり考えてしまう・自責してしまう時期が繰り返すことがあります。
・現実を受け入れられずに、 茫然自失・感情がマヒしたような状態になる。
・強い落ち込みやストレス対象に対しての強い怒り、いらいら、何を感じているのかわからず混乱する。
・突然涙が出てきたり、怒りが抑えきれず言動を自分でコントロールできない。
・自分自身を責める、自分に原因があるのではないかと思う。
 
②身体の変化
特に気を付けていただきたい身体反応のシグナルは次の5つです。
不眠:不安、恐怖のために眠れなくなる、夜中に起きてしまう、悪夢を見る
内臓や消化器官の不調:腹痛、 咽の渇き、吐き気、 嘔吐
体の痛みや不調:胸の痛み、筋肉の震え、歯ぎしり、けいれん、息苦しさ、過度の肩こり
皮膚や感覚の異常: 湿疹、視力聴力の低下、しびれた感覚がとれない、
自律神経の乱れ:頭痛、寒気、発汗、めま い、高血圧、動悸
これ以外の症状でも災害によるストレスが原因の不調が起こることがあります。
 
認知・感覚の変化
知っている道や作業でも混乱したり、集中したり何かを楽しむことに困難を感じます。
小さな変化や物音に過敏になったり、優柔不断になった、うまく雑談ができない等「物事に反応するのが難しい・怖い・緊張する」と感じることがあります。

④行動の変化
食欲不振や不眠といった反応以外にも
・逆にたくさん食べたくなる、お腹がすいていないのに食べてしまう
・夜型、朝型など普段と違う睡眠リズムになった

・痛み止めやその他の薬、アルコールなどに依存してしまう
・直った癖や依存がぶり返す
前段の感覚的な変化も併せて、行動がスムーズにできなくなったり、以前の人間関係から遠ざかる・引きこもるなども注意です。
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もし、上段で紹介したような「災害時の強いストレスから来る反応」が一か月以上続くような場合は注意しましょう。

一か月未満であっても程度がひどく怪我の回復やコミュニケーションに支障をきたすような場合もなるべく早く専門家へ相談してください。

強いストレスを感じた後の緊張や反応は誰にでも起こる「普通のこと」ですが、苦痛や怒りで自分や人を傷つけてしまう時には何らかの対応が必要です。

また、以下のような症状がある・周囲の人に見られる場合には、なるべく早く精神科医・心療内科医やカウンセラーなど心の専門家に相談しましょう。
 

●1週間以上不眠が続いている。
●一か月以上強い緊張や興奮が取れない、続いている。
●言動が不穏で、周囲に対し被害的な言動が目立つ。
●表情が全くない。受け答えが過度に端的・機械的になった
●ストレスによる身体症状・身体反応が深刻
●ひどく落ち込んでいたり、自殺の恐れが感じられたりする。

災害や恐ろしい体験をした時に受けるストレスは、その人の人生に長く大きな影響を残します。

災害や事件から1ヶ月以上経過しても緊張や些細な事にも過敏になる状態が続き、つらい経験が自分の意思に反して思い出され、再体験されるような状態を心的外傷後ストレス障害(PTSD)と言います。

PTSDの多くは3ヶ月以内、正しい治療や心身のケアを受けることができればより短い期間に回復することが多いです。
しかし、受けたストレスの強さによってはそれ以上症状が続く場合もあります。
 

自分を守る・大事な人に寄り添うために
知っておいてほしい5つの約束

避難中など限られた 環境では、医療機関にかかることは難しいかもしれません。それでも、必ずきちんとしたケアを受けられる環境が戻ってきます。

安心して暮らせるその時へつなげるために、「災害から心を守るメンタルケア」5つの約束を普段から理解してほしいと思います。
 

1:「動揺するのはあたりまえ」だと理解しましょう

災害や非日常的な事件を経験したら、体調不良・動揺・不安による行動や感情が起こるのは【自然な、人間としてあるべき反応】です。

この反応は直後に起こることもあれば数か月後に襲ってくることもあります。

もし取り乱してしまった人や不安で混乱している人を目にすることがあったら、「あぁ、つらいんだな」と理解して一緒に安心なところまで避難する・医療につなぐことが第一です。


