ストレスチェック業種・職種別レポート2018:病院勤務者

   

病院勤務者の高ストレス者の割合―医師は意外と低く、看護師は高い?

【ストレスチェック分析レポート2018】
病院勤務者

厚生労働省の「平成28年度 過労死等の労災補償状況」によると、全業種の中で精神障害による労災請求件数・支給件数が2番目に多いのが「医療業」です(1位:社会保険・社会福祉・介護事業)。

弊社は、「AltPaperストレスチェックキット」をご契約いただいたお客様に個人情報を除いた集計データをご提供いただき、業種別・職種別・男女別に高ストレス者の割合・総合健康リスクを算出しました。今回はその中から「医療業」従事者のストレス状況と、お勧めのセルフケアについてご紹介します。
 

病院勤務者のストレスに関する調査結果

病院勤務者の高ストレス者の割合:業種別高ストレス者の割合・総合健康リスク
業種別高ストレス者の割合・総合健康リスク:医療業

医療業全体としては、高ストレス者の割合がやや高めであるのに対して総合健康リスクは全国平均を下回るという結果が出ました。

医療業は、ほぼ全ての職種において「心理的な仕事の負担(質)」「自覚的な身体的負担度」「家族や友人からの支援度」の数値が全国平均を下回っており、これらの要素が医療業従事者のストレス要因となりやすいことが推測されます。

しかし、「職場環境によるストレス」「技能の活用度」「自覚的な仕事の適性度」「働きがい」の数値は全国平均並みもしくはそれを大きく上回っており、仕事に対するやりがいや積極性を感じていることも読み取れます。

また、職種別に見ると、医師の高ストレス者の割合と医療技術者の総合健康リスクについては低い数値が算出されました。この2つの職種については、ほぼ全てのストレスチェック尺度でその他の職種を上回る高い数値(低ストレス傾向)が出ています。

さらに、男性のみを対象とすると、薬剤師,獣医師,歯科医師、看護師(准看護師を含む)、事務従事者、介護サービス職業従事者については、高ストレス者の割合と総合健康リスク共に全国平均を大きく上回る数値が出ています。

また、女性については、看護師(准看護師を含む)の高ストレス者の割合が15%を超え、専門的・技術職業従事者、医師、薬剤師,獣医師,歯科医師の総合健康リスクが全国平均を上回るという結果が出ています。
 

調査の詳細

1.調査方法

男性と女性のデータを分けて、各尺度の平均値・高ストレス者[1]の割合・総合健康リスク[2]を算出しました。その後、業種別・職種別の平均値を算出しました。


[1] 本分析における「高ストレス者」は、厚生労働省(2015)が公表したマニュアルに基づいており、以下①及び②に該当する者を指します。①及び②に該当する者の割合については、概ね全体の10%程度とします。
①「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が12点以下
②「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が17点以下で「仕事のストレス要因(17項目9尺度)」および「周囲のサポート(9項目3尺度)」の合計が26点以下

[2] 本分析における「健康リスク」は、基準値として設定された全国平均100からどの程度乖離しているかで算出されます。また、健康リスクの数値を表す「仕事のストレス判定図」は、量-コントロール判定図と職場の支援判定図の二つをさらに男女別に分けたもので構成され、この二つの調和平均が「総合健康リスク」となります。
◆仕事のストレス判定図
①量-コントロール判定図…仕事の量的負担とそれに対するコントロールの度合い(裁量権)による健康リスク
②職場の支援判定図…上司の支援と同僚の支援の状況・バランスによる健康リスク
 

2. 調査結果

(1)職種別の高ストレス者の割合・総合健康リスク

高ストレス者・総合健康リスク(医療業)

医療業を職種別に見るとどのような結果になるでしょうか? 本分析では、回答時に部署欄に記入された職種を「日本標準職種分類」の大分類(一部中分類)に変換し、職種別で比較を行いました。

医療業の高ストレス者の割合については、職種間でばらつきが生じています。まず、男性については、介護サービス職業従事者の高ストレス者の割合が20%以上と非常に高い数値が出ています。それに次いで、看護師(准看護師を含む)、事務従事者、薬剤師,獣医師,歯科医師でも15%程度もしくは15%以上20%未満と高めの数値が出ています。

女性についても、看護師(准看護師を含む)の高ストレス者の割合は15%を超えています。しかし、医師については男女共に高ストレス者の割合が5%前後と低い数値が出ています。

次に総合健康リスクについては、男性では、薬剤師,獣医師,歯科医師のリスクが130程度(全国平均より30%程度高いリスク)と突出しています。看護師(准看護師を含む)、事務従事者、介護サービス職業従事者についても、総合健康リスクは全国平均を超えています。これら4つの職種(男性)は、総合健康リスクと同時に高ストレス者の割合も高く、総合的にストレス度合いが高いと推測できます。

女性については、どの職種も全国平均並みもしくはそれを下回っています。その中でも、医療技術者の数値の低さが目立ちます。
 

(2)男女別のストレスチェック尺度別比較

ストレスチェック各尺度(医療業)

では、高ストレスや高い総合健康リスクの要因はどこにあるのか、ストレスチェック尺度別に見ていきましょう。

職業性ストレス簡易調査票における各尺度の平均値が全国データからどれほど乖離しているかを計るため、全国平均値を0とし、1から-1の間に全国データの7割が入るように正規化数値[3]を算出しました。


