「やりがい」TOPの教育・学習支援業は、「バーンアウト」に要注意!“負担軽減”策で更なる改善を。:〔AltPaperストレスチェック業界平均値〕業種別レポート

「やりがい」TOPの教育・学習支援業界は、「バーンアウト」に要注意!“負担軽減”策で更なる改善を。

AltPaperストレスチェック業界平均値「業種別レポート」から詳細解説

「AltPaperストレスチェックキット」をご利用いただいたお客様からデータ※1をご提供いただき、高ストレス者※2の割合・総合健康リスク※3・各種ストレス尺度について業種別に平均値を算出しました。

そのデータから業界に沿った詳細な分析・職場改善のご提案を【AltPaperストレスチェック業界別レポート】として発表しています。


第四弾は、昨年と比べて特に改善傾向にあった「教育・学習支援業」について、その背景と要因を分析し、従事されている方ご自身で行えるセルフケアなどをご案内いたします。
 

 

 

<2019年実施データ総覧>

ご協力いただいた企業はストレスチェックレポート全体で962事業所に登り、昨年度より255社の増加となりました。

「教育・学習支援業」では全28社:男性1,889名・女性1,398名のご参加をいただきました。
 

〔業種別〕高ストレス者の割合・総合健康リスク(教育・学習支援業):AltPaperストレスチェック業界平均値レポート2019

「教育・学習支援業」 は総合健康リスク・高ストレス者割合が比較的低く、昨年と比較しても各項目に改善傾向が見られました。他業種と比較して総合的に良い数値の回答項目が多く、ストレスを感じにくい環境で従事できていると言えるでしょう。

「総合健康リスクに対して高ストレス者割合が高め」という傾向がありますので、職場全体・全業種一律の改善案を講じるよりも「従事者ごとの個別のケア」「従事内容やクラス・ラインごとの関係性や負担感の見直し」を重視した取組みが求められるでしょう。
 

【業種別ストレス調査結果詳細】教育・学習支援業

[ 分析方法 ]
職業性ストレス簡易調査票における各尺度の平均値が全国データからどれほど乖離しているかを計るために、全国平均値を0とし、1から-1の間に全国データの7割が入るように、正規化数値※4を算出しました。
 

「働きがい」はあるけれど高負担、【前触れのない燃え尽き 】に要注意

今回調査した全業種内でもストレス要因の少ない環境といえる業種です。特に「働きがい」が全業種中でもTOPにあたります。

昨年のデータと比較しても「働きがい」の項目は高レベルで、従事内容・従事者のメンタルともに十分なモチベーションの提供が行われていると言えるでしょう。心身のストレス反応に関する項目も男女ともに良好で、これらが高ストレス者を低く抑えています。

ですが、職場環境に関連する項目の点数から「メンタル的な負担」の強い業務が多いのではないかと考えられます。心理的な仕事の負担(質)・家族からの支援が低く、業務が個人に与える負担感は少なからず存在すると言えるでしょう。
従事による拘束時間が長い(長時間労働)、様々な形態の業務を一人でオールマイティにこなさなければならないといった状況が考えられます。

このような業態では、他サービス業と同様にバーンアウト(燃え尽き症候群)が多発する傾向にあります。特に働きがいが仕事の負担感と比較してとても高い場合、メンタルや体調に不調が現れにくく、より慎重な対応が必要です。
また情報・制度の更新速度が非常に速い業界でもありますので、従事者が自信をもって業務にあたれるよう常に最新の情報に触れられるよう研修や勉強会といった制度を企業主体で検討しましょう。
 

ストレスチェック各尺度(教育・学習支援業):AltPaperストレスチェック業界平均値レポート2019

女性の活躍する教育・学習支援業は「仕事の負担」に注意 
業務量や時間の見直しが優先

グラフの形としては、医療・福祉系の業種に見られる「働きがいのある」グラフ形に似ています。女性の従事者が多く、それに比例するように女性の仕事負担量・働きがいが大きいのも「人を相手にするサービス業、顧客の人生や生活を預かる業種」に見られる特徴です。

男女で同じグラフ傾向となる項目が多く、概ね基準値を超える良好な点数で構成される、かなり優秀なグラフといえるでしょう。

ですが、非常に高度な「働きがい」はその分燃え尽き症候群の引金ともなりかねません。前段でものべましたが、教育業は「働きがい」項目で女性のデータが群を抜いて高い数値を出しています。働きがいの高さは、従事者のモチベーション・提供サービスの質に直結するとともに、「負担量・負担感を許容してしまう」効果が懸念されます。

限界量まで忙しさを許容してしまうと不調の前兆を捉える前に燃え尽き症候群が発症してしまう、いわゆる「突然のドロップアウト」のリスクを抱えてしまう事になります。何よりもまずは心身的な仕事の負担・業務量・業務時間の見直しが優先すべき事案です。

また、「上司の支援」の項目が男女で差が開いています。男女どちらか一方が多い職場でみられる傾向ですが、企業側が意識して取り組まない限り「有益な取組み・福利厚生などの資源 が全体に行きわたりにくい」環境が考えられます。制度といった大掛かりなことだけではなく、通知の順番や声掛け方法等、使用できる制度や取組みへつなげるための「上司の支援」は男性側・新人側へ行きわたるよう工夫してケアを行いましょう。

教育業界は女性の多い医療・介護業界と比較すると、同僚の支援/家族の支援/人間関係に関する項目が基準値に近く、良い傾向といえます。特に家族の支援は、業務的に良好な関係性を構築するスキルがあるためか、チームビルドを円滑に行うシステムや風土が根付いている企業が多いかと予想されます。

