前回に引き続き優秀賞受賞となった株式会社新井組。今回のストレスチェック結果を見ると、「総合健康リスク」「高ストレス者割合」ともに前回よりもさらなる改善が見受けられる。業界的にはストレスによるリスクが高まっている傾向にある中、改善の背景にあるものは何なのだろうか。同社の担当者に話を聞いた。

　「メンタルケアに対する取り組みは組織として今後強化していきたい課題」と語っていた前回以降の変化について尋ねたところ、直接的なストレス対策ではないものの、「今年からいわゆる『2024年問題』で建設業も時間外労働の上限規制が開始されました。それに向けてここ数年は、各種ICT化を通して残業時間を減らす取り組みを全社的に行っておりましたので、結果として各人の仕事の量的負担などは減ってきているのかなと推測します。あとは若年層を中心に社員の数自体が増えてきたことも負担の軽減に影響していると思います」と分析する。新卒採用の強化による若年層の増加や勤怠管理システムの導入など、数年間かけて実施してきた取り組みの結果が出始めているのではないかとの見解だ。

　特に近年は新卒採用に力を入れ、毎年20名を目標に採用を実施してきたことにより、社内全体で年齢層の比率が変化してきているそうだ。それに伴い、産休・育休取得を推奨する雰囲気や、男性育休の取得実績が徐々に増えてきていることから会社として目標値を定めて取り組んでいる。実際に育休・時短勤務制度は法令で定められている以上に充実したものに設定しているといい、例えば子が3歳を超えても時短勤務を可能にするなど、家庭の事情に合わせた柔軟な働き方ができる選択肢を用意しているそう。引き続き、気運を高めていく方針だ。
　「産休・育休などの実績は工事の受注などにも関係してきます。そのため、現場も非常に協力的で、積極的に実績を作って受注を増やしていこうという空気感はあります」と、業界特有の事情も制度の拡充・積極的な活用の後押しとなっていることが窺える。

　また、2023年の最も大きな変化は「勤怠管理システムの新規導入による労働時間の管理の徹底」だったという。各現場の社員の労働時間を組織として一括管理するだけでなく、それぞれが申請しやすいよう心がけているようだ。その他にもICT化の流れの中で、評価制度の電子化の検討がきっかけとなり、外部の「タレントマネージメントシステム」を導入。社内人材の活性化、人材配置の最適化、組織の活性化、従業員満足度向上などを主な目的として、試験的に運用中だ。e-learningや階層別の研修も含めた様々な側面から職場環境改善に取り組んでおり、ストレスチェックも含めた今後の効果的な活用が期待される。

　さらに今年度からは休暇制度の見直しを行い、新たに「ライフサポート休暇」、「私傷病休暇」、「治療休暇」を新設した。女性の活躍推進や子育てサポート優良企業の認定制度「えるぼし」や「くるみん」の取得に向けた準備を継続しているといい、同社のビジョンのひとつ「持続的成長の実現」を目指し、今後も中長期的な視野で段階的・着実に歩みを進める姿が想像できる。

受賞法人ご担当者からのコメント

受賞法人の「ソシキスイッチ ストレスチェック」導入事例