[3] { (各尺度の値) – (全国平均) }/(全国データの標準偏差)×100を正規化数値と仮定している。
 

まず、総合健康リスクの判定に使われる4つの尺度(グラフ赤枠)を見ていくと、「仕事の裁量度」「上司からの支援度」「同僚からの支援度」の数値は男女共に全国平均並み、もしくはそれを上回っています。「心理的な仕事の負担(量)」については、女性の数値のみ全国平均を下回っています。このため、総合健康リスクがあまり高くならなかったのだと考えられます。

次に4つの尺度以外に注目すると、男女共に「心理的な仕事の負担(質)」「自覚的な身体的負担度」「家族や友人からの支援度」の数値が全国平均を下回り、ストレス要因となっていることがわかります(グラフ黄枠)。なかでも「自覚的な身体的負担度」の数値の低さが目立ちます。しかし、[仕事のストレス要因]に含まれるその他の尺度「職場環境によるストレス」「技能の活用度」「自覚的な仕事の適性度」「働きがい」については全国平均を上回る数値が出ています。
  

3)職種別のストレスチェック尺度別比較

ストレスチェック各尺度:医療業・男性
 
ストレスチェック各尺度:医療業・女性
 

さらに、ストレスチェックの各尺度について、職種別に見ていきます。まず、総合健康リスクの算出に係る4つの尺度では、高ストレス者の割合・総合健康リスクが高かった薬剤師,獣医師,歯科医師および事務従事者は男女共に、「上司からの支援度」「同僚からの支援度」がその他の職種よりも低めの数値になっています。

また、介護サービス職業従事者については、「心理的な仕事の負担(量)」「仕事の裁量度」の数値がその他の職種よりも比較的低くなっています。

次に4つの尺度以外に着目すると、男女共に「心理的な仕事の負担(質)」「自覚的な身体的負担度」については職種間のばらつきが大きくなっています。

特に「心理的な仕事の負担(質)」については、薬剤師,獣医師,歯科医師の数値の低さが目立ちます。また、看護師(准看護師を含む)、介護サービス職業従事者については、「自覚的な身体的負担度」の数値の低さが目立ちます。「家族や友人からの支援度」については職種間のばらつきはあまりなく、どれも全国平均を下回っていますが、こちらは過去のデータと比較したところ業種を問わず悪化傾向にあるようです。

高ストレス者の割合が高い女性の看護師(准看護師を含む)については、[仕事のストレス要因]に含まれるほとんどの尺度の数値がその他の職種より低くなっていることがわかります。 

高ストレス者の割合が低い医師については、男女共にほぼ全ての尺度で全国平均並びにその他職種を上回る高い数値が出ています。また、総合健康リスクが低い医療技術者についても、男女共に多くの尺度で医師に次ぐ高い数値が出ています。
 

病院勤務者のメンタルヘルス対策

医療業の仕事は人の健康や命に関わるものであり、常日頃の業務を通じて大きなプレッシャーを感じる機会が多いと思われます。そこで、ストレスチェックの結果が良好だった場合も、メンタルヘルス不調を未然に防ぐためのセルフケアに取り組むことが推奨されます。

お勧めのセルフケアとしては、睡眠時間を確保すること、仕事から離れた趣味を持つこと、仕事とは関係のない人と交流することが挙げられます。

医療業は長時間の集中や細心の注意を必要とする業務が多いため、本分析でも明らかになったように、質的な負担や身体的な負担が大きいと思われます。したがって、自分がそのような負担がかかりやすい仕事をしているということを認識し、睡眠時間をしっかりと確保すること大切です。しかし、睡眠に関しては長時間眠ればよいというものではありません。質の良い睡眠で、朝決まった時間に起きて夜眠るという通常のリズムを崩さないようにしましょう。

医療業従事者は責任感が強く、休日も仕事のことを考えてしまいがちです。そこで、日常的な緊張感から一時的に自分自身を解放するために、趣味を見つけてみてください。くつろぎながら好きな音楽を聴いてみたり、のんびり読書をしてみたりなど、特別な準備を必要としないものがお勧めです。また、呼吸法やヨガなどのリラクゼーション効果が期待できるものを習慣づけたり、学生時代に取り組んでいたスポーツを再び始めてみたりなど、体を動かすことも肉体的疲労・精神的緊張をほぐすのに効果的です。

その他には、仕事とは関係のないコミュニティ(共通の趣味を持つ人々や学生時代の同級生の集まりなど)に参加し、知らない業界の話を聞くこともリフレッシュにつながります。自分とは異なる価値観を持つ人との交流によって新たな気づきを得ることができ、好奇心が刺激されて前向きな気持ちになれることが期待されます。
 

★ポイント★

医療業を職種別に分析したところ、看護師(准看護師を含む)をはじめとした高ストレス者の割合および健康リスクが高いという結果が出ている職種が複数ある一方で、医師や医療技術者については高ストレス者の割合・健康リスクが比較的低いことが明らかになりました。

医療業に従事している人は働きがいを感じていますが、身体的負担がストレスの要因となっているようです。

医療業従事者には、帰宅後の時間や休日を有効活用してセルフケアを行い、仕事とプライベートの切り替えをしっかり行ってメンタルヘルスの不調を防いでいくことが求められます。
 


〔 参考・文献 〕

初出:2018年05月10日 / 編集:2019年07月30日

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