よりこの傾向を促進するために、定期的にスキルや知識の更新・他業種と交流する機会を設け新しい視点を取り入れましょう。

以上の結果から、業界従事者の皆さんに行っていただきたいセルフケアを提案いたします。
 

【セルフケア・改善案】教育・教育支援業

集中力を求められる業種は、作業環境が身体的な負担や作業効率に直結します。
特にパソコンや筆記といった視覚的な負担が強い作業を行う場合、 暗い部屋・あわない机では帰った後も自律神経の興奮が収まらず不眠を起こしたり肩こりや頭痛をはじめ全身的な不調の原因にもなります。
 

職場環境の「整備」で、“ 見えない負担 ”の軽減を。

デスクワークに共通の作業環境をまとめて「VDT環境」と総称し、適切な椅子の高さや手元の明るさが厚生労働省により定められています。これらのガイドブック・マニュアルに沿った環境を整えると共に、自分に合った機器や椅子・机の高さを工夫してみましょう。
 

—- VDT環境とは? —-
2002年に厚生労働省が発案した略称で、パソコンや電子機器を用いた作業や基本的なデスクワークを行う環境を指します。

職場におけるIT化や各種デバイスによる情報機器作業の増加が進む現在、精神的・身体的疲労を軽減するためには環境の整備や業務の適切な管理が欠かせません

2019年7月12日に新たな「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」が公表され、最新の知見や多様な作業環境におけるデスクワーク環境の基準が示されました。
※記事末尾「参考文献・資料」欄に資料リンクを掲載

 
同じ姿勢を長時間続ける場合、肩や足首を回す・足を曲げ伸ばしする・上体をひねるといったストレッチを一時間に1回は行いましょう。コリとともに集中力のリセットにもなります。
 

心理負担を減らすための「知る機会」を設けよう

この業界で一番避けたいことは、「燃え尽き症候群の兆候」を見逃すことです。
バーンアウト(燃え尽き症候群)を防ぐために、職場の評価以外に「自信が納得できる別の評価軸」を設けてみてはいかがですか。 自分の仕事に誇りを持つための情報、新しい目標や視点を得るきっかけにもなります。

今行っている仕事について、
 ・一番好きな点、作業
 ・苦手な点、時間のかかる作業
 ・職場の雰囲気や一緒に働いている人の特徴
等を一度書き出してみましょう。

同僚や家族に自分の長所やどんな傾向があるかを聞いてみることもコミュニケーションになる良い手段だと思います。
 

 

様々な視点や自分が知らない背景を想像することを求められる職種でもありますので、「仕事以外の人間関係」を積極的に構築することは仕事上のプラスにもなります。

ご近所付き合い、友人付き合い……今までの関係性の中でどんな関わり方をしているのか見直す共に、趣味の集まりや新しいコミュニティに参加してみるなど今まで会ったことのなかった人との出会いの場には気軽に参加していきましょう。新しいつながりから得られた知識は前述の「別の評価軸」の構築にも良い影響をもたらします。

この業界は、福祉や人間の学習機能といった日々更新される最新の知識・制度・スキルが求められる業界でもあります。教育や保育といった様々な家庭に関わる事のある方々は、利用できる制度やコミュニケーションスキルの引き出しの豊富さを期待される面も多々あるのではないでしょうか。

仕事に対する不安の一番の解消方法は、「準備」と「確認」です。市区町村の展開する勉強会への参加や省庁の発表を見かえす時間を作るとともに、書籍や雑誌、インターネットなど「自分が吸収しやすい媒体」で定期的に新しい知識に触れるタイミングを設けましょう。
 

 

 

 

 

 

次回の「ストレスチェック業種別レポート」は8月、「金融業・保険業、不動産業・物品賃貸業」を取り上げる予定です。
 

<注釈>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
1.データの取り扱いについて
 ・各事業者様にご提供いただいたデータにつきましては、業種・規模・地域をお伺いして分類することとし、個々の事業者様・受検者様を識別できないようにして取り扱っております。

 ・各受検者様の回答につきましては、性別・職種と57項目・80項目の回答データのみ使用することとし、個人を識別できないようにして取り扱っております。

2.「高ストレス者」とは
 厚生労働省が公表したマニュアル(2015)に基づいており、以下(i)及び(ii)に該当する者を指します。(i)及び(ii)に該当する者の割合については、概ね全体の10%程度とします。

 (i)「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が12点以下
 (ii)「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が17点以下で「仕事のストレス要因(17項目9尺度)」及び「周囲のサポート(9項目3尺度)」の合計が26点以下

3.「健康リスク」とは
 基準値として設定された全国平均値100からどの程度乖離しているかで算出されます。また、健康リスクの数値を表す「仕事のストレス判定図」は、量-コントロール判定図と職場の支援判定図の二つをさらに男女別に分けたもので構成されます。この二つの調和平均が「総合健康リスク」となります。

◆仕事のストレス判定図
 1.量-コントロール判定図…仕事の量的負担とそれに対するコントロールの度合い(裁量権)による健康リスク
 2.職場の支援判定図…上司の支援と同僚の支援の状況・バランスによる健康リスク

※4.「正規化数値」とは
 { (各尺度の値) – (全国平均) }/(全国データの標準偏差)×100を正規化数値と仮定しています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 

★業界平均値と自社データを比較できるカラーグラフを採用!
AltPaperストレスチェック新レポートリリース

9月1日 より順次AltPaperストレスチェックの提供する集団分析結果レポートが、「一目でわかる」新デザインにリニューアル!

新たに分布図やカラーバー分析を搭載し、より対策優先度や部署ごとの特徴を「掴みやすい」・「社内に説明しやすい」紙面デザインに刷新いたしました。
 

 

新レポートに関するやお問い合わせや資料請求は、下記のフォームをご利用ください。

〔参考文献・関連リンク〕

初出:2020年07月28日

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