2019年実施の「ストレスチェック業界平均値」から考える“これからの従業員ケア”:AltPaperストレスチェックサービス業界平均値レポート2019

   

データで解説!昨年実施の「ストレスチェック業界平均値」から考える“これからの従業員ケア”

2020年も後半戦、緊急事態宣言の解除や新生活様式の指針が公表されたこともあって街に賑わいが戻ってきているように感じます。経済的には、いまだに新型コロナウイルスによるダメージや影響が残る業界もある事かと思われます。

新たな感染拡大を防止し生活を取り戻す試みに弊社全体で尽力するとともに、 罹患された皆様へ一日も早い回復をお祈りいたします。

当社サービス「AltPaperストレスチェックキット」をご利用の皆様からご提供いただいた2019年中の実施データを分析し、業種別に各尺度に基づく平均値を算出しました。
 

 

AltPaperストレスチェック実施による統計データと、厚生労働省が発表するデータ・資料とを合わせて見ると、「現代日本で働く」中での課題の一端が窺えます。

今回、当社発表データを元に、これからの企業が行うべき「ケア」について考えてみました。
 

労働環境は改善傾向、依然としてサービス提供業務で高ストレス

先日発表した当社調べ「AltPaperストレスチェック業界平均値 2019」によると、業界に限らず日本の労働環境は厚生労働省の発表する基準値に近づいているといえます。

大幅に数値が変動した区分はありませんが、高ストレス者割合は依然として高めであり、その出現傾向も昨年と比較して動きがあるものではありませんでした。
 

業種別高ストレス者の割合・総合健康リスク(2019年度)

ストレス状態に関して言えば男女差はありますが、製造・卸小売り・宿泊飲食・介護といった業界が昨年同様にリスクの高い環境にあると言えるでしょう

特に注目したいのが介護業界と熱・電気業界です。比較的高ストレス者割合は男性の方が高いという結果が多数ですが、この2業種に関しては男女差が逆転していました。女性の数値に関しては、データの評価計算式が男性と異なるため、このデータをそのまま比較することは注意が必要です。

また男女間で特徴的なストレス要因が異なるのも昨年と同様の傾向です。

偏差値で表した2019年ストレスチェックデータ(男女別):AltPaperストレスチェックサービス業界平均値データ2019

上のグラフは各データを厚生労働省の発表する平成19年度の労働者から得られたデータを基準値「50」とする偏差値に落とし込んだものとなります。
こちらのグラフからでは、「職場環境」・「働き甲斐や適正度」・「上司の支援」の改善が見られました。特に改善傾向にあるのは女性の「上司からの支援」、男性の「心理的な仕事の負担(量)」・「自覚的な仕事の適性度」です。
これは ツールの発達やラインケアなどの概念が浸透したといった要素もかんがえられますが、女性の社会進出が進んだことと深い関係があるのではないかといえます。ほかに、全体的に男性は「人間関係」にまつわる項目が悪化傾向にあるように見受けられます。職場での人間関係を築くためのきっかけが失われ、より「コミュニケーションをとるための工夫」が必要になってくることでしょう。
 

傾向に大きな動きはなし、

男女の違いをより詳細にするために、昨年度弊社が発表した「2018年度AltPaperストレスチェックユーザーデータ」と本年度のデータを比較してみました。
職業性ストレス簡易調査票における各尺度の平均値が全国データからどれほど乖離しているかを計るために、全国平均値を0とし、1から-1の間に全国データの7割が入るように、正規化数値を算出しグラフにプロットしています。

<注釈> { (各尺度の値) – (全国平均) }/(全国データの標準偏差)×100を正規化数値と仮定しています。

 
女性は
☆「仕事の量的な負担について」にストレス/「 職場環境」、「上司からの支援」が改善されたと感じる人が増加している

男性は
☆「裁量度」、「同僚・家族の支援」にストレス/ 仕事の量、適正度は「適当」と感じている人が増えている

という差異が挙げられました。
 
この差も先データと同様に、 男女間で計算方法・サンプル量などの違いがあることに注意が必要です。女性のデータは全体的に良い傾向の分析結果が報告されていますが、「職場の対人関係」「同僚からの支援」「家族からの支援」は男女間で改善の差があまりないという結果になりました。