2:しばらくは一人にならない / 一人にしないように注意を

不安な状況で一番精神に負荷のかかることは、「周囲とのつながりを失う」ことです。被災やショックを受けることがあったらしばらくは極力一人になることを避け、親しい仲間や家族など安心できる人たちと過ごすようにしましょう。

気持ちを共有できること、お互いの信頼感、連帯感が感じられることが肝心です。

これは、災害後に起こる窃盗や犯罪といった「二次被害」から身を守るためでもあります。小さなお子さんや高齢者などが一人でいるようでしたら、明るくやささしく挨拶をしてあげてください。


3:飲酒を控え、体の健康・衛生状態に気を付けて

緊急事態では、さらなる避難や移動がいつ起きても不思議ではありません。飲酒は避け、常に衣服・靴・携帯電話などの連絡手段は手の届くところに置いておきましょう。

また、緊急事態の中で体調を崩すと心細くより不安感・被害的な感情を掻き立てます。食事・睡眠の機会はなるべく確保し、規則正しい生活と定期的な運動で体力を衰えさせないよう過ごしてください。

持ち出し袋にトランプや愛用のぬいぐるみなど一つ娯楽用品を足しておくと心の余裕につながります。自然災害であれば普段接することのない菌や汚染の中活動することも想定できます。眼鏡やマスク、長袖長ズボンは外に出るとき必ず身につけてください。


4:元に戻るまでには「時間」が必要です

ひと段落したら、心身に強い反応が起きてくることもあります。また、正常な反応でも数カ月にわたって症状が続くことも起こりえます。回復する過程で、恐怖や不安がぶり返すことも往々にして見られます。

元に戻らないのではないかと投げやりになったり、一人で抱え込んだりせずに、まずは誰かに相談してみてください。

相談も、うまく伝えられずに焦ったり、言葉にできない自分にいら立つこともあるかもしれません。決して急がずにゆっ くりと自分のペースでお話してください。


5:配慮はしても、無理や我慢はしないように

責任ある大人として緊急事態に直面する時、その場では落ち着いて対応ができていても、その時感じたストレスや感情を受け止める時間がどこかで必要になります。

安心して話せる場所ができた時または生活が安定し気持ちに余裕ができ始めた時、自然に湧いてきてしまう感情は「素直に表現していい」と自分に許しましょう。

悲しいことや辛いことがあっても、ずっと悲しんでいなければならないわけではありません。生活の中の楽しいこと、笑ったり怒ったりといった感情の動きを一つづつ取り戻していくことが「こころの復旧」です。


また、被災した人々を支えるスタッフとしても、「支えている・ケアを提供している」ことで無理な約束をのんだり、必要ないところまで自分の感情を抑えることはありません。

悲しい気持ちの只中にいる人に寄り添うばかりでなく、ショックを受けた当事者・支えたいと思う関係者・安全や生活を守るスタッフそれぞれが自身の心や楽しみを大事にし、新たな活力を養うひと時を大事にしましょう。
 


災害だけでなく、事件や事故など強いストレスを感じることがあれば、様々な症状や行動・感情の変化は当然起こりえます。それは自分が弱いわけでも、おかしいのでもありません。

そのことをきちんと知っておき、自分を責め過ぎないよう、誰かを責めてしまわないようにしましょう。

災害時およびその後の避難生活で一番気を付けてもらいたいのは「休息をとる」ことです。

緊張や活動時間が長時間続いてしまうと、脳はストレス物質を吐き出すことができず、より緊張感や不安感を高めひいては体へと影響を及ぼします。眠れない場合でも、一日活動をしたら必ず「目を閉じて横になる時間」をどこかに設けてほしいと思います。
 

〔参考文献・関連リンク〕

本記事は、「マイナビニュース ワーク&ライフ」連載の20~30代の若手一般社員の方々を対象にしたメンタルヘルスケアコンテンツ「ストレスに負けない働くオトナのメンタルケア」の記事を連動掲載しています。
 

初出:2020年09月15日

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