また、これらの値は厚生労働省がマニュアルで定める値を基準としていますが、算出からかなりの年数が経過していることも含め「参考値」としてとらえる方が良いと考えられます。
 

これからの高ストレス対応は「休める環境」が肝に

これらのデータから、日本の働き方の特徴を探ってみましょう。

まず注目したいのが「仕事の負担」項目における男女差です。「男性側に身体的な負担が偏っている」環境があると考えられます。
このデータ単体だけでは「 物理的な肉体の差 」の影響下と思われますが、重いものを運ぶ・力仕事をするといった場面が想像できる業種以外で同様の傾向があることに注意が必要です。人数割合・職種によるデータのばらけ具合を鑑みても、別の要因の存在が考えられるでしょう。

予想できる仮説はいくつかありますが、「男性に業務を偏らせてしまう環境」=「休まない社員」「無理ができる・残業できる社員」に価値を置く環境が根強いのではないでしょうか。 これは、「個人の背景や技能ではなく、【 男性 】ということで負担を強いる風土」「一人の人間としてつらいほどの業務量が恒常化している」というシグナルとも捉えられます。

働き方改革として有給の取得義務化や残業時間の管理などが勧められ効果も出はじめていますが、ハードワークを前提とした営業形態・社員間の感覚に手を入れるタイミングを迎えているのではないかと考えます。
   

ストレスケアは「見えない背景」を考慮して

より詳しく男女別の傾向と、考えられる職場環境改善策を考えてみましょう。

男性のデータで特徴的なのは「身体的負担」「技能の活用度」「上司からの支援」です。

運輸・卸小売り・製造業といった業界は特に体力・筋力の関係からも怪我や体調不良が業務に与える影響が大きいため、日頃からのセルフケアや健康管理が業務効率にも影響するだろうと予想されます。熱中症予防などの労務環境へのケア、腰痛予防、無理をしない業務調節や労働時間の管理を徹底するといった措置がストレス環境の緩和に有効と思われます。
また現在上司という立場に置かれる方の大半はいまだ男性が主流です。男性というくくりだけでなく、「上司」として部下を抱える方へのケアも今後期待されます。

女性のデータで特徴的なのは「仕事量に対する負担」「 技能の活用度 」「同僚の支援、家族の支援」です。

仕事の量に対して負担を感じているが、仕事に対するやりがいや満足度を大きく損ねてはいない……このデータは、【業務量が「本人の業務以外の仕事」で圧迫されている】可能性を含んでいます。
先述の「『男性』だから」と同様に、家庭内・職場内でも賃金や評価に直結しない小さな事務、作業はいまだ暗黙の裡に「女性の仕事」とされてしまうことが多いため、企業は意識的に「把握していない・誰かに任せきりになっている作業がないか」を確認してみると発見があるのではないでしょうか。

また、男女に共通して業務配分を行う管理⇔従業員のライン、仕事の分担をやりくりする同僚間のコミュニケーションをとれる「つながりの確保」もこれからの働き方には求められるでしょう。業務に就いてのヒアリング、ミーティングの他、傾聴技術・ハラスメントの知識といったコミュニケーションスキルや健康的な生活を送るための知識を得る機会を提供することも企業全体の健康度を上げる「基礎」になると思われます。
 

「ダブルケア」を前提とした働き方の提案を

また、「仕事の量や質に対する負担」「裁量度」の項目には今後も継続的な注意が必要です。

少子高齢化社会の深刻化により、介護・医療福祉・宿泊業といったサービスを提供する職場では24時間体制・ 不規則な勤務シフトが恒常化しよりストレスフルな環境にさらされることが予想されます。現代では「働きながらの介護・育児」といった、二重負担(ダブル、トリプルケア)を求められる人が男女ともに増加すると予想されています。

現状でもすでに40代・50代の「働き盛り」世代の介護退職の増加として現れている傾向ですが、今後20代30代といった「これから経験を積まねばならない世代」にもその負担は拡大することでしょう。

未来を担う子供たちを育てる育児に参画する・悔いのない家族との時間を過ごすためにも、企業として休職や時短勤務制度などの「介護・育児をしていても働ける」環境の構築は優先的に取り組むべき課題です。
 

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〔参考文献・関連リンク〕

〔 関連リンク〕

初出:2020年07月01日 / 編集:2020年07月06日

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